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掲載日:2004.04.19
国連文書・訳文
簡易編集版
配布:一般
E/CN.4/2004/93
2004年2月25日
原文:英語
国連人権委員会
第60会期
仮議題第17(c)号

人権の促進および保護:情報と教育

人権教育のための国連10年(1995-2004年):
「10年」の成果および欠点ならびにこの分野における国連の今後の活動に関する報告書

国連人権高等弁務官の報告書*

*本報告書の提出が遅れたのはできるかぎり最新の情報を含めようとしたためである。


要約

  本報告書は人権委員会決議2003/70にしたがって提出されたものである。その決議のなかで、人権委員会は国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)に対し、国連教育科学文化機関(ユネスコ)と合同ですべての加盟国と協議のうえ、人権教育のための国連10年(1995-2004年)の成果および欠点ならびに人権教育のための自発的基金の設置に関する報告書を、人権委員会第60会期に提出するよう要請した。

  決議にしたがい、本報告書では、上記の問題に関してOHCHRおよびユネスコが実施した加盟国との協議の結果を示している。回答した政府のほとんどは、「10年」の枠組みの内外で人権教育活動が増進してきたことを報告した。ほとんどは、人権教育が自国の優先課題であることは今後も変わらないだろうと述べている。

  特定の集団または問題への対応がとられてきておらず、また人権教育のための適切な調整機構がまだ設置されていないためである。最後に、回答した政府の過半数は、人権教育のための第2次国連10年(2005-2014年)を宣言することおよび人権教育のための自発的基金を設置することを支持している。本報告書では、この点に関して若干の詳しい提案も行なっているところである。



目次

はじめに

  1. 「10年」の成果および欠点
    1. 成果
    2. 欠点および残された課題
  2. 今後のイニシアチブ
    1. 人権教育のための第2次10年(2005-2014年)の宣言
    2. 人権教育のための自発的基金の設置
    3. その他のイニシアチブ
  3. 結論

添付資料




















はじめに

背景情報

1.人権委員会は第59会期に決議2003/70を採択し、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)に対し、国連教育科学文化機関(ユネスコ)と合同で、すべての加盟国と協議のうえ、以下の2点に関する報告書を次の会期に提出するよう要請した。

  1. 人権教育のための自発的基金の創設。人権教育のための国連10年の終了(2004年)までに事務総長が設置し、国連の財政規定・規則にしたがって高等弁務官事務所が運営するものとされる(決議パラ19)。
  2. 人権教育のための国連10年(1995-2004年)の成果および欠点(決議パラ21)。

2.人権委員会の2003年の会期後、「10年」の問題は人権の促進および保護に関する小委員会と総会の両方で提起された。

3.小委員会は、決議2003/5において、人権委員会が第60会期に以下の決定案を採択するよう勧告した。「人権委員会は、人権教育のための国連10年(1995-2004年)のフォローアップに関する人権高等弁務官の報告書(E/CN.4/2004/101)、および『10年』の中間期評価に関する同高等弁務官の報告書(A/55/360)に掲げられた勧告を考慮にいれ、人権教育のための第2次10年(2005年1月1日開始)を宣言することを総会に勧告するよう、経済社会理事会に対して勧告することを決定する」

4.総会は第58会期に「人権教育のための国連10年(1995-2004年)」と題する決議58/181を採択し、第59会期中の国際人権デー(2004年12月10日)に開催される全体会合で、人権教育のための国連10年(1995-2004年)の成果を振り返り、かつ人権教育の増進のために今後行ないうる活動について議論することを決定した(パラ17)。

報告書の作成

5.人権委員会決議2003/70の履行のため、OHCHRとユネスコは合同で、人権教育のための国連10年(1995-2004年)の成果および欠点と、「10年」終了後に人権教育の分野で国連が今後行ないうる活動(自発的基金の設置を含む)に関する国連加盟国およびオブザーバーの意見を求める質問票を作成した。2003年11月3日、ユネスコ事務総長と人権高等弁務官代理はすべての政府の長に書簡を送って質問票を送付するとともに、回答を奨励した。書簡の写しはユネスコ国内委員会、人権の促進および保護のための国内機関ならびにOHCHRおよびユネスコの現地事務所にも送付された。

