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2008.05.07
意見・主張
  

第4回 識字活動支援「安田識字基金」助成対象事業の審査結果について

 安田信託銀行(現みずほ信託銀行)の公益団体であった「安田和風会」の「同和研修10年記念安田識字基金」から半額の寄付を受け、「安田識字基金」の名称で研究所事業として2005年度開始した標記助成事業は、今年度で4回を迎え、助成対象事業を昨年末から今年の2月20日まで募集した。

 前回と同様に、『解放新聞』中央版・大阪版、「ヒューライツ大阪」やIMADR、「おおさか識字・日本語センター」、また「とよなか国際交流協会」や「アジアボランティアセンター」などのご協力で告知を行い、募集期日までに国外から3件、国内から3件の応募があった。

 3月7日の選考委員会では、昨年の内山一雄委員の死去に伴い、新たに岩槻知也委員を迎えて、上杉孝實・榎井縁・岩槻知也・友永健三の4委員体制で運営していくことが承認された。選考結果については以下に概要を報告する。

 今回は計6件の応募について審査を行い、国外2件、国内3件の計5件が決定した(以下、応募順)。

【国 外】

(1)IMADRアジア委員会「識字を通してマイノリティ・コミュニティをエンパワーする」事業

(申請・事業対象国ともスリランカ:継続の最終年):50万円。

 スリランカの紅茶農園労働者は植民地時代に南インドから連れてこられたタミル人に起源をもち、特に低地のシンハラ人コミュニティにある農園では日常的に差別と暴力の被害に遭っている。また内戦のただなかにある東部州やウバ州の州都バドゥッラ県に移り住み、定住しつつあるロディアの人びとは、依然として古くからの住民にコミュニティから排除されている。

 これら、ゴール県の紅茶農園労働者およびバドゥッラ県の移動民族ロディアの両マイノリティ・コミュニティに対し、2005年から2年間助成を行ってきたが(07年度は未申請)、助成最終年度となる08年度は、マイノリティの権利擁護の強化、子どもの教育の促進、子どもや青少年のリーダーシップの育成、就学前の子どもに対するプログラムの継続、マイノリティとマジョリティの女性同士のネットワークづくりを目標として、これまでの活動を評価するワークショップをはじめ、対象グループごとのプログラムが予定されている。

(2)Feminist Dalit Organization (FEDO)

(申請・事業対象国ともネパール:新規):50万円。

 ネパールでは、貧困を原因とする武装対立が10年にわたり人びとを苦しめてきた。貧困の大きな要因はカーストと性による社会的排除であり、女性全体、そして法律・行政により差別が禁じられた今なお「不可触」の扱いを受けるダリット、特に女性は、排除、差別、搾取を受け、社会の発展から置き去りにされている。ネパール全体の識字率65%に対し、ダリットは42%、ダリット女性はわずか24%である。

 教育は権利を学ぶための大きな要素であり、平和と女性の権利擁護を促進し、新しい世代のダリット女性に平等と公正のための協働を鼓舞するために、極西部のアチャム県と中西部のスルケット県のダリット女性に対する社会的識字学級の実施、そのための予備ミーティングとトレーナー対象の訓練が予定されている。

【国 内】

(1)「高槻メディア・リテラシー・プロジェクト」3カ年計画「若い人々への識字教育―メディア社会を生き抜くためのメディア・リテラシー」事業

(大阪;継続):20万円

 中学校の地区生徒および若者のエンパワメントと多様なコミュニケーションの創造をめざして、地域・学校・研究者のネットワークと協働によって高槻第四中学校での系統的・総合的なメディア・リテラシー教育のカリキュラム創造と実践に取り組む3年計画の最終年度である。

 1年目の準備段階を経て2年目に実施された昨年度の授業の評価をもとに、カリキュラムを修正しつつ2年目の授業に取り組むことでカリキュラムの確立をめざすとともに、教育関係者対象の連続講座を実施したり、授業の一環として生徒が制作した映像作品をヨーロッパのNGO主催の「1分間プロジェクト」応募するなどして社会に対する発信を行っていくことも計画されている。

(2)NPO市岡国際教育協会による日本語が不自由な日本人・外国人対象の「市岡日本語教室」

(大阪;新規):20万円

 大阪府立市岡高校の定時制課程廃止を機に、「夜学の灯」を残そうと同窓会・教職員中心に市岡国際教育協会を発足させ運営されてきた「市岡日本語教室」は、ボランティア(現在約140名)の参加を得て現NPOに引き継がれている。

 約240名の登録者のうち平均で約1/4が参加する学習者にボランティア講師が一対一でつき、学習者に応じた学習を行っている。運営費はボランティアの入会費と年会費に頼っているが、同窓会会員の減少や備品の劣化等により運営環境が厳しくなっている。

(3)「日本語の広場」による日本語読み書き教室「日本語の広場」

(兵庫/大阪;継続):10万円

 10年以上も箕面市教育委員会主催事業だった「日本語よみかき教室」の突然の廃止で、2007年度からは自主運営を余儀なくされた「日本語の広場」は、運営資金源を他に確保できないまま、昨年度と同等の活動の継続が期待されている。

(文責:事務局)