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2007.01.30
意見・主張
  
「人権の法制度を提言する市民会議」結成趣意書

1. 「21世紀を人権の世紀に!」といわれています。しかし、日本社会では部落出身者、アイヌ民族、沖縄コミュニティの人びと、外国籍者、障害を持った人びと、女性、子どもなどマイノリティに対する人権侵害や差別事象が依然として解消していません。新自由主義的な市場原理優先政策によって、貧富の格差が広がり、労働者の権利が侵害される状況が頻発しています。また、9.11以降の反テロ戦争キャンペーンの影響も加わり、移住労働者を含む外国籍者に対する排外主義的風潮もみられます。こうした人間の尊厳を軽視し、または無視する事象や風潮は民主主義社会にとって無視できない状況となっています。

 たしかに前世紀末から今世紀にかけて、日本ではさまざまな人権立法が成立し施行されてきました。改正男女雇用機会均等法、男女共同参画社会基本法(1999年)、人権教育・啓発推進法、児童虐待防止法(2000年)、配偶者等からの暴力防止法(DV法、2001年)などです。また国際人権規約をはじめとする人権諸条約を批准し、これに加入しています。

 これらの条約や法律は完全なものではありませんが、人権社会の確立にとって一定の成果といえます。また全国の自治体では500を超える人権条例がすでに制定されています。

 しかし、日本では包括的な人権法や差別禁止法は制定されておらず、人権救済制度の要である政府から独立した国内人権機関もいまだ成立していません。

2. いまや、日本社会において人権を確立するため、新たな人権救済制度の創設を含め、人権の法制度のありかたを検討し、人権の法制度についての全体構想を提言すべき時期にさしかかっています。このため、私たちはさまざまな団体・個人からなるゆるやかな研究会的組織として、「人権の法制度を提言する市民会議」(仮称)(略称:「人権市民会議」)の結成を準備しています。

3. 「人権市民会議」は、さまざまな人権課題に取り組んできた団体や個人が互いの活動や取り組みを尊重しつつ協働する横断的なネットワークとし、当面2006年12月末までの1年間の時限的組織とします。「人権市民会議」は以下の4つの基本的な視点を大切にします。

  1. 人権侵害や差別の実情を踏まえたマイノリティ当事者の視点
  2. 人権と平和の密接不可分な関係を重視し、日本国憲法や日本が批准・加入している人権諸条約に規定されている「人権」を深く掘り下げ、発展させるという視点
  3. アジア・太平洋地域の市民との意見交換と協働を重視する視点
  4. 21世紀における多民族・多文化の共生社会と人権文化の創造という視点

4. 以上の趣旨をご理解くださり、「人権市民会議」にご参加ください。


人権市民会議 世話人・企画運営委員 一覧
◆代表世話人

江橋 崇 (法政大学教授)
江原由美子 (首都大学東京教授)
武者小路公秀 (大阪経済法科大学教授)

◆世話人

池原毅和 (弁護士)
植本眞砂子 (自治労副中央執行委員長)
上村英明 (市民外交センター代表)
内田博文 (九州大学教授)
内海愛子 (恵泉女学園大学教授)
海渡雄一 (弁護士)
加藤 忠 (北海道ウタリ協会理事長)
北野誠一 (東洋大学教授)
組坂繁之 (部落解放同盟中央執行委員長)
神美知宏 (全国ハンセン病療養所入所者協議会事務局長)
清水建夫 (弁護士)
友永健三 (部落解放・人権研究所所長)
西川 潤 (早稲田大学大学院教授)
林 陽子 (弁護士)
廣瀬禮子 (I女性会議共同代表)
? 重度 (川崎市ふれあい館館長)
三澤 了 (DPI日本会議議長)
山本潤一 (日教組副中央執行委員長)

◆企画運営委員

委員長
山崎公士 (新潟大学法科大学院教授)
赤井隆史 (部落解放同盟中央執行委員)
金子匡良 (法政大学講師)
喜久里康子 (沖縄市民情報センター)
木口恵美子 (東洋大学大学院博士後期課程)
金 政玉 (DPI日本会議事務局次長)
工藤定次 (神奈川人権センター事務局長)
齋藤明子 (コミュニティサポート研究所事務局長)
大門正彦 (自治労中央執行委員)
谷元昭信 (部落解放同盟中央書記次長)
筒井道広 (日教組中央執行委員)
張 學錬 (弁護士)
丹羽雅雄 (弁護士)
森原秀樹 (IMADR-JC事務局長)
師岡康子 (弁護士)
李 嘉永 (部落解放・人権研究所研究員)