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国連文書・訳文
アジア・太平洋地域の人権教育国際会議
(2003年11月10-12日、バンコック)提出文書 補足資料
掲載日:2003.11.12

部落差別撤廃と人権確立を求めた
部落解放・人権研究所の取り組みに関する報告

2003年10月21日
部落解放・人権研究所

1,はじめに

 部落解放・人権研究所は、1968年8月、部落解放運動、研究者、大阪府・大阪市等の自治体、の3者の連携のもとに設立され、本年で35周年を迎えた。

  この間、研究所は、部落解放運動等と連帯し、部落差別撤廃と人権確立を求めた多くの課題に取り組み成果を上げてきている。

2,国際人権規約や人種差別撤廃条約の批准と具体化を求めた取り組み

 国際連帯の面から言えば、1970年代後半以降、研究所は、部落解放同盟や他の諸団体対とともに国際人権規約の批准促進運動を展開し、1979年6月、批准を実現した。その後、人種差別撤廃条約の批准促進運動に取り組み、1995年12月、加入を実現した。

  その後、国際人権規約や人種差別撤廃条約が日本国内で実施されるように監視し、国連に対するNGOレポートの作成等に取り組んできている。

 また、国連人権小委員会が2000年8月に採択した「職業と世系に基づく差別に関する決議」を踏まえた取り組みにも積極的に参加している。

3,「人権教育のための国連10年」にちなんだ取り組み 

 国連は、1995年1月以降、人権文化を世界中に構築するために「人権教育のための国連10年」に取り組んでいるが、研究所はこれに関連した国連文書をいち早く翻訳し、各方面での取り組みを呼びかけた。この結果、国に推進本部を設置させ行動計画を策定させるとともに、都道府県や市町村にも同様の取り組みを働きかけ、500を超す自治体での取り組みが始まっている。また、「国連10年」の取り組みの中間年にあたる2000年9月には、研究所としての行動計画を策定し、独自の取り組みを進めてきている。 

4,部落解放基本法の制定を求めた取り組み

一方、国内においては、部落問題の根本的な解決に役立つ法律として部落解放基本法案のとりまとめを1985年5月に行ったが、研究所はその事務局を担当した。今日まで部落解放基本法の制定は実現していないが、部落解放基本法案の中に盛り込まれていた「教育・啓発法的部分」は、2000年12月、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」として実現した。

 「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」を受けて政府は人権教育・啓発基本方針を2002年3月策定し、2003年3月には、年次報告を公表した。これに対して、研究所ではいち早く分析を加え、問題点を指摘している。

 また、日本においても国連の国内人権機関の設置に関する原則(パリ原則)を踏まえた人権委員会を設置させるための研究と提言を行っている。この点に関して、2002年3月、政府は「人権擁護法案」を国会に上程したが、独立性と実効性の面でパリ原則に違反しており、抜本修正を求めた世論が強く、政府がこれに応じなかったため本年10月廃案となった。今後、議員提案も含めパリ原則を踏まえた人権委員会の設置を盛り込んだ法律の制定に向けて取り組んでいくこととしている。

 さらに、日本における人権法制度の確立を求めた提言も行っている。

5,部落差別撤廃人権尊重の社会づくりをめざした条例制定の取り組み

 日本において地方分権が進行している状況に鑑み、部落差別をはじめあらゆる差別を撤廃する条例や人権尊重の社会づくり条例の制定に向けた研究と提言を行い、2003年9月現在、47都道府県中15府県、3239市町村中743市町村で条例が制定されている。これらの条例制定を受けて、いくつかの地域では人権尊重のまちづくりが始まっているが、研究所はこれに関した提言も行っている。

6,リーダー養成のための部落解放・人権大学講座

 これまで紹介してきた成果の他に、研究所が果たしてきた重要な成果として、各分野、とりわけ地方自治体と民間企業における部落問題や人権問題に取り組むリーダー養成を行ってきた点を上げることができる。このための取り組みとして最も重要なものは、部落解放・人権大学講座の開設である。部落解放・人権大学講座は、1974年4月から開講され、来年で30周年を迎えることとなるが、この講座は、部落問題や人権問題については、日本で、もっとも充実した内容で構成されている。

 近年、部落解放・人権大学は、年4回開講されていて、1回の受講生はおよそ50名である。受講生の大半は、地方自治体と民間企業の中で部落問題や人権問題の担当者で、一部民間運動団体のメンバーが含まれている。講座の日程はおよそ30日間で、週1回コースと、週2回コースがある。30日のうち、およそ半分は部落問題や人権問題に関する講義である。残りのおよそ半分は、少人数に分かれた討議が中心である。なお、前半と後半には1泊2日の宿泊研修がある。この他、部落を直接訪問するなどのフィールドワークも盛りこまれている。

部落解放・人権大学の修了生は、今日3000名を超しているが、地方自治体や民間企業の中で部落問題や人権問題を取り組んでいく上で、重要な役割を果たしている。

7,世界人権宣言大阪連絡会議、反差別国際運動、アジア・太平洋人権情報センターの創立

 この他、研究所は、1984年3月、部落解放同盟をはじめとする諸団体、大阪府、大阪市をはじめとする自治体、大阪にある大学等と連携し、世界人権宣言大阪連絡会議を結成した。部落解放同盟と連携し、1988年1月、全世界から差別を撤廃するため反差別国際運動(IMADR)を創立するために中心的な役割を果たしたし、アジア・太平洋地域における地域的人権保障を創設するため、1994年7月、アジア・太平洋人権情報センター(ヒューライツ大阪)を設立するためにも大きな役割を果たした。