12月10日(火)、世界人権宣言54周年記念大阪集会が開催されました。今回は「差別撤廃・人権確立に役立つ日本の国内人権機関設立を求めて」をテーマにタイ、韓国の国家人権委員会の委員が各国の人権委員会についての講演を行ないました。
集会の最後に人権擁護法案の抜本修正を求めるアピールが採択されましたのでここに紹介します。尚、人権擁護法案については来年1月の第156通常国会で審議されることが決定しました。
「人権擁護法案」が、来年の通常国会へ継続審議となることが濃厚になってきています。
世界人権宣言54周年記念大阪集会に参集したわたしたちは、この法案の持つ意義と問題点を、タイや韓国の経験をも踏まえ、様々な角度から検討しました。
その結果、この法案は、差別の禁止や人権委員会の新たな設置を盛り込むなど、重要な意義を持ったものと評価することができますが、日本国内に存在する部落差別をはじめとするあらゆる差別を解消し、人権侵害を撤廃していくという本来の目的と、国内人権機関の設置に関す原則(パリ原則)に代表される国際的な潮流からみたとき、以下に列挙するような基本的な問題があるといわねばなりません。
まず、新たに設置される人権委員会が法務省の外局とされ、職員は法務省から出向し、建物も法務省や法務局の中に置かれるとのことで、全く独立性が保証されていないという問題です。
この点に関しては、人権委員会を法務省ではなく、少なくとも内閣に設置するか内閣府の外局とするとともに、人権に精通した職員を独自に採用し、独立した場所に設置することが求められます。
第2点目の問題点としては、人権委員会が全国レベルでのみ設置され、地域には8ないし9カ所に事務所が置かれるだけで、基本的には地域で生起する差別や人権侵害に早期かつ容易に対応できない、つまり実効性に欠けるという問題があります。
この点を克服するためには、全国レベルのみでなく、都道府県単位にも人権委員会を設置することが必要です。
第3番目の問題は、公権力による差別や人権侵害を他のそれと同列に扱う一方で、メディアによる人権侵害をも特別救済の対象とすることによって、メディアの正当な取材活動を萎縮させるおそれがある点です。
この点については、公権力による差別や人権侵害に対しては、他の分野よりも厳しく対応できるよう明文化するとともに、メディアによる人権侵害については、この法案には盛り込まず、まず自主規制を求めていくことが必要です。
このほか、この法案には、‡@人権に関する規定がない、‡A差別煽動などが禁止されていない、‡B人権委員会の提言機能が具体的に明記されていないなどの問題もあります。
時あたかも、来年、2003年は、世界人権宣言が国連で採択されて55周年という記念すべき年に当たっています。この年に、部落差別をはじめとするあらゆる差別解消と人権侵害の撤廃に真に役立つとともに、パリ原則に合致した国際的にも高く評価される人権委員会の設立を盛り込んだ法案となるよう「人権擁護法案」の抜本修正を強く求めるものです。