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2008.07.17
部会・研究会活動 <行財政部会>
 
行財政部会 学習会報告
2008年04月28日

人権行政について考える
-大阪市人権施策推進審議会答申等を手がかりに

友永健三(部落解放・人権研究所所長)

 本報告は、『部落解放研究』第181号(2008年4月)に掲載された論文の報告であり、紙数の関係上、ここでは報告者が整理した「人権行政の骨格」についてのみ紹介し、他の項については『部落解放研究』第181号を参照されたい。

人権行政の骨格

  1. 定義:人権行政とは、国や自治体によって人権の保護と伸張のために行われる一切の取組みであるとともに、行政において日常の業務はもちろん、すべての施策の企画から実施にいたる全過程をつうじて、すなわち行政運営そのものを人権尊重の視点から推進していくことである。
  2. 根拠:法に基づく統治の原則が守られなければならず、根拠になる法としては、国については、<1>日本国憲法、人権教育啓発・推進法等の人権に関する法律、<2>日本が締結した人権条約等が、自治体についてはこれらに加えて<3>自治基本条例、人権条例等がある。
  3. 基本的な内容:人権行政の基本的な内容には、<1>相談、<2>教育・啓発、<3>救済・規制、<4>施策、がある。
  4. 留意すべき内容:留意すべき内容として、<1>社会的に弱い立場にある人びとの人権、<2>社会の変化に伴う新たな人権問題への対応、<3>国際連帯の視点、がある。
  5. 国や自治体職員への人権研修:国や自治体職員に対する系統的な人権研修は、人権行政の円滑な実施のために不可欠であり、これにはそれぞれのトップを含む幹部研修が含まれていなければならない。
  6. 国や自治体そのものが人権の視点を貫くこと:国や自治体の経営・事業そのものを、人権が尊重され人権を伸張するものにしていくことが必要で、例えば嘱託、アルバイトを含む国家公務員や自治体職員の賃金や労働条件、国や自治体が行う委託、指定管理に際する契約に際して等に人権の視点が貫かれる必要がある。
  7. 人権行政の手法:人権行政の手法としては、<1>実態調査の実施と計画の策定、<2>実施した事業・施策の評価と、評価に基づく計画の見直し、<3>人権の視点からの予算、決算のチェック、<4>人権行政に関する情報公開と、当事者の参画や市民参画、専門家の参画を得る、<5>人権尊重のまちづくりとの結合、等が重要である。
  8. 人権行政の主体:何よりも国や自治体そのものであるが、被差別当事者、人権侵害を受けている当事者の参画とともに、企業やNGO、NPOとの協働の視点を持つ必要がある。
  9. 人権行政の体制:首長をトップにすべての府省庁(国)、部局(自治体)を網羅した推進本部の設置。また、国や自治体の中での総合調整、企画立案機能を持ったセクションの設置。さらには、被差別当事者、専門家等の参画する審議会の設置等が必要である。

今後の課題として

  1. すべての自治体で人権条例を制定し、積極的な人権行政に取り組むこと。

  2. 国レベルでの取り組み。具体的には、ア)日本国憲法や国際人権規約をうけた「人権基本法」の整備、イ)それに基づいた人権施策基本方針、基本計画、実施計画の策定、ウ)これらを推進するための人権省の設置、エ)内閣総理大臣を本部長とした人権推進本部の設置、オ)当事者や専門家の参画する人権推進審議会の設置、等に取り組むことが必要である。

  3. 差別撤廃と人権確立を求める国際的潮流との積極的な連帯。

(松下 龍仁)