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2008.03.31
意見・主張
  

「企業啓発推進における行政の役割」
第12回びわこ南部地域研究集会・企業啓発分科会に参加して

中村清二(部落解放・人権研究所 研究部長)

 2007年11月21日、滋賀県の守山市、草津市、野洲市、甲賀市、栗東市、湖南市域の行政・教育・企業・JA・労組関係者等が構成する実行委員会の主催による「第12回びわこ南部地域研究集会」企業啓発分科会が野洲市で開催された。ここでの行政関係者による意見交換会で出された1.行政のユニークな取組み、2.様々な課題や悩みを、当日、助言者的立場で参加した者の私見ではあるが以下簡単に見ていきたい。企業啓発の推進に取組む全国の行政関係者にとって、参考となる点が多くあると思われるからである。

1.ユニークな取組み

 この6市においては、概ね従業員10人あるいは20人以上の企業・事業所に対し企業内人権(同和)研修の窓口担当者設置を行政として求めており、設置された企業・事業所数は少ない市で約140社、多い市では約320社に及んでいる。

 ここでユニークな点は、1.年2回、行政の管理職を中心とした企業内人権(同和)問題研修啓発推進班員が企業訪問し、2.県が作成した「企業内同和問題推進状況調」の調査票(採用時や啓発の取組み・エセ同和問題など)や市独自の調査票に基づく聞き取りさらには啓発活動の相談を行ない、3.そのための「推進班員」に対する事前研修会を年2回実施していること、4.訪問後、労政担当者と企業啓発指導員(嘱託)が全体の分析を丁寧にしていること等である。

 実際の企業訪問は「推進班員」2名が1班となり、1班でほぼ2社を担当する形を取っている。

2.様々な課題や悩み−企業

 こうした取組みは市によって若干の違いはあるものの既に一定の年数以上におよび、さまざまな成果や実績をあげている。しかし一方で、多くの悩みや課題も生まれてきている。当日、多くの市の担当者から出された点を中心に順不同であげてみると、1.市主催の人権研修会等への参加企業が固定化傾向にあること、2.トップの理解に温度差があること、3.ある業種(人材派遣業・運送業・サ-ビス業等)や非正社員が多い事業所では企業内研修の実施がかなり難しいこと、4.人権問題への無関心さや企業リストラ等により企業訪問の設定すら難しい企業・事業所が増加して来ていること、5.働きかけをしても機械的に本社(大阪や東京)対応とされてしまうこと、6.市の企業人権(同和)教育推進協議会の未加入企業への働きかけに時間が十分取れないこと、などがあった。

 どう克服していけるかの議論の中では、基本はやはり繰り返しの企業訪問による対話や資料提供等を行ない信頼関係を少しずつ作っていくことが指摘された。しかしその一方で、何らかの規制の必要性も触れられていた。

3.様々な課題や悩み−行政

 取組みの主体である行政に関わっても、以下のような課題が出され活発な議論がなされた。

 第1に、「推進班員」による企業訪問の内容が研修内容やそれに関した相談にまでなかなか踏みこめず、調査票の聞き取りに終わりがちな傾向があることである。

 第2に、県や職安との連携に関わって、1.対応が難しい企業・事業所にどのような協力・連携が可能か、2.県の調査票の内容改善(例えば部落問題だけでなく他の個別人権問題もカバ-していく)の必要性、3.企業への配布資料や視聴覚教材は財政的な問題もあり、広く人権問題ということで県や関係市で共有したり役割分担をする必要があること、などである。

 第3に、企業内人権研修の推進を公的に裏づける1つの手段として、現在、建設や物品関係の指名業者になるための条件として人権研修への参加要望をうたった財政課からの文書があるが、そうした手段の充実の必要性が指摘された。