今日、国内外で企業の社会的責任(CSR)に関する関心と取り組みが進んでいる。2009年に「ISO26000」として規格化が実現することも、その象徴的な動向である。その重要な一分野として、人権の尊重が位置づけられている。日本でも現在、多くの企業でこのような取り組みが既に先進的に進められており、CSR報告書(名称は他に環境報告書や持続可能性報告書など多彩)として、これらの取り組みを積極的に社会に紹介する企業も見られる。
そこで、部落解放・人権研究所では、CSRに関連するコミュニケーションの一つのツールであるCSR報告書(2005年版)を521社収集し、そこで紹介されている人権の取り組みを96項目にわたり調査した。大きな項目としては、<1>CSR体制、<2>トップステートメントでの人権への言及、<3>企業倫理方針での人権の言及、<4>労働者の人権―労働者全般、女性、障害者、高年齢者、非正社員、従業員の個人情報、<5>企業活動が生み出す人権侵害への対応、<6>本業における人権の取り組み、<7>本業外での人権の取り組み、<8>第三者評価での人権への言及、等である。
その特徴を2007年4月に報告書(A4判45頁)としてまとめた。例えば、<1>企業倫理方針等に人権尊重を銘記する企業は241社にもおよんでいる一方、トップステートメントでの人権への言及は36社、<2>国際的な人権基準の記載では「GRIガイドライン」が185社、「国連グローバル・コンパクト」が25社、<3>人権尊重を明示した調達・取引基準を持つ企業は34社、<4>人権啓発に関する記載は106社、など現状と課題も含めた興味深い点が多く見られる。同時に、個別企業のさまざまな先進的取り組み事例も、一部ではあるが紹介している。
さらに、521社におよぶ企業ごとの人権情報記載状況は、研究所のホームページにすべて掲載されている。
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