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意見・主張
 
研究所通信251号より
掲載日:1999.7.10
若者が「解放感」と「誇り」を感じつつ担う解放運動の提示を

西田芳正(大阪府立大学)

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 1996年から、部落解放研究所のプロジェクトとして取り組まれている生活史の聞き取り調査に参加させてもらっている。大阪府内7地区からそれぞれ数家族にご協力いただき、70代の高齢者から高校生まで、3世代にわたる人生を聞かせてもらうという調査である。

 なかでも特に印象的なのが、それぞれ地域で解放運動の初発期・高揚期を担った40〜50代の方々である。運動が提示する考え方や、先行して運動に関わってきた人びととの出会いの中で、外から押しつけられた否定的な部落観や自己認識が乗り越えられるばかりでなく、苦しい暮らしを強いられてきた親世代の生き方や願いまでもが諒解されていく。

 私たちの主眼は、実はこの年代の子どもにあたる世代の意識のありように向けられている。10代後半や20代の若者たちが部落問題と出会い、出身であることをどのように意味付けているのか。それは年長の世代と違い、ストレートに解放への想いが語られることは少ない。差別が見えにくいものとなっていること、存在し続けている差別への不安、たたかうことを期待され続けて育つことの重荷が感じられる語りが少なくない。

 強固な差別の中ではあるが、「青空が見えた」と実感できた年長世代に対して、(運動の成果としても)変わりつつある状況のもとで成長する若い世代が、「解放感」と「誇り」を感じつつ担う解放運動とはいかなるものか、それを提示することが、部落解放・人権研究所の大きな課題であろう。微力ながら、若者たちの語りから、私も手がかりを探っていきたい。

(『明日への挑戦―部落解放研究所から部落解放・人権研究所へ30年の歩み―』1998年9月刊より)