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2005.04.05
意見・主張
  
関西学長、人権・同和問題担当者懇談会を開催
(2005/2/28)
  関西学長、人権・同和問題担当者懇談会が2005年2月28日、大阪人権センターで開催され、二つの報告がなされた。

  第一報告は、「最近の大学における差別事件の動向」をテーマに、北口末広・部落解放同盟大阪府連合会書記長よりなされた。

  まず、1990年代以降の大学における主な差別事件が、<1>差別落書事件、<2>差別文書・投書・貼り紙事件、<3>差別発言事件、<4>その他の差別事件に分けて紹介された。

  大学における差別事件の差別性の分析として、<1>差別の重みを全く理解していない、<2>差別を受けた側のいたみを共感できていない、<3>小・中・高での同和教育・人権教育を悪用し、中途半端に学んだ知識で差別をしている、<4>落書きの場合、極めて攻撃的になっている、<5>未だに悪いことを表現するのに部落が比喩的に使われており、これをマスコミが助長している、<6>相手を攻撃する手段として部落差別が利用されていること、が指摘された。

  差別事件の背景として、<1>小・中・高の同和教育・人権教育のアンバランス・不徹底、<2>大学における同和教育・人権教育の不徹底、講座の有無・必修化、人権侵害を集約する大学の組織体制、人権教育を推進するシステム、大学としての目標、カリキュラム・教材、<3>教職員の研修、<4>大学としての体制、<5>差別事件、人権侵害事件の集約体制、<6>事件発生後のとりくみ体制があげられた。

  インターネットの普及など情報工学の進展は、人間の意識を増幅する働きがあり、それは差別意識を増幅しネット上での差別事件の多発にもつながる。高度情報化社会は、高度プライバシー保護社会、高度人権教育社会でないともたない。その時の大学の役割は大きいと訴えられた。

  第2報告は、「人権教育のための世界プログラムについて」をテーマに、友永健三・部落解放・人権研究所所長よりなされた。

  2004年12月10日、国連総会は2005年1月1日から「人権教育のための世界プログラム」に取り組む決議を採択した。「世界プログラム」の第一段階は、2005年から2007年までの3ヵ年で、初等・中等学校制度における人権教育の推進に重点が置かれる。「世界プログラム」では、人権教育が目指すものとして、人格およびその尊厳の感覚の全面的発達、法の支配など6点をあげている。

  「世界プログラム」における人権教育活動の原則の中で重要なものとして、b)違いの尊重および理解、ならびに、人種、性、言語、宗教、政治的その他の意見、国民的、民族的もしくは社会的出身、身体的もしくは精神的条件等にもとづく差別に対する反対を醸成すること、d)地域社会および個人が自己の人権上のニーズを特定し、かつそれが満たされることを確保できるようにエンパワーする、i)学習者の日常生活との関連を保ち、学習者が、人権を抽象的規範の表明から自分たちの社会的、経済的、文化的および政治的状況の現実へと変えていく方法および手段についての対話に参加できるようにすることが指摘されている。

  初等・中等学校における人権教育を実施するために、各国で計画が策定される必要があるが、各国が最低限とらなければならない行動として、学校制度における人権教育の現状分析、優先課題の設定および国内実施戦略の策定、計画されている活動の実施の開始があげられている。

  こうした課題を遂行していく際に、2000年12月に公布・施行された「人権教育および人権啓発の推進に関する法律」を活用していくこと。日本政府は、世界プログラムの共同提案国に入り、原口大使が賛成演説をしており、日本政府の実行を求めていくこと。1月から「国連・持続可能な開発のための教育の10年」が始まり、異なった世代間の公正という考え方がうちだされており、世界プログラムの取り組みにも取り入れていくことが必要である。

(本多 和明)