第1は、部落解放運動と同和行政の成果として、部落の生活環境もかなり改善されたこともあるからでしょう。今の若い世代には、「部落差別とは、何か。どこにどのようなかたちで存在しているのか。自分たちに何ができのか」という問題が分からなくなっているように思います。いまも、身元調査に近い情報集めはあるでしょうし、悪質な落書きや嫌がらせもあると思いますが、それを他人事としてではなく、いま、個々に、というかたちで紹介し、共感させるための研究が必要だと思います。
第2は、人権問題に、すべての人びとが取り組むために、自分の体験との接点を理解させるための研究です。誰にでも、何らかのかたちで自尊心損傷の体験はあると思いますが、厳しい差別を強いられた社会的立場の人と、恵まれた立場で過ごしてきた人では、差別への感性が大いに違います。被差別部落・女性・身体障害者・少数民族の人びとが体験している傷つきを、それぞれの人が体験している傷つきと結合させる接点を掘り下げ、たとえば、プライバシーの傷つきといった共通項を介して、理解させるための研究です。
第3に、日本人が、「治められ続けた民族史」を、理解していないという主権者意識未確立の史的研究です。