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2008.12.08
意見・主張
  

東京・町田市議会が規制求め意見書

解放新聞第2397(2008年12月1日)号より

全国の街かどを地上2.5メートルの高さから全方位に撮影し、住所を入力すると画像が見える、グーグル社の「ストリートビュー」が悪用され、被差別部落を写真つきで集めたサイトまで立ち上げられている。この問題で、大阪で行なわれたシンポジウムと、東京町田市議会の規制を求める意見書を紹介する。

部落の地名を写真つきで

グーグル社の「ストリートビュー」問題でシンポ

 インターネットの検索エンジン、グーグル社が提供する「ストリートビュー」(GSV)問題を考えるシンポジウムが10月27日よる、大阪綜合生涯学習センターでひらかれた。GSVはグーグル社が提供する地図サービス「グーグルマップ」上で提供される機能でインターネットを通して、地図上のある地点を選ぶと道路沿いの風景を360度のパノラマ写真で閲覧できるもの。昨年5月にアメリカでサービスが開始され、今年8月からは日本でも提供がはじまった。

 日本では開始直後から部落の地名をピンポイントで示すURL(インターネット上の住所)の書き込みが「2ちゃんねる」などの掲示板にあふれており、また写真には人の顔や自宅の様子、洗濯物などのプライバシー侵害にあたるもの、表札の文字や家の様子から家族構成などが読み取れるものも少なくなく空き巣などの犯罪に利用される恐れもあるとの指摘がある。

 シンポジウムには荊政会の中村信彦茨木市議(道祖本支部顧問)がパネラーとして参加。茨木市議会で行ったGSVに関する質問について問題提起を行った。

地図情報と写真を組み合わせればかんたんに「写真付き地名総鑑」が

 中村市議はサービス開始前からプライバシー侵害、人権侵害への利用、犯罪につながる危険性が指摘されていたが、サービス開始と同時に2ちゃんねるなどで悪質な書き込みが氾濫していると指摘。特に日本の場合は土地に関わる差別問題としての部落問題などの人権問題を抱えており、地図情報と写真を組み合わせれば安易に「写真付き部落地名総鑑」ともいえるものが作成可能であるにも関わらず、何ら議論された形跡もなくサービスが開始されたことに対して異議を唱えた。

 GSVでは個人の家や通行人、車、店、登下校途中の子どもたちの写真などが本人に何らの許可もなくインターネット上で世界中に配信されている。アメリカ国内ではプライバシー侵害にあたるとして訴訟が起こされているほか、カナダではプライバシー保護法に抵触する恐れがあるとしてサービス開始直後に公開が停止されている。またヨーロッパでもプライバシー、人権問題、人種問題などの観点で欧州連合(EU)委員会などで広く議論が続いており、日本のように議論のないまま全面的なサービスが開始された国はない。

 グーグル社では公道からの撮影でありプライバシー上も問題ないとの態度を取っており、不適切な画像があった場合には削除するとしているが、削除の申し入れがなければそのまま放置され、そもそもインターネットを利用しない人に対しては何の手立ても用意されていない。

 10月9日には、東京都町田市議会が国に規制検討を求める意見書を採択。意見書は民家を無断で撮影し公開していると指摘し、「空き巣や振り込め詐欺に悪用される恐れや、通学路や教育施設に防犯上の不安を生むとする声もある」などとして国や都に規制や法整備を求めている。

 府連では先の大阪府との基本交渉でも実際に公開されている京都市内の部落を示す画像を示しながら問題提起を行い、大阪府はGSVサービスを悪用した差別事象の発生は新たな課題と認識しており、市町村や府人権協会とも連携して実態把握、対応について検討を進めると回答している。

東京・町田市議会が規制求め意見書

地域安全に関する意見書

インターネットの普及は市民生活に多くの恩恵をもたらしている。しかしその便利さは、人々の幸せに貢献する形であるべきであり、私たちは常に人権に配慮した活用を心がけながら、情報通信技術の発展を考えていく必要がある。

ここ数年の間に、地図情報に併せてその地点の実写画像を提供する企業が複数登場している。

一例として、本年8月に運用を開始したもの(「ストリートビュー」グーグル社の地図検索サービスの機能)は、地上2.5mの高さからの周囲360°と上下の「風景」を見渡せる無料サービスである。

画像撮影に際し、被写体となる地域や個人への事前告知も撮影告知も公開許可願いもなくインターネット上に公開された。画像には、民家やその家庭の私物、車、敷地内の様子、通行人や自宅内にいる人の姿などが写り込み、自動でぼかすとされた人の顔が判別出来るものや、車のナンバー、表札の文字が読み取れるものも少なくない。空き巣や振り込め詐欺等の犯罪に悪用される危険性、児童生徒の通学路や教育施設等に防犯上の不安を生むとする声もある。

問題のある画像については利用者から申し出れば削除に応じているが、そもそもインターネットを利用しない人に対し、自宅等が世界に公開されている現状が十分に行き渡っていないという現状もある。

見知らぬ土地への訪問や待ち合わせ等に有用との意見の一方で、生活空間である地域、民家の画像を無料で誰でも閲覧可能とすることに対するプライバシー上、防犯上の問題があるという声もある。便利なものは悪用するものにとっても便利なのである。

海外では欧州連合が、グーグルの「Street View」に懸念を表明するなどし、非公開の国が多く、一部の国で観光地や大通のみの公開にとどめるなどしており、居住地域への影響のない配慮がなされている。アメリカではプライバシー侵害の裁判も行われている。

以上のことから、町田市議会は政府および関係機関に、以下を求める。

1. 当該サービスにつき国に寄せられた意見の実態調査をはじめ、現状把握に努めること。

1. インターネットを利用しない国民に、必要な広報活動を行うこと。

1. 住居専用地域の公開の適否につき、国民の意見聴取の上、事業者に対する指導を行うこと。

1. 個人や自宅等を無許可で撮影し、無断で公開する行為につき、都道府県迷惑防止条例上の迷惑行為として加えることを検討すること。

1. 必要に応じて法整備を行うこと。

以上、地方自治法第99条の規定により、意見書を提出する。

10月9日