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意見・主張
 
研究所通信290号より
掲載日:2002.10.10
在日韓国・朝鮮人への暴行・脅迫に対する断固たる対応を

友永健三(部落解放・人権研究所所長)


 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の権力機関にある関係者によって、少なからぬ日本人が「拉致」されたことが明確になってきた。確認はされていないものの、その中には死亡した方も含まれているとのことである。これらのことは断じて許されるべきものではない。真相を徹底的に糾明し、これに関係したものを厳正に処罰することを求めていかねばならないと思う。しかしながら、日本で暮らす在日韓国・朝鮮人に、この事件に対する責任はない。にもかかわらず、「拉致」事件に関する報道がセンセーショナルに繰り返される中、日本各地で、日本人による在日韓国・朝鮮人に対する暴行・脅迫事件が増えてきている。これは、韓国・朝鮮人に対するあからさまな差別で、きわめて危険なものと言わねばならない。

 日本は、1995年12月、あらゆる形態の人種差別撤廃に関する条約(人種差別撤廃条約)に加入したが、現在生じている在日韓国・朝鮮人に対する暴行・脅迫事件は、この条約に違反する行為といわねばならない。在日韓国・朝鮮人に対する暴行・脅迫を行っている人びとに強く抗議するとともに、日本政府や自治体が、これらの行為に対して毅然ととした態度で対処し、やめさせること(法整備も含めて)を強く求めるものです。

また、北朝鮮当局に対して、今回の「拉致」事件に対する真相究明、責任者の処罰、補償等を求めるためには、1910年の朝鮮に対する植民地支配以降、1945年8月の敗戦に至るまでに日本が行った「強制連行」や「従軍慰安婦」問題等に関して日本政府による明確な謝罪と補償がなされるべきであることも指摘しておきたい。

2002年10月4日