調査研究

各種部会・研究会の活動内容や部落問題・人権問題に関する最新の調査データ、研究論文などを紹介します。

Home調査・研究部会・研究会活動企業部会 > 学習会報告
2004.11.18
部会・研究会活動 <企業部会>
 
人権におけるCSR調査の試みと課題

『部落解放研究』第162号 2005年 2月、61-73頁

中村清二 (部落解放・人権研究所 研究部長)
李 嘉永  (部落解放・人権研究所 職員)  

(1)CSRの全般的な解説・動向としては、谷本寛治『企業社会のリコンストラクション』、高巌他著『企業の社会的責任 求められる新たな経営観』、谷本寛治編著『CSR経営』。

(2)本年に入り、CSRの導入に関するガイドブックの類が多数公刊されている。その一例として、中央青山監査法人編『CSR実践ガイド 内部統制から報告書作成まで』。

(3)残念ながら日本においては、「社会的排除」の問題について総合的な解明を試みる研究は発展途上にある。しかしこの社会問題の根底には、一定の集団が雇用から遠ざけられているという課題がある。かかる現象が単に貧困にはとどまらない問題性を含んでいることについて、樋口昭彦「現代社会における社会的排除のメカニズム」『社会学評論』第五五巻一号、二〜一八頁。またこの社会現象の構成要素として雇用へのアクセスが絶たれている点が挙げられることについて、John Pierson, Tackling Social Exclusion, pp.1-18.

(4)部落出身者をいかにして雇用から排除してきたかについては、部落解放同盟中央本部編『終わっていはいない「部落地名総鑑」事件』二〇一〜二二四頁。

(5)その概要として、ヒューライツ大阪編『国際人権ブックレット3 アジア・太平洋の先住民族』。また、実際に訴訟に至った一例として、コトパンジャン・ダム被害者住民を支援する会「インドネシア コトパンジャン・ダム訴訟 訴状」二三〜三〇頁。

(6)この種の金融のあり方については、いわゆる社会的責任投資の一形態として、インナーシティの開発のために資金を提供する「コミュニティ投資」が一つの典型である。その概要については、エイミー・ドミニ著、山本利明訳『社会的責任投資』一一七〜一三三頁。また、発展途上国においては、貧困のうちに生きる人が資金へのアクセスを確保するための「小口金融」や「マイクロ・ファイナンス」の取り組みが重要である。その一例として、インドにおける住宅開発金融公社の取り組みがある。リン・シャープ・ペイン著、鈴木主税・塩原通緒訳『バリューシフト 企業倫理の新時代』五二〜五七頁。

(7)そのほかにも、多くの取り組みが各企業で実施されている。現在多くの著作で紹介さている。例えば、経団連社会貢献担当者懇談会編『この発想が社会を変える 新しい企業価値の創造』。

(8)社会貢献活動と人権尊重の関連性について、藤原俊昭・田村宏之・柏木宏『人権ブックレット 企業の社会貢献と人権』。

(9)企業がその経営戦略に社会性を据えた上で、NPO・NGOとの協働を進めている状況を分析するものとして、横山恵子『企業の社会戦略とNPO 社会的価値創造に向けての協働型パートナーシップ』五九〜一一三頁。

(10)その一例として、藤原俊昭「第一一講 事例学習‐企業研修の取り組み」『部落解放大学講座úJ 私たちの部落問題』一七九〜一九六頁。

(11)国連グローバル・コンパクトの項目と、具体的な取り組み内容については、http://www.unic.or.jp/globalcomp/参照(二〇〇四年一二月二一日掲載確認)。

(12)三者宣言の日本語訳については、http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/pdf/multinational_d.pdf 参照(二〇〇四年一二月二一日掲載確認)。

(13)グローバル・レポーティング・イニシアティブ「GRIサステナビリティ・レポーティング・ガイドライン 2002」五九頁。

(14)企業行動憲章の原文については、http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/cgcb/charter.html参照(二〇〇四年一二月二一日掲載確認)。

(15)経済同友会『第一五回企業白書 「市場の変化」と社会的責任経営』一九八〜二二九頁。

(16)調査結果については、http://www.csrjapan.jp/research/trend/index.html参照(二〇〇四年一二月二一日掲載確認)。

(17)その調査票及び調査結果については、http://www.public.or.jp/hyoka.html参照(二〇〇四年一二月二一日掲載確認)。

(18)最近の調査結果は、朝日新聞文化財団[企業の社会貢献度調査]委員会編『有力企業の社会貢献度二〇〇三』。なお二〇〇四年度から、朝日新聞社の「朝日企業市民賞」に引き継がれている。

(19)今回はプレ調査であったので、ランキング上位社は公表していない。

(20)具体的な調査票は部落解放・人権研究所のホームページ(http://www.blhrri.org/)の企業部会のページに掲載されているので参照されたい。

(21)調査の単純集計結果もまた、ホームページの企業部会に掲載されているので参照されたい。

(22)三二社の報告書の内容を検討したが、A:環境・社会報告書で人権の記述が一頁以上ある企業が三社、B:環境・社会報告書で人権の記述が一頁未満が二社、C:環境報告書に人権の記述が若干ある企業が六社、D:環境報告書はあるが人権の記述は全くない企業が一三社、E:環境報告書を発刊していない企業が八社であった。

(23)再検討した調査票についても、当研究所ホームページの企業部会に掲載しているので、参照されたい。

(24)在日外国人に関して、現在の仕組みの上では、在留資格を取る際の雇用証明を企業が出す関係でのみ、企業も政府も外国人の把握をしている。そのため在日韓国・朝鮮人の実態はほとんど把握できない。また厚生労働省「外国人雇用状況報告」結果では、一〇〇〇人以上の企業では、直接雇用者(約一五万七千人)の八%が、職種的には「専門・技術・管理」に約三七%、「販売・調理・給仕・接客員」に約三八%、国籍的には「北米・欧州出身」が多い。そして間接雇用者(約一一万七千人)の国籍内訳はわからないという状況であり、日系人や中国籍の人の状況把握が難しいという問題があった。

← 四 へ