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掲載日:2004.10.13
国連文書・訳文
アンケート結果分析
 世界人権宣言大阪連絡会議及び社団法人部落解放・人権研究所では、「人権教育のための国連10年」のフォローアップに向けたアンケート調査を実施した。

1 アンケートの送付・回答状況

 1995年1月より開始された、「人権教育のための国連10年」が今年末で区切りを迎えることになるが、2004年4月21日、国連人権委員会において、引き続き国際レベルで人権教育の取り組みを継続する必要があるとの認識のもと、経済社会理事会に対し、「人権教育のための世界プログラム」の実施を国連総会に勧告することを求める決議がなされたところである。

 このアンケート調査は、大阪府及び府内市町村における「人権教育のための国連10年」の取り組み状況を把握し、今後の推進方向を明らかにするための参考に資することを主な目的としたものである。

アンケート調査は、大阪府及び大阪市を含む府内44市町村に対して行なった。アンケート項目は、

  1. 「人権教育のための国連10年」に関する庁内組織について、
  2. 「人権教育のための国連10年」に関する懇話会等について、
  3. 「人権教育のための国連10年」に関する行動計画について、
  4. 2005年(度)以降の方向について、
  5. 「人権教育・啓発推進法」に基づく人権教育・啓発基本方針、基本計画について、
  6. 部落差別をはじめあらゆる差別を撤廃する条例や、人権尊重の社会づくり条例等に基づく基本方針、基本計画について、

以上の6項目であり、それぞれについて、そうした計画や組織体制の有無などについて調査した。

なお、本報告を分かりやすくするため、アンケートの質問の順番と本報告の内容が若干前後することをお断りしておく。

2 「人権教育のための国連10年」に関する行動計画について

  「人権教育のための国連10年」に関する行動計画は、1997年3月に大阪府が全国に先駆けて策定したのを皮切りに、2003年3月23日までの間に、府内の全市町村において策定されている。名称については、豊中市、箕面市及び門真市を除く41市町村が、「人権教育のための国連10年」を行動計画名称の中に入れている。

 また、行動計画の内容の見直し・改訂については、計画の中間年や状況の変化等により、2001年3月から2004年6月1日までの間で、大阪府をはじめ大阪市、摂津市、豊中市、堺市、熊取町及び枚方市において行われている。

 次に、行動計画終了の期日であるが、大阪府及び24市8町1村が、「国連10年」に連動し、2004年12月又は12月31日までとしており、高槻市、箕面市、泉大津市、和泉市及び交野市が、2005年3月31日までとしている。さらに、能勢町、東大阪市、枚方市及び四條畷市が、2008年12月から2012年3月31日までのいずれかの間を行動計画終了の期日としているが、これは行動計画の期間を、その策定から概ね10年間としているためと思われる。また、豊中市と門真市については、「国連10年」終了後においても引き続き人権教育に対応させることなどを理由に、特に期日を定めていないとの回答であった。

 行動計画の各自治体ホームページへの公開については、大阪府ほか11市(うち1市は予定)がインターネット上において、行動計画を公開している。

3 「人権教育のための国連10年」に関する庁内組織について

 「人権教育のための国連10年」の取り組みに関する庁内組織については、1996年2月7日に大阪府が「大阪府人権教育のための国連10年推進本部」を設置したのをはじめ、2003年6月5日までの間に、箕面市を除く43市町村で「推進本部」が設置されている。(ただし、箕面市については、1999年3月に人権行政推進本部会議を設置。)

 これら「推進本部」の2003年度における開催状況で一番多かったのは、大阪市の6回(常任幹事会3回・幹事会3回)であり、次いで枚方市の4回(本部会議1回・本部幹事会3回)である。高槻市と豊中市及び四條畷市はともに3回の開催であり、摂津市と河南町は2回の開催、和泉市、田尻町、松原市、大阪狭山市、八尾市、門真市は、それぞれ1回の開催となっている。また、太子町は、必要に応じて随時開催との回答があった。なお、その他の自治体における開催回数は0回であった。

4 「人権教育のための国連10年」に関する懇話会等について

  「人権教育のための国連10年」に関する懇話会や審議会等については、1996年11月1日に大阪府が「大阪府人権教育推進懇話会」を設置したのをはじめ、2002年9月25日までの間に、10市が設置している。なお、藤井寺市と大東市においては、かつては設置していたが、現在はないと回答があった。

これら懇話会や審議会等の2003年度における開催状況で一番多かったのは、大阪市と八尾市のそれぞれ2回で、大阪府、高槻市、豊中市は1回の開催であった。なお、堺市、泉大津市、和泉市、泉佐野市、柏原市及び東大阪市については、2003年度における開催はないとの回答があった。

5 行動計画の2005年(度)以降の方向について

ここでは、2005年(度)以降の府内各自治体における、今後の人権教育に関する行動計画の策定などの方向性について調査した。

アンケート調査では、2005年(度)以降の人権教育にかかる行動計画について、終了する、継続する、新規に策定する又は検討中といった項目の中から選択・回答いただいた。

