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意見・主張
 
研究所通信254号より
掲載日:1999.10.10
部落解放のための理論構築を

横田耕一(九州大学)

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 まず、これまで、部落解放研究所が研究・啓発の面で果たされてきた成果について、敬意を表したいと思います。私たちは多くのことを研究所から学ばせて頂きました。

 そしていま、「人権」の実現が世界的課題となっています。その意味では、部落解放・人権研究所がこの方面に力を入れ、人権理論の確立や人権の実施制度等についての研究によりいっそう力を注ぐことは、きわめて重要であろうと考えています。

 しかし、研究所の本来的課題は、やはり、部落解放のための理論構築にあろうと思われます。ところが、部落史の再構築が今必要であることに端的に示されているように、部落解放の理論は、率直に言って、現在前向きの「混迷状態」にあるようにみえます。部落差別の本質はなにか、したがって解放のためにはなにが必要であるのか、といった問題について、改めてきちんと理論形成することが大事ではないでしょうか。ともすれば部落問題の「特殊性」が軽視され、人権問題一般がもっぱら議論されるような傾向が諸方面に出てきているだけに、この面での研究は研究所が今後とも全力で取り組むべきものであるとともに、研究所がその特性を十分に発揮できる場でもありましょう。

 運動に明確な方向性を提示する研究が次々と部落解放研究所から生み出されることを、心より期待しています。

(『明日への挑戦―部落解放研究所から部落解放・人権研究所へ30年の歩み―』より)