2003年10月31日〜11月2日にかけて、立命館大学にて日本労働社会学会第15回大会が開催された。最終日に行われたシンポジウムのテーマは「若年層の就業状況と労働社会学」であり、特にフリーター現象に代表される、近年話題となっている若年就労問題に焦点を当てたシンポジウムであった。
筆者は部落解放・人権研究所の若年就労問題のプロジェクトに参加しており、同様の関心を持つ研究者が、どのような研究をし、どのような関心を寄せているのかを学ばせてもらうために、学会員ではないものの、参加させていただいた。以下、本学会シンポジウムからえらえることが多いと思われるため、この場を借りて紹介させていただきたい。
テーマ報告は、フリーター現象は大都市に固有の少数者としての問題であることを主張した「大都市におけるフリーターの行動と価値観」(上林千恵子氏)、中小企業において、近年、上位職務の大卒化、下位職務の大卒配置という「二重の閉鎖化」が起きていることを明らかにした「高卒労働力の供給の変貌と中小企業の分業体制・人員配置」(筒井美紀氏)、質問紙調査からえられた若手勤労者の会社・仕事観のデータをもとに若年層マネジメントの課題を提起した「若年勤労者の会社・仕事観と企業の人事管理」(林大樹氏)の3本であり、コメンテーターからのコメントの後、フロアを交えての討論となった。(なお、日本労働社会学会第15回大会報告要旨集は、2003年11月20日現在、http://www.jals.jp/taikai/2003summary.pdfより閲覧・ダウンロード可能である。)
この問題をめぐる最もオーソドックスな議論のたてかたは、若年者の就労問題が顕在化した背景として、若者の意識が変わったのか、それとも労働市場を巡る構造が変わったのかという対立軸である。残念ながら、シンポジウムではそれらの対立軸が明確にならず、若干議論がかみ合わなかった印象がある。ただ、具体的な研究課題として、学校から職業への移行過程は、教育社会学からも労働社会学からも漏れ落ちてきた領域であり、さらなる研究が必要とされていることが確認された。特に、教育については職業教育の重要性の問題、労使関係については若年者を中心とした労働条件の問題である。
なお、学会開催時に配布された『日本労働社会学会年報第14号』(2003、東信堂)には、村尾祐美子氏の、近年刊行された若年就労問題を扱った5冊の書籍(矢島正見・耳塚寛明 2001 『変わる若者と職業世界―トランジッションの社会学』学文社、玄田有史 2001 『仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在』中央公論新社、竹内常一・全国高校生活指導研究協議会編 2002 『揺らぐ<学校から仕事へ>―労働市場の変容と10代』青木書店、小杉礼子編 2002 『自由の代償/フリーター―現代若者の就業意識と行動』日本労働研究機構、宮本みち子 2002 『若者が≪社会的弱者≫に転落する』洋泉社)に対する書評「若者と労働世界の再編成」が掲載されており、昨今のこの問題に対する議論が簡潔にまとめられている。この問題に関心をお持ちの方には、一読をお勧めしたい。
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