11月29日、第55回全同教大会(福岡県)の特別分科会にて、亀田徹・文部科学省初中局児童生徒課課長補佐が「人権教育の推進について」をテーマに報告を行った。大会で文部科学省関係者が報告を行ったのは初めてのことであり、大きな注目を集めた。
以下、報告概要を紹介したい。(小見出しは筆者が付けたものである)
人権教育の動向
近年、子どもが犯罪の被害者にあるいは加害者になるという深刻な状況が生まれており、学校のみならず、社会全体の対応が求められている。この点で人権教育の取り組みは重要性を増しており、学習指導要領の実施そのものが人権教育の意味を持っている。
近年の国の動向を見ると、1994年、国連人権教育の10年の決議、1995年、日本政府の推進本部の設置、1997年、日本の行動計画の策定、人権擁護施策推進法の制定、2000年、人権教育・啓発推進法の制定、2002年、「特別措置法」の失効、があげられる。
なお「特別措置法」は失効したが、同和問題の解決は依然課題として存在しており、同和教育の役割は重要であり、今後とも推進していきたい。
「人権教育・啓発に関する基本計画」の特徴
2002年3月に閣議決定した「基本計画」は、人権一般の普遍的な視点、各人権課題に対する取り組み、特定職業従事者への研修、等に触れているが、以下の5点ほどの特徴が指摘できる。
- 現状では人権尊重の理念が十分定着しておらず、民主主義の担い手として権利と責任の自覚が大切
- 人権教育・啓発の実施主体間の連携の必要性
- 発達段階を踏まえた教育内容の構成と、知識だけでなく豊かな人間性を育むことに留意
- 自主性と中立性を確保し、生徒の興味関心や多角的視野を広めること、国民の理解と共感は重要であり、政治運動との区別が必要
- 教職員の資質の重要性。
開かれた学校づくりを
近年の状況からも、地域全体で子育てを進めていく事が求められている。そのためにも「地域に開かれた学校づくり」が大切である。学校の説明責任を果たすと共に、地域の人びとと協働していくこと、そのためのコーディネート役を学校が担うことが考えられる。
国の施策
国としては、これらの推進のために、人権教育総合推進地域事業、人権教育研究指定校、社会奉仕・体験事業、スクールカウンセラーの配置、社会教育分野の人権教育促進事業そして奨学金制度の充実、等に取り組んでいる。
こうした人権教育の取り組みを通じて、自分を大切にすると共に、周りの人も大切にし、社会の中に人権尊重の理念を定着させていきたい。
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