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2005.12.14
意見・主張
  
解放新聞大阪版 第1630号(2006年2月13日) より
新たな「部落地名総鑑」を回収

地区ごとに詳細な報告も


戸籍不正入手の関係者が所持

 行政書士らによる戸籍不正入手・密売事件について調査をすすめていた府連は、このほど大阪市内の興信所から2種類の新たな「部落地名総鑑」を回収した。「部落地名総鑑」はこれまでに8種類が確認されているが、今回回収したものはそのうちのどれとも違う種類のもの。9番目と10番目の「部落地名総鑑」が同時に確認されたことになる。

第9、10の「部落地名総鑑」

 回収したうちの一つはA4版の手書きをコピーしたもので332ページに及び、全国の被差別部落の地名、所在地、戸数、人口などが記載されている。

 大阪府内の部落については「大阪府下に於ける特殊部落に就いて」「過去数ヶ月にわたり当社社員が実地に府下一円を踏査した資料結果に基き詳述したものである」との但し書きのもとで詳細なレポートが記載されている。

 レポートには大阪の部落の「地名」、「戸数」、「人口」に加えて、「所在地及び環境」として各部落ごとに最寄り駅からの道順や地区の範囲、周囲の雰囲気や家並みの様子などが詳細に記され、地区内の主な姓なども記載されている。大阪府下で58地区が「特殊部落」としてあげられており、いわゆる非人部落についても記載されているものとみられる。なお、京都、兵庫、奈良の部落についても同様のレポートがなされている。

 書式は項目ごとに横書き、縦書きが混在するなど統一されておらず、レポートにある駅名などから1960年代につくられたものと思われる。

手書きで住所などを修正

 もう一種類のものはゴムで綴られた186ページのファイルになっており、都道府県別に被差別部落の地名がタイプ打ちされ「所在地」「戸数」が一覧になって記載されている。

 地名の横には手書きのメモで「5-ウ」「7-イ」など「符号」のようなものが書き加えられており、さらに地名などでタイプミスと思われるところには、手書きで修正がなされるなど、実際の調査に使われていたことが生々しく伝わるものとなっている

「職務上請求書」制度を悪用して

 府連では昨年の行政書士による戸籍不正入手・密売事件の発覚以降、不正に入手された戸籍と「部落地名総鑑」が照合され、差別身元調査に使われているとの情報を得て調査を進めてきた。

行政書士など8業士(弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理人、行政書士)には戸籍法施行規則第11条により戸籍などを職務上請求することが認められている。国家資格に基づく制度を悪用し、不正に取得された住民票や戸籍が興信所・探偵社などに売り渡され、差別身元調査に使われていたことは明らかである。行政書士により不正に利用されたと思われる「職務上請求用紙」は、これまでにわかっているだけでも3000通以上にもおよんでいる。

北口末広・府連書記長の話

発覚から30年が経過した今も部落地名総鑑が残っているのは、結婚などの身元調査を依頼する個人が後を絶たず、根強い差別意識がある表れである。府連は真相の糾明に全力をあげるとともに、こうした状況が事実上放置されている部落差別の現実を世に問う運動を展開していきたい。

「部落地名総鑑」これまでに8種が発覚

 部落地名総鑑は1975年11月、大阪府連に匿名の投書が送られてきたことから発覚した。府連は独自の調査で「部落地名総鑑」を入手し、同年12月に記者会見を行い大きな社会問題となった。

 これまでに判明しているものだけで8種類あり、そこには全国5300ヶ所を超す部落の名前、所在地、戸数、主な職業などが都府県別に記載されていた。「地名総鑑」の作成者は、興信所・探偵社の関係者で、人事や結婚に関連する調査の経験から作成し、販売すれば儲かるとの考えから作られた。220を超す購入者の大半は企業で、日本を代表する企業も数多く含まれていた。

 法務省は、1989年にこの事件の「終結宣言」を出したが、その後も調査業者による差別身元調査事件が明らかになるたびに、「部落地名総鑑」が存在する可能性がささやかれてきた。「部落地名総鑑」事件発覚から30年が経過した今でも、差別を商う差別調査が脈々と営まれていたことが改めて浮き彫りとなった。


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