謹賀新年、今年もよろしくお願い申し上げます。
21世紀が平和と人権と環境保持の世紀となりますようにと人類は、民族を超え、国境を超えて祈りの声を上げました。二度にわたる20世紀の世界大戦の惨劇は人類の兄弟姉妹数千万人をも殺し、奥深い心の痛みを残しました。人類の未来を創造するかと思われた科学技術は、広島・長崎の市民を一瞬に殺戮し都市を破壊しつくしました。戦争の悲劇は今日もつづいています。
そして、平和と人権を中心とし、二度と戦争をしないと誓った日本国憲法は現実的には守られない状況が生まれてしまいました。自衛隊は世界有数の軍隊となり、戦争の現場に送り出される状況となっています。
残念ながら日本政府の無謀な行為を防止する力は国民にはないのかと疑われるような現実があります。
権力を握る総理大臣と政府与党が、改憲主張の先に立つ現実を批判し、拒否する力は徐々に発展しつつあるとは言え、なかなか国民全体の力を結集するまでには至っておりません。
全国水平社以来の自由・平等の基本的人権を守り、民主主義と平和を守る集団、部落解放運動や教育運動、あらゆる市民の要求運動が民主政党と連携し、まさに国の危機を乗り越え、国際連合を中心とする世界的結合と国際関係の改善が急がれる年です。
とくにアメリカを中心としつつもロシア、中華人民共和国等との環太平洋の平和友好の方向に政府も前進するように叫び声を上げるべきでしょう。そしてまた、地方自治も発展させなければなりません。
差別の観念と制度は、日本のこうした積極的課題達成を大きく阻んでおります。私たちはこの実態を明らかにし、この現実を変革する行動力と思想、文化の構築を一層速く大きなものとしなければなりません。
戦後の幾多の事件を明らかにし、変革の実績を蓄積してきた事実の上に立った、私利私欲を克服しセクト主義を排し、まさに人類の夢と力と創造力を発揮する人材を結集しなければなりません。
差別の溝の深さ、壁の厚さは、今日の部落の若い人たちが直接感じ取ることは難しい状況となりました。水平社以来の部落解放運動の成果であり、日本の民主化、近代化の現実です。青年の恋愛、結婚も学校生活や社会的交流を通じ自由となりました。就職もまた近代化されてきました。こうした現状はますます発展させなければなりません。
これが反面、部落の過疎化ともいえる現実が生じつつあります。青年層は外に移り、高齢者、病人、失業者が部落に多い、差別による部落の昔からの状況が深刻化する面もみられます。若者は自由だが、父兄や母姉が通婚に反対する厳しい差別の現実は消えてはおりません。
こうした差別構造の壁を粉砕することが、日本の新しい発展のためには避けることのできない道かと存じます。
新年のめでたい日にあえて言葉を差別に向けるのは、生涯の願いを部落解放に向けていた老骨の一番大事な願いを申し上げたいからです。
皆様がますますお元気で、旧来同様に人権平和へのご活動を強められ、幸福な人生を歩まれますように、そして一層のご支援・ご協力を部落解放・人権研究所に賜りますようお願い申し上げます。
2005年元旦
<各部局から>
【総務部】
韓国晋州仮面劇招聘、有志職員の台湾ツアー、第4次訪中団、中国中南大学および国家民族事務委員会の訪日、有志職員の晋州仮面劇祭への参加、そして空前の韓流ブーム……北東アジアがぐっと身近になった一年でした。人と人との交流を通して、学んできた知識に血と肉がつきます。初心を忘れず、今年も相互理解と交流を深め広げる一年にしたいです。
【啓発企画室】
啓発企画室にとって2004年度は、室長含め職員3名が新しく加わり、新しい船出の年になりました。職員がお互いに自らの問題意識を率直に語り合い、時代を先取りした人権啓発に取り組むことで成功も失敗も含めて多くの貴重な経験をしました。今年もここから想いを込めた人権啓発の新しい風をお届けします。解放大学やいろいろな集会でお会いしましょう!
【研究部】
研究部は、新しい取り組みとして<1>「憲法と人権問題研究会」、<2>「キャリア教育と人権研究会」、<3>「部落問題に関する意識調査研究プロジェクト」、<4>「人権の視点から見た企業報告書の評価事業」、などを進めます。報告書として、『教育コミュニティと人権意識』を発刊する予定です。
【図書資料室】
新年あけましておめでとうございます。
部落問題・人権関係図書・資料の専門図書館として情報収集を行っています。コンピューターで、所蔵図書データ、文献データをご自宅からでも検索できます。また、お電話による学習相談もお受けしております。本年もみなさんの一層のご利用をお待ちしています。
検索される場合は、http:// blhrri.orgか、http://www. ribura.jpをご利用下さい。
【編集販売部】
月刊『ヒューマンライツ』も2004年11月号で創刊200号を迎えました。これもひとえに執筆者や読者の皆様のご協力の賜物ですが、今後とも内容の充実に努めてまいります。単行本は新年以降、『金香百合のジェンダーワークショップ』、『博物館と人権学習ガイド』、『排除される若者たち―フリーターと不平等の再生産』、大阪同和・人権問題企業連絡会の実践をまとめた書籍などの刊行を予定しています。どうか、ご期待ください。
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