先月8月、国連・人権小委員会において、第2次「国連10年」の宣言についての決議が採択されました。これは、第2次「国連10年」が国連総会で採択されるよう、経済社会理事会に対して提言することを人権委員会に求めた内容となっています。
この決議文からみても「人権教育のための国連10年」のこれまでの取り組みをふりかえりながら、これからの人権教育について議論を活発化していく必要があるといえます。そしてこれからの国連における動き、NGOのはたらきかけなどに注目しつつ、世界人権宣言大阪連絡会議でも、随時情報をお伝えしていきたいと思います。
以下、人権小委員会の決議文を掲載しました。今回の決議について、藤井一成さん(創価学会インターナショナルのジュネーブ国連連絡所代表)からの報告でも、今年、人権委員会で採択された同じタイトルの決議よりもかなり踏み込んだ内容となっており注目すべき点がいくつかあると指摘しています。
藤井さんは、決議内容の特筆すべき点として、いくつか触れています。一つは、第五段落です。2004年度会期において採択するよう人権委員会に対して人権小委員会が勧告している決定草案であり、最も注目を集めるだろうとのことです。
他第2段落における人権教育強化のための「勧告を行なうよう」条約機関への勧告や第3段落での「10年」の成果と欠如について、国際地域および国際レベルで会合、ワークショップおよび他の活動を行なうことを」各国政府に奨励している点についても特筆すべきだとしています。
しかし、この小委員会での採択以降にも、人権委員会、経済社会理事会とそして国連総会の動きといったハードルもあることから、今後の人権委員会に向けて、各国でのNGOが政府当局に対して働きかけながら、世論喚起も同時に行なっていくことが当面の重要な課題であると藤井さんは報告しています。(藤井さんの報告は部落解放・人権研究所発行の「ヒューマンライツ」10月号をご覧ください)
2003/5. 「人権教育のための国連10年」
人権の促進及び保護に関する小委員会は、
国連憲章及び世界人権宣言に従い、
教育は、人格の完全な発展並びに人権及び基本的自由の尊重の強化を目的としなければならないとする世界人権宣言第26条を再確認し、
1993年6月に世界人権会議で採択されたウィーン宣言及び行動計画(国連文書 A/CONF.157/23)の、特に第2部第78〜82段落を想起し、
「人権教育のための国連10年」に関する国連教育科学文化機関(ユネスコ)の意義深い協力を歓迎し、
人権教育が、人種主義、人種差別、外国人排斥及び関連する不寛容に基づいた態度と行動を変え、社会の中の多様性に対する寛容と尊重を推進する鍵であること、そして、2001年8月31日から9月8日まで南アフリカのダーバンで行われた反人種主義・差別撤廃世界会議で確認されたように、人権教育が、人種主義、人種差別、外国人排斥及び関連する不寛容の拡散を防ぎ、それらと闘うために欠くことのできない正義と公平という民主的価値を推進し、宣伝し、保護する決定的要素であることを確認し、
人権分野での国連の関連する教育及び広報プログラムの調整における人権高等弁務官の責務を想起し、
また、1995年1月1日からの10年間を「人権教育のための国連10年」とすることを宣言し、その行動計画(A/51/506/Add.1)を歓迎し、人権高等弁務官に行動計画の実施を調整するよう要請した1994年12月23日の国連総会決議49/184を想起し、
特に草の根レベルで、そして遠隔地や農村コミュニティで情報を普及させたり人権教育を行ったりすることにより、人権の保護と促進において果たしている非政府組織及びコミュニティに基盤をおいた団体の重要かつ創造的な役割を認識し、
1998年にスタートし、任意基金によって支えられ、実践的な人権活動に携わる草の根団体や地域団体に少額の助成金を提供することを目的に設けられた「コミュニティの共同支援(Assisting Communities Together)」プロジェクトをさらに進展させている人権高等弁務官事務所のイニシアチブを歓迎し、
「10年」の目標達成にむけて他の主要な関係者・組織の協力のもと人権高等弁務官事務所によって実施され、国連総会第55会期の人権高等弁務官による関連報告で示された「10年」の目的達成に向けた進捗状況に関する地球規模の中間年評価(A/55/360)を想起し、
また、「10年」の行動計画の実施に関する人権高等弁務官の報告(E/CN.4/2003/100)を感謝をもって想起し、
さらに、「10年」の行動計画のフォローアップに関する人権高等弁務官の調査(E/CN.4/2003/101)を感謝をもって想起し、
- 民間セクター、開発・貿易・金融機関、メディアなど、関連するすべてのパートナーによる人権教育への一層の支持や貢献の可能性を模索し、人権教育戦略の展開において協力を求めるよう、政府、地域機関、そして政府間機関や非政府組織に奨励する。
- 人権条約機関が締約国の報告を審査する際、人権教育に特別の注意を払うこと、そして、条約機関の議長が年次会合に用意する議題に人権教育が含められ、それにより国内の人権保護メカニズムの強化をめざした国内の能力構築に人権教育がいかに貢献できるかについて勧告できるようにすることを奨励する。
- 国連人権高等弁務官が、人権委員会決議2003/70の第21段落に従い、ユネスコと共に、そしてすべての国連加盟国と協議しながら、「10年」の成果と課題に関する地域及び国際レベルでの会議、ワークショップ、その他の活動を人権高等弁務官事務所の調整のもとで組織するよう諸国政府に働きかけることを提言する。
- 第56会期の人権小委員会の委員が「10年」の成果をふりかえり、「10年」の行動計画のもとで講ずることのできるさらなる手段を検討できるようにするため、「10年」の行動計画のフォローアップに関する人権高等弁務官の調査(E/CN.4/2003/101)を委員が入手できるようにすることを、人権高等弁務官事務所に要請する。
- 以下の決議案を採択するよう、人権委員会に提言する。
「人権委員会は、『人権教育のための国連10年(1995年〜2004年)』の行動計画のフォローアップに関する人権高等弁務官の調査(E/CN.4/2003/101)及び『10年』の中間年評価に関する人権高等弁務官の報告(A/55/360)に含まれた勧告事項を考慮に入れた上で、2005年1月1日に始まる第2次の『人権教育のための10年』の宣言を国連総会に提言するよう、経済社会理事会に対して提言することを決定する」
第21回会合にて
2003年8月13日
(無投票で採択)
翻訳:部落解放・人権研究所
監訳:平沢 安政
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