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2007.06.28
意見・主張
  

被差別マイノリティ間の連帯へ
人権の法制度市民会議が総会ひらき再出発

解放新聞大阪版 第1695(2007年7月2日)号より
  2006年12月、「人権の法制度を提言する市民会議」(通称人権市民会議)は、「日本における人権の法制度に関する提言」を公表した。この提言の実現をはかるために、旧人権市民会議の構成メンバーを中心に、あらたに「人権市民会議」を結成し、6月2日、東京・松本治一郎記念会館で、総会を開いた。その後、発足記念シンポジウムとして、「つながりあえるか?人権の法制度確立に向けて」と題し、各人権運動の現場で活躍する方から、現場で直面している人権課題が報告され、連帯に向けた可能性について議論された。

  司会の丹羽雅雄弁護士が総会に至る経緯を説明した後、山崎公士さん(新潟大学教授)が人権市民会議(新)の趣旨と活動内容、組織の構成、財政、さらに今後の活動方針について提案した。とりわけ、今後の活動方針として、先の「提言」の広報を目的としたワークショップ、提言内容の継続的検討・改善作業、提言内容に関わる法制定に関わるアピール活動、人権活動を進める人々の協働・連帯の促進、情報発信、実態調査などを行っていくこととした。また、人権市民会議の体制として、山崎さんを会議の代表、山下梓さんを事務局とすることが提案された。これらの議案が承認され、人権市民会議は正式に発足した。

  シンポジウムでは各方面から意見があり、部落解放・人権研究所の李嘉永さんがコーディネーターをつとめた。東京メトロポリタン・ゲイフォーラムの赤杉康伸さんは、性的少数者の人権に関する動向を報告し、自身の体験から、同性パートナーの法的保障のために公正証書を活用しているが、社会的な通用性が低いことが指摘された。

  首都圏青年ユニオン書記長の河添誠さんからは、フリーターや低賃金労働で厳しい生活を送りながらも、活き活きと労働組合運動を担っている若者の様子が紹介されたが、他方で、賃金の未払いや有給休暇なし、さらには保険未加入という違法状態が、低所得の若者達を疲弊させている実態が、実例も踏まえて紹介された。

  コミュニティーサポート研究所事務局長の斎藤明子さんは、障害のある人々が、「専門家の存在」や「サービスの必要性」から、福祉の対象と位置付けられ、人権の仲間ですら考えられてこなかった経緯があり、福祉だけではなく、人権の視点にたって、自己選択や自己決定に基づく自立概念への転換が必要であることを訴えた。

  その後の議論では、先の提言の中で、人権教育・啓発がどうしても「あの人たちの問題」という形で終わりがちであり、却って「可哀想な人たち」という感想が残るおそれがあること、また、現行法制度上の婚姻のあり方が、婚外子や、性的マイノリティの当事者の人生にゆがみをもたらしていること、貧困という切り口から、多くの立場の人々が共通の課題を取り上げつつあることなどが議論された。

  これらの議論から、多様な人権課題を細やかにより分けていけば、共通する課題が見出され、そこから連帯して取り組みを進める可能性があることが伺えた。まさに、当事者や人権運動間の連帯に一歩を踏み出したシンポジウムであった。

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