関西学長、人権・同和問題担当者懇談会が2005年5月31日、大阪人権センターで開催され、43大学からの参加があった。
第一報告は、「『大阪の部落史第1巻 史料編』から判明してきた被差別民の諸相」をテーマに、桃山学院大学の寺木伸明さんよりなされた。
まず、『大阪の部落史第1巻 史料編』の概要と特徴について、考古、古代・中世・近世1(前期/元禄期まで)を収録範囲とし、大阪府域全体を対象とした前近代の部落史史料集としては初めてのものであり、考古編を部落史資料集に含めたのは全国でも初めてで、CD-ROMもついている、近世は原則として未翻刻・未公表の史料を収録したと説明があった。
近世1(前期)の概要として、元禄十一年の『天王寺領内悲田院仲間宗旨御改帳』(四天王寺所蔵)と『摂州東成郡天王寺村転切支丹類族生死改帳』(鬼洞文庫、関西大学図書館所蔵)を手がかりとして、天王寺「非人」集団(悲田院仲間とも称された)の実態について報告された。
大坂には天王寺、鳶田、道頓堀、天満の4か所に「非人」集団が居住し、その各集団の長を長吏といった。本宗門帳には、天王寺「非人」集団の実態について、戸数、人数、家族数、続柄、宗旨、旦那寺等が記載されている。「非人」集団の構成は、「悲田院仲間」「手下新非人」「新屋敷手下非人」という3層からなり、悲田院「非人」集団が、家族の形態をとって存在していたことが明確に示されている。出生地は、東は陸奥国から西は肥後国にいたる広範囲にわたっていた。今回、天王寺「非人」のなかに、善休という名前の転びキリシタンの存在が確認されたことは興味深いことである。
続いて、第2報告は、「『人権侵害救済法』(仮称)の制定をめぐる現状と課題」をテーマに、組坂繁之・部落解放同盟中央本部執行委員長よりなされた。
「人権侵害救済法」の制定はむずかしい情勢にあるが、第162回通常国会が延長され、一定の決着をむかえる見通しがでてきた。
「同対審」答申、パリ原則や再三にわたる国連の勧告、人権擁護推進審議会答申をはじめとする国内外の世論や、部落解放基本法の制定を求める中央や地方の実行委員会の運動に押されて、政府も人権侵害救済法を取り上げざるをえなくなってきた。
政府の「人権擁護法案」の問題点の第一は、政府からの独立性が担保されているかということ。それは公権力による人権侵害からの救済にとって重要である。内閣府の外局にもっていける展望が出てくるかどうかがポイントとなる。日本の「ネオ・コン勢力」は、8条委員会(審議会方式・各省庁の内局)に持っていくことを主張しているが、これは国際的にも問題にならない。
問題点の第二は、人権委員会が社会の多元性を反映しているかどうかである。透明性を確保し、部落問題・人権問題に精通した人を委員として求めていく。「ネオ・コン勢力」は国籍条項を入れろと主張しているが、意図的にそういうことをいってこの法案をつぶそうとする動きには断固として反対せざるをえない。
問題点の第三は、実効性の問題で、少なくとも都道府県に1つずつ人権委員会をつくる必要がある。
問題点の第四は、メディア規制で、今回は凍結となっている。
「人権侵害救済法」制定の歴史的意義は、組織もなく孤立して泣き寝入りをしている人たちを救済し、日本の人権状況を全体的に底上げすることにある。
秋以降になると、日本国憲法、教育基本法、消費税値上げの問題がでてくる。平和、民主主義、環境が守られるのか、戦争の道へ行くのか分かれ道に来ていると思っている。
(文責:本多 和明)
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