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掲載日:2003.03.29
韓国 晋州五広大保存会の
創作仮面劇公演
「白丁(ペクチョン)」 

2004年4月24、25日

 2004年4月、韓国慶尚南道の晋州市から「晋州五広大(チンヂュオグァンデ)保存会」の一行を招聘し、創作仮面劇「白丁(ペクチョン)」の公演を行います。

 2003年4月に部落解放・人権研究所創立25周年、衡平社創立80周年を記念して実施された韓国人権ツアーに協力・参加し、晋州五広大保存会による被差別民「白丁」を題材にした創作仮面劇を観賞しました。その後、『衡平運動』の著者である金仲燮(キム ヂュンソプ)慶尚大学社会学部教授、晋州五広大保存会会長である鄭炳勲(チョン ビョンフン)同大学哲学科教授と連絡を取り合い、大阪での公演と青少年との交流を中心に、晋州五広大保存会の一行を招聘することになりました。

2月20日には第248回国際人権規約連続学習会で、晋州五広大保存会の鄭炳勲(チョン ビョンフン)会長を迎え、仮面劇による21世紀の文化運動と人権運動についての講演を行いました。

実現にあたっては世界人権宣言大阪連絡会議を中心に、住吉人権文化センター、人権NPO法人ダッシュに開催受け入れを要請し、24日に住吉人権文化センター、25日に和泉市立人権文化センターにて創作仮面劇の公演及び交流を行うことが決まりました。

  1. 晋州五広大保存会による創作仮面劇・サムルノリの上演を行う。(規模約300名×2公演)
  2. 大阪市住吉区の盆踊り保存会・子ども会との交流を公演,交流会を通じて行う。(2004年4月24日)
  3. 和泉市の幸小学校・和太鼓グループ「鼓聖泉」・青少年との交流を、公演、交流会を通じて行う。(2004年4月25日)

関連の講座


○●○公演内容○●○

2004年4月24日(土)午後2時から4時30分まで
大阪市立住吉人権文化センター(大阪市住吉区帝塚山東5-3-21)
(南海高野線「住吉東」駅から徒歩3分)
住吉地区盆踊り保存会・サムルノリ・創作仮面劇「白丁」の公演
先着350名入場無料―ハガキ・電話・ファックス・直接来館でお申し込み下さい。
詳細は 韓国仮面劇文化交流 住吉住之江区実行委員会 tel 06-6674-3731 fax 06-6674-3710

2004年4月25日(日)午前10時から午後4時半まで
大阪府和泉市立人権文化センター(ゆう・ゆうプラザ)にて
(JR阪和線「信太山」駅から徒歩3分)
午前10時から ワークショップ
1.韓国の文化・言葉・遊び体験 2.和太鼓体験交流 3.日韓の人権運動
午後1時から 和太鼓グループ「鼓聖泉」・サムルノリ・創作仮面劇「白丁」の公演
参加協力券500円
詳細は 仮面劇「白丁」公演実行委員会
(和泉市立人権文化センター) tel 0725-44-0030

全体のお問い合わせは 世界人権宣言大阪連絡会議 tel 06-6568-7337



創作仮面劇「白丁(ペクチョン)」
秤のように平等な社会を夢見る白丁たちの衡平社運動(衡平運動80周年記念製作)

衡平運動とは?

衡平運動は1923年に韓国・慶尚南道の晋州で始まった、被差別民である白丁(ペクチョン)の解放運動です。

白丁の作業道具である秤の象徴的な意味をいかし、あらゆる人々が差別を受けず、秤のように平等な社会をめざし、この団体名を衡平社としました。衡平運動は、晋州の社会運動家たちや白丁の指導者たちなど多くの人々が参与しながら瞬く間に韓国全土に広がりました。

「公平は社会の根本である。愛情は人類の本領である。」

あらすじ

白丁「マンセ」の家族とソプチョン村に暮らす白丁たちの暮らしと、晋州の歴史的事件である衡平運動を仮面劇で表現しています。舞、歌、仮面そして農楽などを芝居に盛り込み、民俗芸術の趣と興や即興性を最大にいかした作品です。 差別を受ける白丁の苦痛に満ちた人生と克服過程をあらわし、さらに差別のない人間らしい社会をめざす楽観的な展望を描いています。

