人権救済機関を創設する国政府の「人権擁護法案」の成立の目途が立たずもたついている間に、このたび鳥取県で「人権侵害救済条例」が国に先行して、また全国に先がけて可決成立をみました。
いうまでもなく国では法律、地方では条例がすべてのものごとの第一歩であるところ、鳥取県が憲法13条、14条等の人権保障の考え方を「人権尊重の社会づくり」の一環として地方人権委員会の創設という形で具体化し、人権侵害被害の迅速な救済に備えたことは評価に値いします。ここでは、差別の実態をいちばんよく知る地方がきめ細かい的確な判断が下せるとした知事提案の条例を県議会が再調整して、新たな条例案として提案したもので、県民の負託に応えた県当局の立法努力を多としたいと思います。
しかし他面において、本件のような行政機関による人権条例の運用には、
- 地方人権委員会(「人権救済推進委員会」)の独立性の確保、同委員の選任方法の適正化の問題
- 「公的機関による人権侵害」の抑制の問題
- 加害者への「勧告、氏名公表」等プライバシー権侵害の可能性排除の問題
など、多岐にわたる問題点が指摘されています。とりわけ類似事案に係わる判断が地方人権委員会(全都道府県設置を前提として)により大きく異なるような結果に至る懸念もあり、適切かつ慎重な運用が求められるところです。
人権侵害救済の要諦は、既存の組織、制度との形式的な整合性よりむしろオンブズパーソン(市民の代理人)的な適任者を中央・地方にどれだけ確保できるかが、制度を左右するカギとなるでしょう。要は経験を積み上げて、より規制的でなく、当事者間の自主的解決を基本に差別と人権侵害の抑止効果を期待してより啓発色の濃い方向にもっていくことが望まれます。
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