「人権なくして財政再建なし人権行政を考える府民集会」が、2008年5月13日(火)、ドーンセンター7階ホールで開催された。
大阪府の改革プロジェクトチームは、さる4月11日に「財政再建プログラム試案」(PT案)を公表した。当事者の立場から差別や人権侵害の現状、「人権行政」のあり方を話し合い、「財政再建プログラム試案」の見直しを求めるために開催された。
18時30分に開会、中田理恵子さん(社団法人部落解放・人権研究所)の司会で始まり、主催者を代表して、楠敏雄さん(実行委員会共同代表、障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議議長)から次のような挨拶がなされた。
橋下大阪府知事は「すべての府民に少しづつ我慢してもらう」と説明しているが、「痛み」や「負担」はすべての府民に等しく分担されない。様々な困難を抱える府民ほど「痛み」や「負担」は大きなものとなる。大阪府は、全国に先がけて、「福祉のまちづくり条例」を制定、障がい者の自立と参加にむけた計画を推進してきたが、一方的に施策を見直し、人権を後退させるのがPT案である。当事者の思い、実態を全く聞くことなく、社会的に弱い立場にある人へ攻撃をかけ、痛みを負わせるものだ。今日の午前中、考え方や障害の違いをこえて、3千人の障がい者が集まり、大阪府への抗議行動に取り組んだ。
続いて、各当事者を代表して、障がい者、女性、ひとり親家庭、「ニート」支援、ホームレス支援、人権文化センター(隣保館)の相談員、地域の青年、識字・日本語活動、在日外国人、ハンセン病回復者、生きがいワーカーズ、街かどデイハウスのそれぞれの立場から、意見発表が行われ、人権施策の縮小、廃止がもたらす具体的な被害や困難について訴えがなされた。
- 国の不十分な施策をおぎなう自立支援の施策、医療の補助、グループホームへの補助、就労・教育、どれひとつとってもなくなってはこまる(障がい者)、
- ドーンセンター(大阪府立女性総合センター)は、未だに存在する大きな男女格差の解消、女性の自立と地位向上のための施策・事業のための施設で、大阪府の男女共同参画社会づくりに今後も果たす役割は限りなく大きい(女性)、
- 平均就労収入が171万円しかない母子家庭で、児童扶養手当の削減、母子医療の切り下げ、ドーンセンター相談窓口の縮小は一層困窮をふやすもの(ひとり親家庭)、
- 家からでれない若者をハローワークにまで連れていくのに1-2年もかかる、時間とコストがかかるのは当たり前、今後の大阪をささえる若者だからこそ、公と民とが手を取り合い、きっちりと支援していくことで将来に繋がる(「ニート」支援)、
- 「あいりん高齢者日雇労働者特別就労事業」は野宿を強いられる労働者の命に直結するもの(ホームレス支援)、
- 部落差別をなくすために同和地区に設置された隣保館は、困難を抱えた人たちの相談機能を担い、セーフティネットとなっている(人権文化センター<隣保館>の相談員)、
- 子どもの楽しみ、仲間づくり、夢をはぐくむ青少年会館をなくさないで(地域の青年)、
- 識字・日本語は生きる力、大阪で働く外国人は今後も増え続ける、「おおさか識字・日本語センター」は、安心して働くためのセーフティネット(識字・日本語活動)、
- 入店、就職、入居、日常生活のあらゆる場面で偏見・差別はなくなっていない(在日外国人)、
- 大阪には多くの社会復帰者がおり、ヒューマインドは心ひらける場所(ハンセン病回復者)、
- 「生きがいワーカーズ支援事業」や医療費助成の減額は、高齢者の安心した暮らしを奪い、「孤立」や「孤独死」をふやすもの(生きがいワーカーズ)、
- 「街かどディハウス事業」は、大阪にしかない全国に誇るべき市民参加型福祉サービス、160か所のディハウスが介護予防活動の拠点となっており、「病院」でしか集うことのなかった高齢者に、地域で居場所を提供してきた(街かどデイハウス)
次に、各級議員の紹介があり、代表して大阪府議会議員7名から、いのちを守る政治の役割を再認識した、今日のこの声を取りあげて、人権行政の後退を許さず、議会でたたかっていきたいとの決意表明がなされた。
次に、橋下徹大阪府知事への要望書の提案が、李美葉さん(実行委員会共同代表、(特活)多民族共生人権教育センター理事長)からなされ、集会参加者の拍手で採択。最後に、神尾雅也さん(実行委員会共同代表、(財)大阪府人権協会理事長)が閉会挨拶、ひとりひとりが「橋下徹大阪府知事へ一言」を書いて閉会した。
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