トピックス

研究所通信、研究紀要などに掲載した提言、主張などを中心に掲載しています。

Home意見・主張>本文
2007.06.22
意見・主張
  
 2005年1月に大阪市で起きた在日朝鮮人2世の弁護士への入居差別事件と提訴を機に、改めて大阪市の外国人の入居差別撤廃への姿勢が問われています。

大阪市における外国人の入居差別を撤廃するための取り組みに関する要請書

2007年4月17日

大阪市長 関淳一 様

 大阪市における外国人の入居差別を撤廃するための取り組みに関する要請書

 【要望団体】
(特活)コリアNGOセンター
在日コリアン青年連合(KEY)
すべての外国人労働者とその家族の人権を守る関西ネットワーク(RINK)
日朝日韓連帯大阪連絡会議(ヨンデネット大阪)
大阪労働者弁護団

【代表連絡先】
(特活)コリアNGOセンター
 〒537-0025 大阪市東成区中道3-14-17-2F
  TEL O6-6978-7676 FAX O6-6978-7686

 人権尊重のための社会づくりに取り組んでおられる貴市に敬意を表します。

 私どもは、大阪市内で在日外国人の人権保障や多民族・多文化共生のための社会づくりに取り組んでいる在日コリアンおよび日本人団体です。

 さて大阪市には2006年6月現在で総人口の約4.6%を占める12万人を超える外国籍住民が居住しており、今後も増加する傾向が見られます。こうした中で外国籍住民が地域に定着し、その人権が保障され、日本人と共生を図ることのできる制度を整備する必要性はますます高まっています。

 しかしながら、これまで「大阪市国際化推進基本指針」(2002年3月改定)、「大阪市外国籍住民施策基本指針」(2004年3月改定)などが出されているにもかかわらず、外国籍住民に対する差別や偏見は依然として根強く残っており、とりわけても生活を営んでいく上で最も基本的な権利である居住権が「外国人である」という理由によって不当に侵害される事件が相次いでいます。

 貴市としても、「大阪市外国籍住民施策基本指針」において、「国籍を理由とした賃貸契約締結の拒否は、『信義則に違反し違法行為を構成する」との大阪地方裁判所の判例があるものの、依然として住宅入居に関して不愉快な経験、偏見を感じた外国籍住民が多いことから、府をはじめ関係行政機関や関係団体等とも連携・協力し、入居差別の撤廃に向けた啓発に努めます」との立場を明らかにしておられるところでもあります。

 また、昨年に成立した「住生活基本法」においても「住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策の推進は、民間事業者の能力の活用及び既存の住宅の有効利用を図りつつ、居住のために住宅を購入する者及び住宅の供給等に係るサービスの提供を受ける者の利益の擁護及び増進が図られることを旨」として行われなければならないとされています。

 なによりも、国籍を理由とした入居拒否は日本国憲法や、日本政府も批准している人種差別撤廃条約をはじめ国際人権諸条約にも明らかに違反するものです。

 こうした現状に鑑み、ぜひとも貴市が入居差別の撤廃に向け、より積極的な施策を整備されることを強く求め、以下要望いたします。

【入居差別の現状認識こついて】

 大阪市は歴史的にも、また現在の居住実態から見ても外国籍住民との関わりが極めて深い都市であり、これまでもさまざまな取り組みが進められてきました。しかし一方で、外国籍住民の入居差別においては1993年の裵建一氏裁判や2001年に実施された外国籍住民意識実態調査などからも、いまだに根強く残っている実態が明らかです。同時に当初から外国籍住民には紹介物件を制限する、あるいは日本人の保証人を要求するなど、より巧妙で表面化しにくい手法で入居を拒否するケースが後を絶ちません。また居住権の侵害は外国籍住民のみならず、高齢者、障害者、母子家庭など、その他の社会的弱者に対しても深刻な問題を生み出しています。これらの問題について貴市が、どのような現状認識と評価を持っているのか見解を教えてください。

【これまでの入居差別撤廃のための諸施策の評価について】

 貴市におかれましても「入居差別撤廃」の必要性を明らかにし、取り組みを進めていくことを掲げておられますが、これまでの取り組みの内容およびその実効性の評価についての見解を教えていただきたいと思います。

【入居差別の撤廃にむけた禁止規定の明確化について】

 差別問題は「違法行為」であり、禁止および解消されなければならない人権侵害行為です。入居差別も明らかにこうした問題として位置づけられる問題です。したがってその解消のためには、差別行為が「違法」であり、同時に市としてそのことを明確に禁止するという意思を明らかにすることが必要だと考えます。そのために入居差別の禁止を明文化する規定を設けてください。

【被害者に対する救済措置こついて】

 入居差別は単なる私人間の契約行為上の問題として捉えられるものではなく、明らかな人権侵害行為であり、被害当事者に対する救済措置が不可欠です。そのための具体的な制度として、公にされた相談窓口の設置や、実際の差別行為があった場合の市としての対応(関係者及び関係団体への調査や勧告、事案の公表など)について整備を図ってください。

【入居差別を予防するための措置について】

 多くの入居差別は、あからさまに「外国人だから」ということを理由にして拒否するのではなく、例えば「日本人の保証人がいない」など、外国人にはハードルの高い条件を出すことによって暗示的に入居を拒否する事例も多数発生しています。こうした現状を解消するための具体的な施策として、<1>「保証人バンク」(仮称)などの設置・整備、<2>「住まい情報センター」等関係機関に公の入居差別相談窓口の設置を実現してください。                                                  

【関係諸機関との連携の強化について】

 入居差別はその被害者がマイノリティである外国人であるために極めて表面化しにくく、また被害者の相談窓口として現在機能しているのは地域の市民団体やNGOです。したがって入居差別を撤廃するための諸施策の整備・充実を図っていくためにはこうした市民団体・NGOとの連携が不可欠です。そのためにも「大阪市外国籍住民施策有識者会議」の活用を図ると同時に、広く関係諸団体が参加できる「市民検討委員会」(仮称)を設置し、より効果的な施策の実現を図ってください。

関連HP

■康由美弁護士入居差別裁判関連資料(コリアNGOセンター)