差別の問題を記事にすると、実にさまざまな反応が寄せられる。部落問題の場合には、特に反響が大きい。「差別の現状を十分に伝えていない」というおしかりだったり、解放運動のあり方に批判的な立場からの声もある。
考え方の違いはどんな問題にもある。とはいえ、部落問題の取材を始めた当初は、運動団体の間や市民の間の意識の落差にかなり戸惑ったのも事実だ。こうした戸惑いは、多くの市民が感じているのではないか。そして、このことが「部落問題は難しい」「かかわりたくない」という意識を生み出す一因になっているのだと思う。
もちろん、市民一人ひとりが主体的に差別の問題に向き合うことが不可欠だ。ただ一方で、運動側にも市民の意識を変えていく努力が求められる。なぜ考え方の違いがあり、どう違うのかということをもっと分かりやすく示していくべきだと思う。これまでの努力も私なりに知っているつもりだが、まだまだ「運動団体が対立する難しい問題」というイメージは堅固にある。
最近、ある本を面白く読んだ。部落問題の解決に向け、立場の異なる人たちが「見解の違いを越え、議論をしよう」と声を寄せている。こうした試みの延長に、差別解消に向けた一つの展望が見えてくるのだと思う。
それとともに、外国人や障害者など他の人権問題に携わる人たちとの連携もこれまで以上に深めていってほしい。研究所には地道な研究活動とともに、新たな領域へのより果敢な取り組みを期待したい。