6.2004年1月14日現在、OHCHRとユネスコは、以下の機関によって完全にまたは部分的に回答された質問票を受領している。

  1. 政府機関(28か国)
  2. ユネスコ国内委員会(2か国)
  3. その他の機関(人権機関・大学等、5か国)

7.本報告書においては、政府機関およびユネスコ国内委員会による29の回答のみ分析の対象とする(本報告書の執筆時点で、ロシア語で記入された回答1本は翻訳中である)。回答機関の一覧は添付資料として掲げた。また、本報告書では国名は挙げず、収集された情報の比較分析に焦点を当てる。

関連の国連文書

8.本報告書に記載された情報を補完するものとして、高等弁務官事務所がそれぞれ2000年および2003年に作成した以下の2つの報告書が参照されなければならない。

  1. 高等弁務官事務所がユネスコと協力して2000年に実施した、「10年」の世界的中間期評価の報告書(A/55/360)。同中間期評価においては「10年」の最初の5年間の経験が検証され、「10年」の残りの期間中に人権教育をさらに増進させることを目的とした、一般的勧告ならびに国際社会・地域・国内の各レベルでとられるべき行動についての勧告が行なわれた。これらの勧告は依然として妥当性を失っておらず、今後の方針策定にあたって考慮にいれられるべきである。
  2. 人権委員会の要請により高等弁務官事務所が2003年に実施した、「10年」をフォローアップするために考えられるイニシアチブ(とくに国・地域・国際社会の各レベルで人権教育を強化するための手段を含む)に関する研究(E/CN.4/2003/101)。同研究では、これに関わって高等弁務官事務所が組織した一連の活動の知見が提示されるとともに、政府、国内機関、国連機関、政府間機関および非政府組織(NGO)の見解も含まれている。

1.「10年」の成果および欠点

9.本節では、人権教育のための国連10年の過程で政府が実施してきた人権教育のとりくみとともに、残された課題に焦点を当てる。

A.成果

10.「10年」の成果と見なされるもの、関連する調整のための枠組みおよび機関(窓口、委員会、国内計画等)ならびに実施された主な活動について尋ねたこの設問については、29本の回答のすべてにおいて何らかの記入があった。ほとんどの回答は、「10年」の期間中にそれぞれの国で行なわれた人権教育・研修・広報活動を記述したものである。

11.「10年」の枠組みの重要性について触れた回答は5本あり、いずれも前向きな表現がとられている。これらの回答によれば、「10年」によって「人権教育が課題として認識」され、人権教育の必要性に関する意識が高まり、またこの分野における国際協力の枠組みが定められた。「10年」には、すでに関連の活動に従事していた者による人権教育活動を促進すると同時に、これまで関わっていなかった者に対してそのような活動の発展を奨励する効果もあった。

12.関連の活動を調整・実施・監視することを目的とした国レベルの人権教育の窓口の設置については、さまざまなアプローチがとられてきたことが浮き彫りにされた。特別委員会を設置した国も5か国あったものの、ほとんどの国では、この作業は国内人権機関、諸省庁の人権担当部局、司法機関・学術機関、ユネスコ国内委員会、議会委員会といった既存の国内機関によって担われた。ほとんどの場合、これらの機関はNGOと協力しながら活動しているとされる。

13.2か国の政府のみ、人権教育のための特別行動計画が起草・策定されたと報告している。さらにいくつかの国では、教育の要素を含んだ全般的な人権行動計画が採択されたか、または部門別の計画(女性の権利、子どもの権利、教育部門、さまざまな経済的・社会的・文化的権利等)のなかに人権教育が導入された。

14.ほとんどの回答は学校制度のなかでとられた措置に焦点を当てている。教育に関する法律・政策の採択、カリキュラムの策定・改訂、ステロタイプの解消および人権原則の反映を目的とした教科書の改訂、教材の開発、課外活動(ユースキャンプ、コンテスト、見学旅行、展覧会、人権記念行事の開催等)の組織、教職員の就任前・現職者研修の実施などである。

15.また、高等教育レベルで実施された活動を報告する政府も多い。人権講座および人権修士号の開設、人権担当教授および人権研究所の設置、研究プログラムの策定、講義・セミナーの組織などである。

