第1報告:
憲法問題プロジェクト「憲法改正問題への中間提言の概要」
報告者:金子匡良さん(法政大学)
コメンテータ:ûü野眞澄さん(香川大学名誉教授)
ここ数年憲法改正論議が活発化しているが、これに対して、部落解放運動をすすめてきた立場から何を言うべきか、何を守り、変えるべきものは何か、という視点から、議論を進めてきた。現行憲法に対する大まかな評価としては、第14条を中心として、自主解放の手がかりを部落解放運動に与えている。これは高く評価すべきである。また、憲法はそもそも権力を縛るルールであるということが前提であるが、権力をもたない人による差別に対して、憲法が何を果たせるのかという点は問題である。人権救済について、十全の役割を果たしていくべきであろう。
また、各論については、天皇制が主権在民・部落解放と相容れないこと、9条の不戦の誓いと自衛隊の問題、さらには基本的人権の尊重を定める諸規定(とりわけ14条の平等権規定、24条の男女の本質的平等規定、25条の生存権規定)、が、戦後の部落解放運動にとって大きな役割を果たしてきたことなどを検討している。
【コメンテータからのコメント】
基本的なスタンスは、差別の解消や平等権規定を憲法解釈の基本に据えるということであり、既存の差別禁止事由に加えて、国籍・障害・年齢などの新しい問題のクライテリアをいれて差別解消を強化することが重要である。
いずれにしても、来年の夏、政界レベルで議論が本格化するかもしれない。それをにらみながら、議論を深める必要があろう。
|