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2009.02.19
意見・主張
  

11月22日、NPO法人田川ふれあい義塾(福岡県)設立記念シンポに参加して

―「遊び・非行型」不登校児童生徒の現状と課題

 福岡県田川市で本年6月に誕生した「遊び・非行型」不登校児童生徒のための「NPO法人田川ふれあい義塾(以下、ふれあい義塾)の設立記念シンポジウムが福岡市内で開かれた。ふれあい義塾の代表理事・工藤良さんは、自らがリーダーだった暴走族「極連会」を解散後、地元の金川小学校関係者の協力を得てボランティ団体を結成・解散、牛乳配達の仕事をしながら「遊び・非行型」不登校児童生徒のための居場所・ふれあい義塾を2005年から始めた(参照、工藤良『逆転のボランティア』)。

 当日は、数日前に放送されたふれあい義塾に関するドキュメントが20分ほど映され、大きな感動を呼んだ。続いて、金泰泳さん(東洋大学)が主催者挨拶をされ、そして多数の来賓を代表して田中恭一さん(トヨタ財団)がふれあい義塾への期待を述べられた。

 この後、瀧井宏臣さん(ルポライター)が工藤さんにインタビューをする形で、現在9名が生活するふれあい義塾の4つのルール(「ありがとう」「ごめんなさい」等の言葉がけ、人を傷つけるウソはつかない、等)、中学生から暴走族に入った頃の生活、頭角を現し少年院に入ったりした頃の思い、薬物中毒で逮捕され刑務所で思いを一変し暴走族を解散しボランティア団体「GOKURENKAI」を結成したこと、非行に走る子どもやふれあい義塾への思い、などが話された。そして、ふれあい義塾最初の卒業生の女性から工藤さんに花束が贈られた。

 続いて、鈴木邦治さん(福岡教育大学)をコ―ディネーターに、岩隈涼子さん(NPO法人九州地域振興協会副理事長・福岡県学童保育連絡協議会副会長)、加藤彰彦さん(沖縄大学こども文化学科教授)、亀田徹さん(PHP総合研究所政策総合研究部主任研究員・元文科省生徒指導室長)、吉永洋子さん(元少年院統括専門官)の4名によるシンポジウムが行なわれた。鈴木さんよりそれぞれのパネラーの立場から、「開く」「繋がる(協働)」の2つのテーマに関してそれぞれ発言が求められ、以下のようなことが述べられた。

 吉永さんは、教員から少年院法務教官になったが、全国52ヵ所の少年院でそれぞれ複雑な生活背景を背負った子どもがおり、個別処遇計画を立てる一方、保護者の悩み相談や「非行と向き合う親の会」の支援、社会復帰後の就労支援に取組んでおり、少年院はふれ愛義塾の4つのルールとはかなり違うが「居場所」の役割を果たせるよう頑張っている。工藤さんの本や放送内容を法務省関係者にも見てもらっている。少年院を出た後の子ども支援の一つで、仙台市で「少年の家」を建設しているが、ふれ愛義塾も含めて当事者の頑張りだけでなく関係省庁の支援が不可欠である。

 岩隈さんは、福岡県春日市で「鍵っ子を、孤立した親をなくそうと」約30年学童保育に関わってきたが、「親を変えれるのは親」であり親同士が繋がる事の「楽しさと大変さ」を子育てが終わった今も仲間と共に取組んでいる。子どもを見てくれる指導員もこうした親の子育て観の中で成長していく。

 亀田さんは、工藤さんが何かをしたいと思った時、母校・金川小学校の同和教育担当の先生を訪ねて相談したように、学校の持つ意義は大きい。そのためにも学校の中と外を繋ぐことは重要で学校教職員の「チームワーク」はその土台で、具体的な目標の共有化や「コーチング」(互いを認め合ったコミュニケーション)というスキル等が大切と思う。さらに地域と共にNPOや行政との連携・対話も重要であり、学校ソーシャルワーカーも活用し外との繋がりを豊かにしていくことが可能である。

 加藤さんは、10年間ほど従事した横浜市寿町にある児童相談所のケースワーカーの体験から、不登校が多かったが、その背景にあった家庭の不安定さ・学校への不満・進学や就職への不安を抱えた子ども達に正面から向き合うことの大切さを知った。仲間で子ども達に食事や入浴を保障する取組みもしたが、そうした時、地域の人にとても世話になった記憶がある。また当時残っていた「若衆宿」で仕事・性・人とのつきあい方を青年らは先輩から学んだが、「モデルとなる人との出会い」は厳しい環境に置かれた子ども達ほど大切である。

(文責:中村清二)