16.回答のあった政府の多くは、「10年」の期間中、司法の運営に携わる職員(警察官、法曹およびそれほど多くはないが刑務所職員)の就任前・現職者研修に焦点を当てたと述べている。それよりは少ないものの、地方政府職員、ジャーナリスト、軍隊、雇用者/被雇用者を対象とした講座の開催に言及する回答もあった。公衆の意識啓発のためのキャンペーンは、ほとんどはメディアを通じて、ときにインターネットを活用して実施されていた。

17.特筆に値するのは、多くの場合、報告された活動のなかで差別の禁止および文化交流教育にとくに焦点が当てられていたことである。

18.場合により、国連機関(ユネスコ、OHCHR、国連難民高等弁務官事務所、国連児童基金、国連開発計画)やその他の機関(赤十字国際委員会、欧州評議会)が上記の活動を支援することもあった。ある政府は、その地域内で確立された、人権教育・研修の分野における二国関協力プログラムに相当の紙幅を割いて報告している。回答のなかには、「10年」の期間中に地域協力・国際協力が増進したことを認知するものもあった。

19.取り上げた教育プログラムの評価まで記載した回答はほとんどない。警察および軍隊を対象として大規模な教育のとりくみを進めてきたある政府は、これらの機関による人権侵害が減少したと報告している。期間中、これらの機関に対する苦情申立ての件数は減少し、定期的調査により、これらの機関に対する市民の見方も肯定的なものになってきたことがわかった。もうひとつの国の政府は、教育のとりくみのおかげで、自分の権利および関連の国内保護機構の認知度がますます高まったと強調している。そのため、1996年から2002年にかけて、国内人権機関のもとに寄せられる苦情申立ての件数は3倍になった。最後に、人権教育が全体として人権文化のさらなる発展および民主化プロセスに貢献したこと、政府と市民社会との協力の強化にもつながったことも、さまざまな回答のなかで指摘されていた。

B.欠点および残された課題

20.「10年」の期間中に充分なとりくみが行なわれなかった問題、残された課題、ならびに国連が提供する必要のある協力・援助に焦点を当てたこの設問について回答が記入されていたのは、分析対象とした29本の回答のうち20本にすぎなかった。

21.いくつかの政府は、国内外の政治的文脈によって人権教育は長期的とりくみが必要な優先課題となっており、1度きりの「10年」では対応しきれないと指摘している。

22.たとえば、ある回答では次のように指摘されている。「さまざまな文化・文明の文化的・宗教的その他の目立った特徴に関する理解を深めるために、それらに関する知識とそれらに対する尊重を促進しなければならない。人権教育においては、このことが、一方では諸人民間の相互理解と平和を促進するための、そしてあらゆる原理主義と過激主義を拒絶するための、前提である。逆説的なことではあるが、グローバル化のプロセスはしばしば信用と信頼の崩壊につながり、テロリズムと不寛容が花咲く土壌を生み出している」

23.同様の文脈を踏まえて、重要な移住の流れを特徴とする多文化社会において対話・国際連帯・社会的統合を促進するうえで人権教育にはひきつづき果たすべき役割があると強調する回答もあった。紛争後の状況に置かれているある国の政府は、差別と人権侵害がいまだに国内で生じていること、信頼醸成と和解の努力を進めるためには長期的な教育措置が必要であることを強調している。内戦の状況下にあるある国の政府は、人権が平和的共存および民主主義に至る手段としてとらえられるのではなく紛争当事者によって操作されていることを挙げ、教育面での課題があると報告している。

24.人権教育活動の内容面で「10年」の期間中に充分取り上げられなかった問題として、回答ではとくに次のようなものが挙げられた。すなわち、経済的、社会的および文化的権利と、それらが人権の不可分の一部をなす諸権利として充分に考慮されていない問題、権利に対応する責任、環境、女性の人権である。とくに人権教育を必要とするグループとして、政府からは、障害者、移住者、マイノリティ、HIV/AIDS感染者、高齢者、貧困層その他の傷つきやすい立場に置かれたグループがとくに挙げられた。自国では都市住民のほうが農村部の住民よりも人権教育の利益を得ていると強調する回答も3本あった。

25.いっそうの発展が必要な課題分野のひとつは、人権教育の適切な方法論、とくに人々の日常生活から始まる人権学習をどのように開発していくかという問題である。このことは学校制度との関連でも強調されている。いくつかの国々では正規の教育が伝統的に知識主体のものとなっており、このようなアプローチだけでは、人権教育のとりくみが目的とする態度の変革に資することにはならないためである。そこで、いくつかの国の政府は教育方法論ならびに評価手法と効果の評価に関する研究が必要であると強調している。

