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研究所通信、研究紀要などに掲載した提言、主張などを中心に掲載しています。

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2007.07.27
意見・主張
  

関西学長、人権・同和問題担当者懇談会
2007.06.13

 2007年度第1回関西学長、人権・同和問題担当者懇談会が、2007年6月13日、大阪人権センターで、30大学が参加して開催された。
『特別措置法』期限後5年の部落差別の現状と課題
-大阪の部落を中心に

谷川 雅彦(部落解放同盟大阪府連書記次長)

 行政データを活用して実態調査をする上で紆余曲折があったが、2005年11月28日付の大阪府企画調整部長から関係市町長宛の通知「同和問題の解決に向けた実態把握について」で、「今後の同和問題の解決に向けた一般施策による取組みを効率的、効果的に推進していくためには、実態を把握することが重要である」とされ、去年10月1日に調査を実施、行政データを活用して実態把握が行われ、12月に大阪府政策企画部人権室より「行政データを活用した実態把握中間集計」としてまとめられた。

 同和地区の人口が同和地区を有する市町全体(大阪市はデータ未提出で含まれない)に占める割合は、1.19%、前回2000年調査より4.24%減。「65歳以上」の人口が総人口に占める割合は、同和地区では21.5%で、市町全体より3.94ポイント高く、前回調査より24.28%増。世帯総数が市町全体に占める割合は、1.35%で、前回調査より3.79%増。高齢者世帯、母子世帯、住民税非課税人口の割合は、いずれも市町全体より高い。生活保護受給世帯率は同和地区では13.06%で、市町全体より10.26ポイント高く、前回調査より同和地区は19.11%増、市町全体も67.05%増と増加率が大きい。「10年以上の」生活保護受給者世帯の受給世帯総数に占める割合は同和地区では41.19%で、市町全体より19.33ポイント高い。そのほか、介護保険制度要介護認定者の割合、市町立中学校の高校進学率、市町立小・中学校長欠児童・生徒の割合、市町立小・中学校就学援助利用率、府立高等学校卒業者の大学進学率、府立高等学校の中退率についても、いずれも市町全体と比べると格差が改善されていない。

 同和地区の現状は、自立した人が出ていき、困難を抱えた高齢者、母子家庭の人などが新たに入ってきている。格差の拡大が進み、排除・無視・無関心による目にみえない課題が潜んでいる。もっと早く支援の手をさしのべる相談活動が重要である。また、今の住宅政策は、自立した人が地区を出ていかざるをえない役割を果たしており、同和問題の解決には、ふるさとに住み続けることができるまちづくりが重要であると報告された。


アジア太平洋地域の大学院における人権研究・教育の動向
-国際人権修士プログラムの意義

阿久澤麻理子(兵庫県立大学教員)

 世界各地で人権プログラムという大学院レベルで人権を冠した学位を取得できる研究・教育が広がっている。その背景には、90年代以降の冷戦の終結による人権研究・教育のニーズの高まりと大学改革の進展がある。人権プログラムは大きく大学院(ロースクールや学際的プログラム)と学部(法学部、教員養成大学・学部、一般教養)に分けられる。人権の取り入れ方としては、1.Program(プログラム)、2.individual courses(講座・科目)、3.Module(講座・科目の一部)がある。アジア・太平洋地域を対象とするインターナショナルコース(英語で実施)として設置されてきているとして、具体例として各大学の取組の特徴が紹介された。

 学際的プログラムの事例として、カルカッタ大学(インド)、マヒドン大学(タイ)、カーティン工科大学(オーストラリア)が、法学関係の事例として、香港大学、北京大学が紹介された。

 現状の評価として、専門家育成、政策の立案、学際的なプログラム、リサーチ文化の育成等、日本での人権研究・教育にも大いに示唆を与えるものとなっているとの報告がなされた。

(文責:本多和明)