あけましておめでとうございます。
昨年も、本研究所の活動のためにご協力いただき、深く感謝申し上げます。特に本研究所創立40周年記念事業および財政基盤強化活動にご尽力・ご支援いただき、厚くお礼申し上げます。念頭にあたりまして、一言ご挨拶申し上げます。
今日の世界は、サブプライムローンの破綻に起因する世界的金融危機とそれに伴う貧困層の拡大、格差社会の進行、投機的な投資による食料や原材料の高騰とそれに伴う日常的消費商品の値上がり・環境破壊の進行などが顕在化してきています。日本社会では、そのしわ寄せは、被差別部落出身者・「障害」者・在日韓国・朝鮮人・アイヌの人々や女性をはじめ社会的不利な立場にある人びとに、より大きくのしかかってきています。特に約1700万人に及ぶ非正規雇用者(労働者の3分の1)の増加とその大量解雇問題、児童虐待の増加、健康破壊、年間3万人を越す自殺者、ネット上の深刻な人権侵害など、事態は深刻になってきています。
ご承知のように、昨秋、一昨年に続いてまたもや首相が政権を投げ出すという醜態がさらけ出され、代わった麻生内閣も適切な施策を打ち出せないまま迷走している状況が続いています。大阪府においても、橋下知事の主導で、財政再建のみを自己目的としているとしか言えないような、人権や福祉・医療・教育などに配慮の欠けた政策が推進されています。このため、昨年、本研究所も特に財政面で大きな影響を受けましたが、今年はいっそう厳しい状況に置かれることになるのは必至であります。
本研究所では、こうした情勢を受けて昨年から改革策を練り、順次、実施に移していますが、さらに抜本的な「改革方策」を策定し、その実現に向けて全力をあげていく所存です。そして、こうした未曽有の困難をもたらした政治的・行政的動向の背景および研究所運営の問題点を客観的に分析し、その上に立って、従来以上に部落問題を中心とした人権問題解決に資する研究・啓発・情報発信活動ができるように努力を傾注していく覚悟であります。
ところで、昨年11月、アメリカ次期大統領が民主党のオバマ氏に決まり、軍事力にものをいわせて反平和・反人権・反環境の非協調路線を強行してきたアメリカも、少しはいい方向に変わっていきそうな気配があります。日本でも、昨年、6月6日、アイヌの人々を先住民族として認めることを政府に求める国会決議が衆参両院本会議で採択され、6月11日、「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律」(ハンセン病問題基本法)制定されました。
私たちは、平和の実現・人権確立・環境保護を求める世界と日本の人々と固く連帯しながら、格差と貧困そして社会的排除が進む現在の社会の中で、部落問題・人権問題の実態を明確にし、人権・部落問題の解決をめざした取組みをどう発展させていくのか、を追求していく必要があります。そのための調査・研究活動と理論創造が、いまこそ重要であり、私ども研究所の果たすべき使命をいっそう深く自覚するものであります。
どうぞ本年も、いっそうのご指導・ご支援をたまわりますようお願い申し上げます。
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