関西学長、人権・同和問題担当者懇談会が2006年7月20日、大阪人権センターで33大学の参加の下、開催された。
第一報告は、「差別事件が問いかけるもの 部落差別は今」をテーマに、部落解放同盟大阪府連合会書記次長の赤井隆史さんよりなされた。
まず、小西部落解放同盟飛鳥支部長が公金横領で逮捕された飛鳥会問題について、現職の支部長が逮捕されたことについては、ご心配をおかけしたが、除名し毅然たる対応をしてきた。真相解明のプロジェクトを設置し、再発防止に取り組んでいきたいとの経過説明がなされた。
続いて、最近の主な差別事件について紹介された。
朝日系列のサンデープロジェクトが2005年1月「食肉のドン」と題して2回とりあげたが、部落の出自を本人の了解なしに放映し、しかも暴力的な集団であるかのような誤解を与える露骨な差別発言であるということでテレビ朝日へ抗議、テレビ朝日、朝日放送から謝罪があり、10月21日東京の中央本部で関係者に対する糾弾会を開催することとなった。
1998年6月に起きたアイビーリック差別身元調査事件では、アイビーのクライアントとして登録されていた1400社のほぼ8割が採用調査を依頼し、リックの社員が聞き込みをして、被差別部落と気づくと※印がうたれ、調査不可として企業に返され、不採用にするという関係が成り立っていた。
1999年10月10日の新聞に、警察官という職務を利用して、市役所から戸籍謄本をとって金融業者へ横流ししていた戸籍謄本不正入手事件が報道されたが、その前の7月に結婚差別について相談が大阪府連にあり、女性の兄のつれあいが部落出身だといって反対されているということで、第三者請求で戸籍がとられていないか調べてもらったところ、この逮捕された警察官がとっていて金融業者を経由して興信所へ横流ししていたことが判明した。
2005年4月に発覚した行政書士による戸籍の不正入手・密売事件は、行政書士3人が2千通をこえる戸籍謄本を不正に横流ししていた。この事件を調べていくなかで、大阪市内の興信所から3冊の部落地名総鑑が回収され、このなかに第9、10番目の地名総鑑が含まれていた。さらに、電子版の地名総鑑も存在すると言われている。
続いて、第2報告は、「学生から見る部落問題」をテーマに、関西大学人権問題研究室研究員・法学部教授の吉田徳夫さんよりなされた。
教職科目の総合演習を担当している。総合演習とは、教育職員免許希望者には全員必須の科目で、関西大学ではこの科目に「人権教育」を選択して副題としてきた。現在は文科省の指導もあり、副題ははずしているが、授業は各教員が自分の専攻するテーマと人権問題との関係に配慮して行っている。
学生は部落問題を知らないということを前提に、講義や演習をおこなっている。授業の構成は、「法制史上より見た部落問題」を講義しレポートを提出させる。部落出身講師による報告とワークショップ、全員参加でフィールドワーク、フィールドワークを踏まえて最終のレポート提出を実施している。
学生のレポートから紹介すると、「アメリカに留学していてジャップが蔑称だとは知らなかった。後で知って恥ずかしい」「部落の周辺地域だけが差別をしてきたと思っていたが、社会全体が差別をしてきたことがわかった」「自分には関係ない問題と思っていたことを恥ずかしく思った」「小学校から同和教育を受けているのに一体何を知っているのか。部落差別はダメだということのみを教えられてきた。穢多・非人という言葉が差別の言葉とは知らなかった」「歴史を正しく知ること、今も部落問題が現実に存在していることを事実として認めること」「フィールドワークで社会の講義で受けた内容と実際とが違っているのは衝撃的であった。参加してよかったことは怖いと思ったことが誤りであったことに気づいたこと」「フィールドワークの朝、母親に大丈夫と聞かれてムッとして大丈夫って何がと聞き返した。部落差別ってこういうふうにして根付いていると実感した」「授業中に部落出身の学生の告発はあってもこれに気づく者はいない、被差別問題の学習を差別をしないためにしていかなければならないことに気づいた」などの感想が紹介された。
(文責:本多 和明)
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