1.去る4月21日、スイス・ジュネーブで開催されていた第60会期国連・人権委員会で、「人権教育のための国連10年に関するフォローアップ」に関する決議案が、コスタリカ政府代表によって提案され、無投票で採択された。この決議案に賛同して名を連ねた国は40ヵ国を超したが、その中には日本も含まれている。
2.今回採択された国連・人権委員会の決議のポイントは、決議文のパラグラフ3にあるように、国連・経済社会理事会にたいして「あらゆる分野で人権教育プログラムの実施が維持・継続されるよう、連続的な段階で構成された人権教育のための世界的プログラムを2005年1月1日から始めることを第59会期総会が宣言するよう勧告するよう勧告」したことにある。
3.この中で触れられている「人権教育のための世界プログラム」は、決議文のパラグラフ2にあるように、‡@国際的な課題の中で人権教育に優先的な重点が置かれること、‡Aすべての関係する主体の行動のための共通の全体的枠組みを提供するものであること、‡B既存のプログラムを支持するとともに新たなプログラムの開発に動機を提供するものであること、‡Cあらゆるレベルでの連携と協力を強化すること、のためのものであることがわかる。
4.さらに、「人権教育のための世界プログラム」は、決議文のパラグラフ5にあるように、‡@各段階の行動計画は適切に構成され、‡A少なくとも最低限の活動を示し、‡B現実的な期間で組み立てられ、‡C自発的手段で資金供給がなされ、‡D全ての主体、とりわけ非政府組織が行う活動を支援する規定を含み、‡E人権高等弁務官事務所が評価するものであること、とされている。
5.そして、「人権教育のための世界プログラム」の第一段階としては、決議文のパラグラフ4にあるように、「人権高等弁務官事務所に、ユネスコ及びその他関連する政府及び非政府の主体と協力して、初等・中等教育システムに焦点を当てながら、プログラムの第一段階(2005〜2007年)としての世界プログラムの行動計画を作成し、協議及び採択のために第59会期総会に提出するよう要請」されている。
6.なお、決議文の前文で、人権教育は、‡@長期的で生涯にわたる過程であり、‡Aそれによっていかなる発達段階にある人々も、またいかなる社会階層にある人々も、他の人々の尊厳の尊重を学び、あらゆる社会においてその尊重を確保する手段や方法を学ぶものであること、が明らかにされている。また、人権教育の意義として、「人権教育は、すべての人のすべての人権が大切にされ尊重される社会を発展させるため、平等と持続可能な発展の促進、紛争と人権侵害の防止、及び参加と民主的なプロセスの強化に著しく貢献するものであること」が、明らかにされている。
7.こうして、1995年1月1日から開始され本年12月31日に終了する「人権教育のための国連10年」が、2005年1月1日から開始される「人権教育のための世界プログラム」として、受け継がれることとなった。この決議が採択されるために、コスタリカ政府をはじめとするこの決議に賛同した各国政府、さらには、多くのNGO等の精力的な努力があったことに関し、敬意を表するものである。
8.なお、当初、「人権教育のための国連10年」の総括を踏まえ、第2次「10年」が取り組まれることが各方面から求められ、コスタリカ政府が起案した決議文の原案では第2次「10年」に取り組むことが盛り込まれていたが、非公式の関係国会議で、いくつかの国がこれに反対した。このため、第2次「10年」を求めていた国々やNGO等の意向を最大限生かすとともに、反対国をも決議案に賛同の立場にするための努力が行われ、最終的に「人権教育のための世界プログラム」を提案する決議となったものである。
9.われわれは、今回の決議を「10年」の継続・発展を求めてきた関係者の努力が獲得した成果として基本的に評価するものである。今後、国連・人権委員会のこの決議を各方面で普及・宣伝するとともに、国連・経済社会理事会(6〜7月)、国連総会(9〜12月)において今回の決議に沿った決議が採択されること、またNGOの立場からの提言をも盛り込んだ「人権教育のための世界プログラム」の第1段階の計画が、国連人権高等弁務官事務所によって準備され、国連総会で採択されること、を求めて引き続き取り組みをしていく必要がある。
10.さらに、今回の決議を踏まえ、国はもとより、各都道府県、各市町村、さらには、各方面で策定されている「人権教育のための国連10年」に連動した行動計画とそれに基づく取り組みを総括し、新たな計画の策定を求めていく必要がある。また、諸般の事情で、「10年」に連動した計画を策定できなかった自治体や団体においても、この機会に新たな計画の策定に取り組むことを呼びかけるものである。