この夏、部落解放・人権研究所の原田伴彦記念基金に基づく国際人材養成プログラムの支援を得て、反差別国際運動(IMADR)のジュネーブ事務所のインターンとして、第23期国連先住民作業部会、第57会期国連人権推進擁護小委員会(以下、小委員会)、第67会期国連人種差別撤廃委員会の監視活動に参加した。今会期は国連改革をにらんで小委員会自体の将来がどのようになるのか不明確なまま、数々の重要事項に関して議論が繰り広げられた。
以下、「職業と門地に基づく差別」とマイノリティの権利に関して、今会期の注目点を紹介したい。
■ 「職業および門地に基づく差別」の撤廃のための原則と指針の策定に向けて
2000年より、小委員会において「職業および門地に基づく差別」に関し、研究および討議がなされてきている。今会期ではこれまでの議論と作業文書の研究を踏まえ、本年よりこの差別の特別報告者としての活動を開始した横田委員(日本)と、鄭委員(韓国)から、第一次報告(UN Doc. E/CN.4/Sub.2/2005/30)が提出された。報告では、第56会期に提案された差別撤廃のための原則と指針の作成するために、当事者の置かれた実態、現存する差別的慣習、立法的、司法的、行政的対策および救済策等を把握するべく、NGO、政府、当事者、国レベルの人権機関および国際機関へ質問票を配布することが計画されている。さらには現状を把握するためのアジアとアフリカの地域ワークショップ、およびジュネーブにおける国連関係者を含めた包括的諮問会議を行うことを計画している。
小委員会では質問票が法律上の措置のみならず、その実施、効果、および実質的な救済(司法正義等)に関する質問を盛り込み、関連する情報を収集する必要性が、反差別国際運動などのNGOによる共同声明およびハンプソン委員(イギリス)により強調され、この視点を考慮して修正された質問票が配布されることになった。小委員会は特別報告者の計画を支持する決議を採択している(決議2005/22)。
■ マイノリティに関する作業部会およびマイノリティの権利侵害
また今回の小委員会では、マイノリティに関する作業部会(WGM)に関して、WGMを縮小した形で小委員会開催期間中に開会するとの今年の人権委員会の決定を、いかにして変更できるかが議題となった。さらにはWGMがマイノリティの権利に関する国際条約作成に関し、これまでの議論を結晶化させていく意味で、多くの委員は、マイノリティの定義等に注意を払いつつも、この有用性を検討することを支持した。第57会期のWGMに関する決議(2005/18)においては、人権委員会に対し、WGMを(先住民族作業部会などと重複しないようにしながらも)小委員会会期直前に行う慣行に戻すよう、経済社会理事会の承認を求めることを要求している。
ハンプソン委員(英国)およびビーロー委員(ハンガリー)は、最近のベラルーシ政府によるポーランド人少数者に対する人権侵害に関して懸念を表明した。国代表が他国の人権状況に関して発言を控えるとの小委員会規則に反するとの指摘があったものの、ポーランド政府代表もこの件に関して発言をしている。
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