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意見・主張
 
掲載日:2003.03.29
人権文化発信のまちづくり
人権・太鼓ロード

太鼓の産地・浪速の歴史を発信

太鼓の産地として300年の歴史をもち、全国でも有数の皮革集散地である大阪市浪速区の一角で人権文化発信のまちづくりが進められている。「人権・太鼓ロード」である。

「人権・太鼓ロード」は被差別部落である「浪速」地域の歴史を正しく伝え、部落の文化に誇りをもって、人権文化として発信していこうという試みであり、部落解放同盟浪速支部や浪速区人権啓発推進協議会をはじめ大阪市、大阪太鼓工業会、大阪人権博物館、JR西日本、阪神高速道路公団などで構成される人権・太鼓ロード建設計画策定委員会が案を作成、現在整備が進められており、2004年5月には完成の予定。

もともと浪速地区は皮革関連産業を伝統的地場産業としてもち、和太鼓・三味線などの楽器や綱貫沓(つなぬきくつ)・雪踏(せった)・靴・鞄・衣料品などの日常生活用品、さらに産業用革ベルトなどそれぞれの時代のニーズに対応した商品を生み出してきているが、なかでも和太鼓づくりは、近年マスコミなどでもたびたび紹介されるなど、今日の浪速地区のイメージを代表するものとして全国に知られている。

人権・太鼓ロード

「人権・太鼓ロード」はJR大阪環状線芦原橋駅から日本初の人権博物館である大阪人権博物館(リバティおおさか)までの都市幹線道路である新なにわ筋周辺の約500メートルが対象となっており、大きくは以下のゾーンに分けられている。

  1. 北玄関ゾーン …… 「人権・太鼓ロード」の玄関口
  2. コンセプトゾーン …… 「人権・太鼓ロード」のコンセプトイメージを表現
  3. 太鼓のお祭りゾーン …… 浪速神社の祭り(布団太鼓)を紹介
  4. 海の玄関口ゾーン …… かつては木津川を通じて瀬戸内海海路にいたる海の玄関口で、皮革関連物資などの集積地として栄える
  5. 和太鼓の見本市ゾーン …… 代表的な和太鼓が大阪人権博物館(リバティおおさか)につながる緑道沿いに連なる
  6. 和太鼓のつくり手ゾーン …… 太鼓づくり職人の伝統の技、製造プロセスを紹介、大阪人権博物館(リバティおおさか)への案内機能を有する
  7. 歴史ロードゾーン …… 太鼓・皮革のまち近世「渡辺村」の歴史と、村を支えてきた「旧渡辺道」を紹介
  8. 人権文化について考えるゾーン …… 人権文化への地域の取り組みや人権文化をテーマとした交流・連携を図る
  9. 社会への広がりゾーン …… 当地の和太鼓づくりの由緒ある功績や、和太鼓のたたき手集団を紹介
  10. 東玄関ゾーン …… 北玄関口と連携した玄関口

具体的には、石碑や案内板を設けたり、バス停のベンチを太鼓をイメージしたデザインにしたり、「さいぼし」や「油かす」など昔からの部落の食生活を現在も提供している店を紹介した「食マップ」の作成など、いろいろと工夫した取り組みがすすめられている。

さらに、JR西日本では「人権・太鼓ロード」にあわせた駅構内の展示、NTT西日本ではゾーン内にある所有ビルを関連の展示場所として提供し、大阪市交通局ではバス停に近づいてくるバスを太鼓の音などで知らせたり、人権文化センターでも3階の一部を新たに関連の展示スペースを設けるなど、点となる施設を充実させ、面的な充実につなげるといった取り組みもすすめられている。

「人権・太鼓ロード」を軸にまちづくり

これら案内情報の表現や施設づくりにあたっては、安易に従来の製作方法を踏襲するのではなく、高齢の人や障害をもつ人などすべての人が不便なく利用できるよう、立地条件や情報内容と関連づけながら、設置位置や大きさ、高さ、案内表示の方法、デザインや色彩の効果的な組み合わせなど、人権文化のまちづくりを発信するにふさわしい情報案内づくりがすすめられている。

こうしてみると「人権・太鼓ロード」整備は地域の歴史を正しく伝え、部落の文化に誇りをもち、人権文化を発信していくことを通じた、行政と住民や地元企業などの協働による住民参加のまちづくりであり、現在、部落解放運動が重要な活動のひとつとして位置づけている「人権のまちづくり」の具体の事例といえる。

また、「人権・太鼓ロード」が整備されれば、大阪人権博物館(リバティおおさか)の利用者にとっても単なる館までの行程ではなく、人権問題を考えるアクセス道路として、「人権・太鼓ロード」が館への趣のあるプロムナードとなるだろう。