トピックス

研究所通信、研究紀要などに掲載した提言、主張などを中心に掲載しています。

Home意見・主張>本文
2007.01.16
意見・主張
  
2007年を迎えて

部落解放・人権研究所 理事長 寺木伸明

研究所通信341号より


 あけましておめでとうございます。

 昨年も、本研究所の活動にご尽力・ご協力いただき、厚く感謝申し上げます。年頭に当たりまして一言ご挨拶申し上げます。

 既にご承知のように昨秋、小泉内閣に代わって安倍内閣が成立しましたが、その安倍内閣のもとで、戦後の平和教育・民主教育の根幹をなしてきた教育基本法の改訂が、国会および公聴会等で民主的で、本質的な議論が十分なされないまま、強行されました。
 これまでの教育基本法の平和主義・民主主義を、施行されて60年過ぎた現在の状況の中でさらに具体化し、徹底しようというのではなく、むしろその反対のことが盛り込まれています。
 改訂前の基本法は、その前文において「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。」と述べ、続いて「この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。」とし、また、「日本国憲法の精神に則り」、この法律を制定すると明記していて、憲法との一体性を強調しています。
 したがって、教育基本法の改訂は、憲法の改訂、特に憲法第9条改訂のための地ならしでもあると考えなくてはなりません。

 私たちは、今、戦後、平和を支えてきた屋台骨が崩されるかもしれないという瀬戸際に立たされていると認識しなければならないと思います。
 このような、平和と基本的人権をめぐる重要な時期において、昨年は部落解放運動にとって由々しい事件が、大阪・京都・奈良等で相次いで起こりました。
 これらの一連の事件は、特に水平社運動の精神を冒?するものであり、部落解放運動が営々と築いてきた成果を蔑ろにし、被差別部落をめぐる状況を、10年も20年も後退させかねない質のものであったと思います。

 部落解放運動は、地域を単位とした大衆組織によって展開されるところに一つの特徴があり、そのことと、当面、格差是正を求めることを伴うところから事業との関わりが生じるという特徴と結びついて、よほど解放の自覚と使命、高い倫理観を堅持していないと、ややもすると利権に陥りやすい面をもっているように私には思われます。

 それだけに、部落解放運動においては、自らこうした自覚、使命、倫理観をもつよう常に促す働きかけが大切だと思いますし、できれば倫理綱領のようなものを自ら作り上げて、厳しく律していくことも必要ではないかとも、僭越ながら、思っています。

 本研究所におきましても、この厳しい時代状況の中で、多くの方々との協力とさらなる研鑚によって方向性を間違うことなく、進む道を切り拓いていきたく、また、自らをさらに律していく所存であります。
 どうぞ本年も、一層のご指導・ご鞭撻をお願い申し上げます。

 各部室の抱負

 〈総務部〉
 昨年6月、公益法人改革に関する三つの法律が公布され、2008年12月までに施行される運びとなっています。この制度改革の流れにあわせて公益社団法人認定をめざした諸準備を総務部が中心となって進めていきます。あわせて会員制度の充実にも努めていきます。

 〈啓発企画室〉
 4月より新室長を迎え、新たな体制で啓発事業を展開します。また、多くの出会いを大切にし、部落差別をはじめとするあらゆる差別に反対するネットワークの構築にむけて努力します。

 〈研究部〉
 キャリア教育と人権、企業報告書における人権記述調査の報告書や『史料集長吏文書』を発刊すると共に、2007年度は、新たに児童養護施設経験者の学校から社会への移行調査、部落問題の参加型学習教材の開発研究、研究所ホームページの大幅リニューアル等に取組みます。

 〈図書資料室〉
 新年あけましておめでとうございます。
 部落解放・人権研究所図書資料室(りぶら)では、部落問題・人権関係図書・資料の専門図書館として情報収集と発信を行っています。
 ご自宅からでも蔵書データ、文献データを検索することができます。また、お電話による学習相談もお受けしておりますので、気軽にご利用下さい。
 まずは、一度、気軽にのぞいてみてください!人権問題についての学習相談にも応じています。
 本年もみなさんの一層のご利用をお待ちしています。
 検索される場合は、こちらをご利用下さい。

 〈編集販売部〉
 2006年は、歴史、法律、メディア、教育に関する書籍のほか、昨年よりスタートした入門書シリーズ『ヒューマンライツベーシック』を2冊発行しました。また、新しいジャンルとしては「コミュニティワーク」や「ジェンダー」についての書籍も加わり、人権という枠組みを広げるジャンルの出版物を発行しました。2007年は、いまいちど人権研究所の出版物に求められているものを見直し、ニーズの高いテーマの書籍化を実現していきたいと考えています。月刊『ヒューマンライツ』でも新しい連載が始まります。どうぞよろしくお願いします。