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2004.10.14
意見・主張
  
DPI(障害者インターナショナル)日本会議の取り組みと当面の課題

楠敏雄(DPI日本会議副議長)

  DPI(障害者インターナショナル)は、国連で正式に承認されたNGOです。1981年の国際障害者年に障害者が中心となって、「我ら自身の声("OUR OWN VOICE")」を合い言葉に、シンガポールで結成されました。現在120余りの国および地域の障害者団体が加盟し、それぞれが6つのブロックに分かれて活動を進めています。また、一昨年北海道札幌市で開かれた第6回世界大会には、3000人以上の障害者と支援者が参加し、5日間に渡って熱心な討論がかわされました。

  現在地球上には、全人口の1割に当たるおよそ6億人以上の障害者が生活していると言われています。この内の7割以上がアジア・アフリカなど、発展途上国で暮らしていますが、絶え間なく繰り返される戦争や貧困のため、その数は増加の一途をたどっています。一方、日本や欧米の国々では、高齢化や多発する交通事故などと、障害者問題が密接に結びついているのが現状です。

  ここ20年余りのDPIなど障害を持つ当事者の運動によって、世界の43の国々で障害者の権利を守り障害者差別を禁止する法律の法制化が実現されていますが、実際には数多くの障害者が今なお安心して生活する権利を脅かされ続けており、安全に移動する自由や健常者と共に教育を受ける権利、働く権利、十分な医療を受ける権利を保障されていません。

  我が国においては、1980年代に入って障害を持つ当事者自身の手による自立生活センターや作業所運動が急速な拡がりを見せ、地域で自立生活を送り、共に学び、共に働く機運も高まってきましたが、日本政府や自治体の行政は長い間障害者本人の意志よりもその家族や福祉関係者らのニーズや要望を重視して沢山の入所施設や精神病院を建設してきました。こうした施設や養護学校、精神病院には多額の予算を費やしておきながら、地域で障害者が暮らしていくための社会資源は依然として乏しいのが実態です。

  私たちDPI日本会議は、このような政府の障害者施策を転換させるべく、障害者本人のニーズにそった具体的要求や政策提言を行いつつ、障害者の法的権利を確立する「障害者差別禁止法」の制定を政府に働きかけてきました。また、国連においては各国のNGOと連携して「障害者権利条約」の制定を目指して活動が続けられています。この権利条約は現在国連の「アドホック委員会」の場で内容の検討が積み重ねられていますが、私たちは当事者運動のパワーを発揮して、条約の早期の成立を何としても実現させたいと奮闘しています。

(注)なお、2002年札幌市で開催されたDPI世界会議の内容については、『世界の障害者-われら自身の声』DPI日本会議・第6回DPI世界会議札幌大会組織委員会編集、現代書館、A5判、596頁、定価3000円(税別)、のなかで詳しく紹介されている。