26.「10年」の期間中に充分なとりくみが行なわれなかったもうひとつの分野は、人権教育に関する効果的な調整機構と枠組みをあらゆるレベルで発展させるという問題である。さまざまな回答において、「10年」の期間中にこの側面は見過ごされていたと強調されている。たとえば、法律家と教育者の間で嘆かわしいほど協働が行なわれていないこと、政府とNGOの間で調整が行なわれていないことが指摘された。ある国の政府は、人権教育のための国内行動計画を策定しなかったのは遺憾であると述べている。これらの回答によれば、国内窓口の地域的・国際的会合など、「10年」に関するより効果的な調整システムが国際的レベルでも設けられるべきであった。

27.最後に、さまざまな回答において、人権教育プログラムを実施するための人的・財政的資源が存在しないこと、プログラムに対する援助国・機関の支援が一貫性を欠いていること、担当機関が政治的意思を示さないことに遺憾の意が表明されている。

28.ほぼすべての回答において、国連がさまざまな分野で援助を提供することの必要性が強調されている。これには、人権教育に関するニーズの評価および国内行動計画の策定ならびに研修担当者の人権研修についての技術的援助、そして財政援助が含まれる。ほとんどの回答が、国連の支援がとくに必要とされる分野として次の3つを挙げた。

  1. さまざまな部門における優れた実践の収集・普及
  2. 専門家・実践家の国内的および地域的ネットワーク作りの支援とスタディツアーの開催
  3. 教材の開発、修正または翻訳

2.今後のイニシアチブ

29.この設問は、「10年」終了後に世界中で人権教育を促進するために国連がどのような活動を構想しうるかという点に焦点を当てたものである。これには次のものが含まれる。

  1. 人権の促進および保護に関する小委員会によって勧告された、人権教育のための第2次10年の宣言
  2. 「10年」の行動計画および国連機関の多くの決議で構想されている、人権教育のための自発的基金の設置
  3. その他のイニシアチブ

A.人権教育のための第2次10年(2005-2014年)の宣言

30.29本の回答中、21か国の政府がこの設問への回答を記入していた。圧倒的多数の回答は、このようなイニシアチブに対する強力な支持を表明している。支持を表明しない回答は3本であり、ある回答は、このようなイニシアチブまたは国連によるその他のイニシアチブについて決定するためには第1次「10年」の成果および欠点を分析することが必要であると述べていた。

31.第2次「10年」を支持する回答は、それによって、第1次「10年」の間に発展してきた国内的・地域的・国際的プログラムを強化し、またとくに何の行動もとられなかった国々において新たなプログラムを開始する機会が提供されるだろうとしている。関連の主体に対し、これまでの成果を強化すること、手をつけたとりくみを体系化すること、関連の活動を継続すること、またとりくまれていない問題やグループに対応することを奨励することにもつながりうる。第2次「10年」はまた、国際人権基準にのっとった民主的手続および制度を設置・維持することへの貢献として、また差別、貧困、紛争、社会的排除といった緊急の人権問題に対する対応として、ひきつづき世界中で人権教育を追求していくという国際社会のコミットメントの表われにもなる。

32.ほとんどの回答は、第2次「10年」は第1次「10年」の成果および欠点ならびに残された課題(本報告書の第2節参照)を踏まえて進められるべきだとしている。また、各国の優れた実践、さまざまな経験の比較評価、さまざまな国々で同じような問題にとりくんでいる主体間のいっそう緊密な協力も踏まえなければならない。技術的支援および定期的連絡/フィードバックの提供を含め、調整機関としての国連の役割が強化されるべきである。また、第2次「10年」は国連システム全体によっていっそう包括的に唱道・支援されなければならず、全加盟国のさらなる参加といっそう強固なコミットメントが求められなければならない。

