今夏、原田伴彦基金を得、IMADR(反差別国際運動)のインターンとして、ジュネーブで開催された第21会期先住民族作業部会(以下「作業部会」)と第55会期国連人権推進擁護小委員会(以下「小委員会」)に参加したが、IMADRは特に次の問題に注目していた。
先住民族問題:グローバリゼーションが先住民族に与える影響、先住民族問題を扱う国連諸機関の将来的存続に関すること。
小委員会:アイデ・横田委員により提出された「職業と世系に基づく差別」に関する拡大作業文書(E/CN.4/Sub.2/2003/24)。
■第21期先住民作業部会〜グローバリゼーションと先住民族の人権がテーマに
グローバリゼーションと先住民族のテーマでは、先住民族の法的権利に対する無関心、文化的アイデンティティの危機、自然資源の略奪、女性と子どもの法的権利の剥奪などが議論された。
ここでは共通の経験は、先住民族の共同体に貧困をもたらすグローバリゼーションに、先住民族が反対するということであった。(E/CN.4/Sub.2/AC.4/2003/14)
また、国連機関の存続に関しては、先住民族問題を扱う作業部会、特別報告者、常設部会が、「それぞれの特徴を生かし、相互に補足し合うこと」が今後の課題として要求された(resolution2003/29)。
これらに加えて、2004年に終了する「先住民族の10年」に続く、第2次10年が提案された。また、先住民族が提出している権利宣言案を国連機関が採択する必要性も強調されていた。
■第55会期人権小委員会〜アフリカにおける「職業と世系に基づく差別」が報告
2000年より、小委員会で「職業と世系に関する差別」の問題が議題として採択され、IMADRの役割はさらに重要になってきている。すなわち、1970年代中頃から部落解放同盟が先頭に立ち、部落問題が国際的に討議され始めているのである。
また、国際ダリット連帯ネットワークの結成、グネセケレ報告、反人種主義・差別撤廃世界会議、人種差別撤廃委員会の一般的勧告29の採択等々、部落問題は職業と世系に関する差別問題の1つとして、国際的に注目されてきており、その結果、今回の小委員会ではこれまでの日本・インドを中心とする問題に限らず、アフリカにおける問題に焦点を当てたアイデ・横田拡大作業文書も提出されている(概要については『IMADR-JC通信』(2003・8・9月号)参照)。
つづいて、特に関与した専門家へのロビーングについて報告する。
今小委員会は、前年度とは違いスイスの建国記念日が休日となったため期間が1日省かれ、職業と世系に関する差別の議論は8月11日の半日に絞られた。ロビーングの主な目的は、セネガルとソマリアのカースト問題に直面する当事者がその問題をいかに国際的に認知させるかをサポートすること、また、職業と世系に関する問題を、小委員会で効果的に討議されるよう人種差別撤廃委員会(以下CEARD)の専門家を招待することなどであった。
そのため、積極的に小委員会の専門家や国際諸機関の委員へアプローチした結果、当事者と委員との討議の場が設けられ、CEARDからIMADRが希望したパトリック・ソーベリー委員の招待につながっていったのである。そして、多くの専門家・NGO・政府がこの問題に対して活発な議論をし、決議(resolution2003・22)が無投票で採択、アイデ・横田委員の研究継続と作業文書を来期の小委員会で提出することにいたったのである。
■「1日の重み」〜先住民族やマイノリティにもっと発言機会の提供を
当事者が直面している現状を声に出して訴え、NGOや専門家が当事者とともに会話や行動をする不断の努力は、先住民族問題やマイノリティ問題を人権に関する国際機関の場で継続して討議し、意識化することにつながっている。
今回、IMADRは小委員会で、一定の成果を出すことができたが、一方で、スイス建国記念日のため小委員会の期間が1日省かれたことは、地理的、経済的に限られたマイノリティの当事者たちを、不利な状況へ追いやったのではないかと思う。
そして、この「1日の重み」を感じる想像力こそが、私たちに問われていると痛感する。
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