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意見・主張
 
研究所通信248号より
掲載日:1999.4.10
抑圧者でもある自分に向き合う

金 香百合(大阪YWCA教育総合研究所)

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このたびの部落解放研究所30周年に当たり、研究所のこれまでの取り組みや地道な歩みに対して深く敬意を表します。

そして、これからは部落解放・人権研究所として新たなる使命にも応えていこうとしておられることに大きな期待を寄せるものです。

私が、これからの研究所に特に期待していることは、「男女平等」をその重要課題の中においていくことです。

解放運動・人権運動の中にあってさえ、女性の立場は男性と公平な立場におかれてきたとは言いがたい状況があります。私の属する在日韓国・朝鮮人の解放運動の中でも家父長制度の影響を受けて、女性解放の視点は常に「人間(男性)解放」の後回しになりがちだったように思います。

一方、研究所でもこれまで要職についてこられた人びとの男女比をみれば、女性と男性がいかに対等でなかったかがわかります。(もちろんいろいろな事情や言い訳はあるでしょうが。)

どうも、男性にとっては、あらゆる差別の中で、この男女の性差による差別は一番最後まで理解しにくいという気がします。逆にいうと男女差別について敏感な男性は、あらゆる差別に対して敏感であり、問題意識をもつことができるともいえるのではないでしょうか。被抑圧者の男性たちにとって、男女差別に目をむけることは「抑圧者である自分自身」に向き合うことでもあります。

抑圧者でもある自分自身に向き合うことは、実は男性女性にかかわらず重要なことです。この自覚に立つとき、これからの研究所の解放運動はますます開かれたものになっていくと信じています。

(『明日への挑戦―部落解放研究所から部落解放・人権研究所へ30年の歩み―』より)