第1幕 天への導き
何百年も差別を受けてきた白丁たちの恨みを晴らし、その場の不浄を取り除く儀式舞。

第2幕 日常
マンセの家族の一日が始まり、白丁たちの恨多き日常が始まる。身分差別により文字を学べない息子、絹の服を着ることができない妻、カッ(冠帽)をかぶることの許されない男たち。もう暮らしていけないと村を出て行く家族。あらゆる口実で搾取される白丁たちの姿と、祭事や悠々自適に風流を楽しむ両班たちが繰り広げる日常を描く。

第3幕 市場
晋州の市場のにぎやかな様子。肉や飴そして餅を売る商人の独特な香具師、軽業師の愉快な見せ物が繰り広げられる。肉を売ろうとやってきたマンセは常民の妨害で商売もうまくいかず、マンセの妻は酔った両班の暴力により殺される。村の人々は泣きながら遺体を片付ける。

第4幕 風
矛盾が極に達した朝鮮時代後期の社会で東学農民抗争が起こり、それによって社会改革が宣布される。賤民が解放されるという噂を耳にした白丁たちは新しい暮らしを期待し、白丁の象徴であるペレンイを脱ぎカッをかぶり南江を渡るが、現実は変わらず差別と弾圧は続く。郡主はカッをかぶった白丁を拘束、一般人による差別は続く。

第5幕 衡平社
1923年4月、ついに白丁たちは晋州の社会団体の支援を受け、全国初の衡平社を創立する。



創作仮面劇「白丁(ペクチョン)」

  仮面劇は、歌と踊り、芝居や遊び等様々なジャンルをまじえた芸能として、朝鮮半島の民衆に受け継がれ発展してきました。

 巫俗の儀礼から発展したという説もあり、正月や端午の節句などの季節の区切り目の祭りで、厄払いの意味も備えながら、地域の共同体を活気づけるため演じられてきたのです。

 主に、円座になった観客に囲まれた野外舞台で同じ視点の高さで演じられ(今回の公演は屋内です)、演者と観客が一体となることができる独特の雰囲気を醸し出します。仮面劇はタルチュム(仮面の舞)とも呼ばれるように、踊りが主になる部分と、台詞をもつ演劇の部分から構成され、オムニバス形式になっています。

 単なる面白おかしい芸能としてだけではなく、社会への風刺がおどけた表情の仮面にも強くこめられています。社会の矛盾に対するやるせなさを表現しているため、笑いと涙と共に、生きる勇気を生み出す劇として民衆に愛されてきました。

 今回紹介する創作仮面劇「白丁(ペクチョン)」は慶州南道の晋州五広大(チンジュオグァンデ)をアレンジしたものです。 「白丁」とは朝鮮半島の被差別民を表す言葉で、今日も白丁に対する社会意識としての差別観念は残っています。

  この作品は、「衡平社(ヒョンピョンサ)」を創立した過程や、両班(ヤンバン)や一般大衆に虐げられ搾取された白丁の様子を、踊りや笑いを交えて表現しています。 


朝鮮半島の仮面劇

 仮面劇は、歌と踊り、芝居や遊び等様々なジャンルをまじえた芸能として、朝鮮半島の民衆に受け継がれ発展してきました。

 巫俗の儀礼から発展したという説もあり、正月や端午の節句などの季節の区切り目の祭りで、厄払いの意味も備えながら、地域の共同体を活気づけるため演じられてきたのです。

 主に、円座になった観客に囲まれた野外舞台で同じ視点の高さで演じられ(今回の公演は屋内です)、演者と観客が一体となることができる独特の雰囲気を醸し出します。仮面劇はタルチュム(仮面の舞)とも呼ばれるように、踊りが主になる部分と、台詞をもつ演劇の部分から構成され、オムニバス形式になっています。

 単なる面白おかしい芸能としてだけではなく、社会への風刺の念がおどけた表情の仮面にも強くこめられています。社会の矛盾に対するやるせなさを表現しているため、笑いと涙と共に、生きる勇気を生み出す劇として民衆に愛されてきました。

 今回紹介する創作仮面劇「白丁(ペクチョン)」は慶州南道の晋州五広大(チンジュオグァンデ)をアレンジしたものです。

 「白丁」とは朝鮮半島の被差別民を表す言葉で、今日も白丁に対する社会意識としての差別観念は残っています。「五広大(オグァンデ)」の「広大(グァンデ)」とは仮面劇を演じる俳優や、仮面を指します。

