部落解放・人権研究所は、本年8月で創立40周年を迎えたが、8月2日午後、大阪国際交流センターで標題のシンポジウムを開催した。当研究所は1981年より英文ニュースを発行し、部落問題について世界に情報を発信してきた。これにより、部落問題に関心をもち、調査のために研究所の門を叩いた研究者や活動家は世界に少なくない。その成果として部落問題に関する論文や文献は世界に点在するが、研究所の研究活動と必ずしも有機的につながってきたとはいえない。また、部落問題をとりまく状況の変化や、一地域・一国の人権問題を普遍的に捉えて国際課題としてとりくむ動きが生れて久しい中、部落問題を国際的および学際的視点から捉えた研究の重要性はさらに増大してきている。こうした流れを踏まえ、部落問題に関する研究を行っている内外の若手研究者12人に集まってもらい、シンポジウムに先立つ7月31日、8月1日の2日間ワークショップを開催した。
テーマは1.「マイノリティを作り出す社会のメカニズム」、2.「変化するマイノリティのアイデンティティ」、3.「マイノリティの中間層が果たす役割」、4.「ジェンダーおよび多文化主義からみた部落問題」であった。ワークショップでの議論を公開で共有するためにこのシンポジウムを開いた。
1と4の報告をミシガン州立大学准教授のジョン・デービスさん、2を当研究所研究員の内田龍史さん、3を同じく研究員の李嘉永さんがおこなった。報告の内容は当研究所月刊「ヒューマンライツ」10月号で紹介するが、ここではワークショップのコーディネーターとしてシンポジウムでも司会をされた平沢安政さん(大阪大学教授・研究所理事)の言葉を引用してまとめにしたい
「新たな視点で掘り下げて考えるべきことがらが実にたくさん存在することがわかった。海外の事例と比較したり、社会学、歴史学、人類学、教育学など、異なる学問分野の問題意識を交差させたり、固有性と普遍性を対比的にとらえたりすることにより、部落問題に関する研究にいっそうの深まりと広がりをもたせることができる可能性があることを確信した。」
なお、ワークショップの詳細な内容は後日発行予定の報告冊子、シンポジウムの内容は「ヒューマンライツ」10月号をご覧ください。
(文責:小森恵)
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