33.第2次「10年」の宣言を支持しなかった3か国の政府はさまざまな理由を挙げている。第2次「10年」の開始は第1次「10年」が失敗だったことの表れとして見なされるであろうこと、持続可能な開発のための教育の10年(2005-2014年)によって人権教育活動を継続する枠組みは部分的に用意されること、国際10年、国際年、国際デーの増殖はこのような概念そのものの価値をおとしめ、国連がとりくむべき課題の整理・再活性化という考え方にも逆行することなどである。ある国の政府は、第1次「10年」に対する加盟国の関心と参加が限られていたことも指摘している。またある国の政府は、すでに人権教育が学校で制度化されているため第2次「10年」は自国にとっての優先課題ではないとしている。

B.人権教育のための自発的基金の設置

34.29本の回答中、19か国の政府がこの設問への回答を記入していた。15か国はこのようなイニシアチブを支持し、2か国は支持せず、さらに2か国は見解を固めていないとしている。

35.支持する国々は、プログラムが用意されない(または短期で終わってしまう)のは適切な資源が存在しないためであることが多いことから、このような基金は各国が目標を実施するうえで役に立つだろうとしている。ある国の政府は、このような基金は拷問被害者のための国連自発的基金の経験を踏まえて設けられるべきであると述べている。

36.不支持を表明した2か国は、とくにインターネットを通じて人権教育教材を普及すること、または国の教育計画の主流に人権教育を位置づけることのほうがむしろ優先されるべきであるとしている。

C.その他のイニシアチブ

37.29本の回答中19本の回答でこの設問への記入が見られた。

38.さまざまな回答において挙げられた活動分野のひとつは、とくに地域的・準地域的レベルにおける経験、資料および専門知識の交流を促進すること(そのための地域センターの設置も含む)と、インターネットなどを通じ、関連の主体間でいっそうのアドボカシーとネットワーク化を進めることである。

39.さまざまな回答において、高等教育制度にもっと焦点を当てる必要性が強調されていた。大学は、この分野における研究を促進したり人権教育大学院プログラムを開設したりすることなどにより、適切かつ対象の明確な人権教育の方法論の開発に貢献しうる。その他のイニシアチブとしては、研修担当者・教育者の人権研修の支援、市民社会の強化が挙げられている。

40.最後に、ある国の政府からは、国際社会は、人権教育をいっそう支援するため、人権高等弁務官事務所の運営と資金調達、そして同事務所の現場への進出と活動を強化すべきであると提案された。


3.結論

41.人権委員会第60会期は、2004年12月に終了する人権教育のための国連10年(1995-2004年)のフォローアップのために考えられるイニシアチブを定めるという点で、きわめて重要な機会となるであろう。

42.人権委員会における関連の議論の参考に供するため、本報告書では、OHCHRとユネスコが全加盟国の政府に送付した関連の質問票に対する29本の回答を分析している。回答した政府のほとんどは、「10年」の枠組みの内外で人権教育活動が増進してきたことを報告した。しかしそのほとんどは、人権教育が自国の優先課題であることは今後も変わらないだろうとも述べている。特定の集団または問題への対応がとられてきておらず、また人権教育のための適切な調整機構がまだ設置されていないためである。最後に、回答した政府の過半数は、人権教育のための第2次国連10年(2005-2014年)を宣言することおよび人権教育のための自発的基金を設置することを支持している。本報告書では、この点に関して若干の詳しい提案も行なっているところである。

43.本報告書に記載された情報を補完するものとして、高等弁務官事務所がそれぞれ2000年および2003年に作成した、「10年」の世界的中間期評価の報告書(A/55/360)および「10年」のフォローアップに関する研究(E/CN.4/2003/101)に記載された情報および分析が参照されなければならない。

44.人権委員会が、世界全域における人権教育の発展を促進するための確固たる措置を検討および採択することが、強く希望されるところである。人権委員会は、人権教育に関する国際条約の採択が望ましいかどうかについても検討することができよう。



添付資料

質問票に対する回答機関一覧
(2004年1月14日現在)

A.政府

オーストラリア
バーレーン
ベリーズ
ボスニアヘルツェゴビナ
コロンビア
キプロス

コンゴ民主共和国
ドミニカ
エチオピア
フィンランド

フランス
グルジア
ハンガリー
ヨルダン
カザフスタン

ラトビア
リトアニア
ルクセンブルグ
モーリシャス
ノルウェー

ルーマニア
サンタルチア
サンマリノ
シエラレオネ
南アフリカ

トルコ
英国

パレスチナ

B.ユネスコ国内委員会

インドネシア
ポーランド