 この作品は、両班(ヤンバン)や一般大衆に虐げられ搾取された白丁の様子や「衡平社」を創立した過程を、踊りや笑いを交えて表現しています。


サムルノリ

 「東アジアのジャズ」のひとつとも言えるサムルノリ。もともとは仏教音楽としての歴史があり、農耕生活の中でハレの日である祭りなどで演奏されてきた音楽・遊びです。

 「サムル」とは四物、「ノリ」とは遊びを意味します。四物は楽器の種類を表しています。

 四種類の楽器の音が巧みに交わり、独特のリズムを生み出します。

 サムルノリをリードするのは「クェングァリ(銅鼓)」。甲高い音で激しさを増大させます。その音の通り、「雷」に例えられ、365日を意味します。

 両手のさばきが見事な「チャング(長鼓)」は、雨音のように絶妙な音の調べを奏でます。「雨」であり、12の月を表します。

 ドンドンと力強くビートを刻む「プク(太鼓)」は、よくパンソリの演奏にも使われる楽器です。「雲」の音に例えられ、4つの季節を意味します。

 最低音で鐘のように響く「チン(ドラ)」は、ベースの役割をします。「風」の音のように漂い、1年を意味する通り、雄大な音でサムルノリをまとめあげるのです。



晋州五広大保存会(慶尚南道無形文化財 第27号)の紹介

1,歴史

  晋州五広大(チンヂュオグァンデ)は慶尚南道の晋州地域の歳時風俗として伝承されてきた仮面劇です。19世紀中頃、最も活発に演じられ、1920年代まで持続して伝承されてきましたが、日本の植民地支配下の文化政策によって衰退しました。1930年初めには、民族主義的な郷土文化復興運動の一環として再演されるようになり、この時の台本、仮面等が記録、保存されています。しかし、その後約30年に渡る努力にもかかわらず結局その伝承が断絶してしまいました。

 そうして、1997年第2回晋州仮面劇大会にて晋州五広大に関する学術シンポジウムを契機に、「晋州五広大」を文化運動の次元で復元しようとする市民らの努力の成果が実り、1997年秋に晋州五広大復元事業会が結成されました。市民が五広大復元のための基金準備に参与し、サムグァン文化研究財団や晋州市も多くの財源を支援しました。その後1年間の再演準備の末、1998年5月23日には60年ぶりに歴史的再演公演を行い、それ以来毎年定期公演を行っています。

  「晋州五広大」再演事業には五広大に実際出演していた唯一の生存者であるムン・ジュン氏をはじめとし、晋州剣舞芸能保有者であるキム・スアク先生、国内の様々な仮面劇研究家,民俗学者等が参与して、学生時代に仮面劇に出演した人々を中心に50名余りが晋州五広大を伝授することになりました。

1999年10月 第1回全国仮面劇競演大会 栄誉大賞(文化観光部長官賞)
2000年   世界舞踊フェスティバル 韓国伝統名舞展シリーズ 参加
2001年   第31回慶尚南道民俗芸術祭 最優秀賞
2001年10月 第42回韓国民俗芸術祭 優秀賞
2003年6月 慶尚南道無形文化財第27号指定
2000年   「晋州五広大保存会」に改称

2,目的

晋州五広大保存会は晋州地域の伝統仮面劇である晋州五広大を原形のまま保存し、これを伝承することを目的としています。さらに伝統仮面劇を現在の時代感覚に合わせ新しく創造することを追求しています。同時に地域文化の発展のため多様な形態の文化運動を展開しています。衡平運動80周年記念事業の一環として作成した創作仮面劇「白丁」もこのような活動のひとつです。

3,組織構成

晋州五広大保存会は理事長を中心とする理事団、会長を中心とする公演団、そして後援会で構成されています。衡平運動記念事業会前理事長であるキム・ジャンハ氏が理事長を,慶尚大学哲学科教授チョン・ビョンフン氏が会長を務めています。公演団は教師、役者、農民、主婦、大学生、公務員等それぞれの職業を持つ40名余りの団員で構成され、その中のムン・ジュン氏が芸能保有者、ハ・ゲユン団員とカン・ドンオク団員が芸能候補者、ナム・ソンジン団員が補佐として任命されています。