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2008.04.21
意見・主張
  

理事の主張

大阪市「人権審」答申、大阪府「同推審」提言を踏まえた部落解放・人権研究所の任務

友永健三(部落解放・人権研究所所長)

 昨年12月11日、大阪市人権施策推進審議会(会長:中川喜代子奈良教育大学名誉教授)から、答申「今後の人権行政の在り方について」が關純一市長(当時)に、次いで、本年2月25日、大阪府同和問題解決推進審議会(会長:元木健大阪大学名誉教授)から、提言「大阪府における今後の同和問題解決に向けた取組について」が橋下徹知事に出された。

 これらは、2006年5月連休明け以降発覚してきた飛鳥会問題に象徴される、同和行政や部落解放運動に関わった不祥事の深刻な反省を踏まえた、今後の人権・同和行政の在り方を示すものとして極めて重要な意義を持っている。

 この内、大阪市の「人権審」答申では、「これまでの同和行政への批判が、人権が尊重される社会の実現という理念とそれに基づく取組を停滞させることにつながってはなりません。」との認識のもとに、「今後の人権行政の基本的な方向」として、(1)人権尊重を基本とした行政運営・担い手づくり、(2)透明性・公平性・公正性の確保、(3)人権教育・啓発及び人権相談・救済の推進、(4)市民の参画と協働の推進、(5)評価・検証による実態に即した施策の改善と計画的な人権行政の推進、が提起されている。その上で、「人権行政の推進は、大阪市によってのみなされるものではなく、国や府、関係機関、団体、大学・研究機関、企業・事業者等との連携が不可欠であり、これらの機関との協力関係を築くべきです。」との指摘が行われている。

 また、大阪府の「同推審」提言では、「一昨年、大阪市や八尾市、京都市、奈良市等で起こった事件などを契機として、同和問題解決に向けた取組に対する府民の信頼が大きく損なわれ、これまでの取組の成果が覆されかねない状況となっています。また、地対財特法失効からすでに5年余りが経過し、改めて各施策が同和問題解決に向けて効果的・効率的なものとなっているか、今日的な視点からしっかりと検証していくことや行政と民間運動団体のそれぞれの役割を明らかにすることが求められています。」との指摘のもとに、「今後の同和問題解決に向けた取組について」では、「同和問題解決に向けた取組の点検」を行うとともに、「今後の取組に向けた提案」としては、(1)コミュニティづくり、(2)教育・啓発、(3)相談、(4)関係機関等との連携、について方向性が示されている。この内、「関係機関等との連携」の中では、「さらに、大阪には、これまで同和問題をはじめ、さまざまな人権問題の解決や人権教育の推進に豊かな蓄積を有する研究機関等があることから、大阪府は、こうした研究機関等の成果を課題解決のための効果的な取組の推進に活かすべきと考えます。」との指摘が盛り込まれている。

 部落解放・人権研究所は、1968年8月に創立されて、本年で40周年を迎える。この間、大阪府、大阪市、堺市をはじめとする自治体、部落解放同盟中央本部や大阪府連等の運動団体、さらには企業や宗教団体等との連携のもとに、(1)研究部会やプロジェクトによる調査・研究提言機能、(2)講座開催による人材養成機能、(3)図書・資料の収集やウエブサイト等による情報収集提供機能、(4)定期刊行物や単行本の編集・発行やビデオの作成等による出版機能、(5)部落問題研究や人権教育・啓発等の相談機能、(6)国連やユネスコの人権活動、韓国・中国・インド等における人権問題の研究者との国際連帯機能の6つの機能を持った研究所として活動してきている。

 今般出された大阪市の「人権審」答申や大阪府の「同推進」提言に盛り込まれている研究機関として、部落解放・人権研究所は大阪府や大阪市等における今後の人権・同和行政、人権教育・啓発等の効果的な推進のために貢献していく決意である。