終了するとしているのは大東市のみであるが、現行10年の理念を継承した「人権行政基本方針」の策定を予定しているとの回答があった。次に、継続すると回答したのは、11市4町であり、うち現在のものを継続するとしているのは、池田市、能勢町、美原町(堺市と合併後、堺市行動計画を継続)及び東大阪市であり、改定するとしているのが、茨木市、忠岡町、田尻町、河内長野市、藤井寺市、大阪狭山市、柏原市、寝屋川市及び四條畷市である。なお、豊中市と枚方市については、既に改定済みとの回答があった。

新規に策定するとしているのは、大阪府をはじめ高槻市、堺市、八尾市及び門真市であり、うち門真市は既に策定済みとの回答があった。

次に、検討中との回答があったのは、17市6町1村であり、うち策定の時期を未定としているのは、13市6町1村である。また、吹田市、泉佐野市、阪南市及び守口市については、2004年10月から2005年3月までのいずれかの間に結論を出す予定としている。

6 「人権教育・啓発推進法」に基づく人権教育・啓発基本方針、基本計画について

大阪府及び府内市町村における、「人権教育・啓発推進法」に基づく人権教育・啓発基本方針、基本計画等については、大阪府をはじめ16市2町が策定している。うち、大阪府、豊中市、堺市は「人権教育のための国連10年」に係る行動計画等をその位置付けとしている。計画の期間については、大阪府と堺市は2004年12月までとし、その他の自治体は、特に設定していない又は無記入であった。

こうした人権教育・啓発基本方針、基本計画等の各自治体ホームページへの公開については、大阪府ほか5市がインターネット上において公開しており、1市が予定との回答であった。

7 部落差別をはじめあらゆる差別を撤廃する条例や、人権尊重の社会づくり条例等に基づく基本方針、基本計画について

 それぞれの自治体における人権尊重等に関する条例等に基づく基本方針、基本計画の策定については、1992年3月から2004年7月までの間で、大阪府をはじめ18市6町1村が策定している。策定なしとの回答があったのは、9市1町であるが、うち堺市は単独の基本方針として「人権施策推進基本方針」を策定している。

 こうした人権教育・啓発基本方針、基本計画等の各自治体ホームページへの公開については、大阪府ほか6市がインターネット上において公開している。

 なお、いくつかの自治体から「条例そのものの策定状況について」回答をいただいたが、本問が「条例等に基づく基本方針・基本計画について」であるので、ここでは除外したことをお断りしておく。

8 ま と め

 「人権教育のための国連10年」取り組みにより、大阪府をはじめ府内全ての市町村において、国連10年行動計画が策定され、また同時に、庁内の推進体制が確立されるなど、人権教育を総合的・計画的に推進していくことが可能となったものと考えられる。しかしながら、同和問題をはじめ、女性や子どもをめぐる問題、高齢者や障害者をめぐる問題など、今なお人権課題が残されており、また、世界を見渡すと、戦争やテロ事件などが連日のように報道されている状況にある。こうした中、国連における、第2次「人権教育のための国連10年」ともいえる「人権教育のための世界プログラム」として人権教育を継続する動きは、大いに歓迎すべきことである。

 日本においても、2000年12月に「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が施行され、国、地方公共団体及び国民の責務が明文化され、この法律に基づき、国や地方公共団体が策定した基本計画を柱に、人権に関する施策の総合的かつ計画的な推進が図られているところである。

 今回のアンケートでは、大阪府及び府内市町村において、この法律に基づく基本計画を定めている自治体は、大阪府をはじめ16市2町であり、それ以外の自治体においては、「人権教育のための国連10年」に関する行動計画を定めている。

 今後、注目されるのは、本年末で最終年を迎える「人権教育のための国連10年」以降の府内自治体における人権教育に関する取り組みの方向性であるが、アンケートの問5.では、行動計画の2005年(度)以降の方向について、人権教育に関する行動計画を継続(改訂済みを含む)又は新規に策定すると回答した自治体は、大阪府をはじめ15市4町である。残る多くの自治体は検討中としており、また、策定の時期を未定としている自治体も多い。だたし、これは国連における「人権教育のための世界プログラム」の具体的な内容が未確定であることと、それに国がどのように対応するのかを見届けてから検討するなどといった姿勢を取っているためではないかと推測される。

 そうした意味では、府内の各自治体において、今後策定される行動計画は、「人権教育のための国連10年」のこれまでの成果を踏まえた、人権教育の取り組みを発展させる内容としたものであることが求められる。

 最後に、今後、全国に先駆けて現行10年の行動計画を策定したこの大阪の地から、率先して国、そして全国へ向けて、「人権教育のための世界プログラム」の取り組みの必要性を訴え、具体的な活動の広がりなどをとおして、人権が尊重された社会が実現されることが望まれる。