第3報告:労働者の個人情報保護研究
「従業員等の個人情報保護と 企業の取り組みの現状と今後の課題」
報告者:竹地 潔さん(富山大学)
コメンテータ:内海義春さん(大阪企業人権協議会)
2005年4月に個人情報保護法が全面施行されたが、顧客情報がメインになっている。しかし、従業員情報に付いてはどの程度取り組まれているか。法規定の抽象性・努力義務の多さから、実際の取り組みを進めるには困難が伴う。本研究では、そのような困難の中で、法やガイドラインに則した取組み状況について調査し、かつ取り組むに当って各企業が感じた困難やご苦労を伺った。その上で、企業・行政の課題を指摘した。
主な調査結果としては、保護方針・取扱規程の策定、管理者の選任などの形は、一定できている。
ただ、社会的差別につながるセンシティブな情報の取得については、多くの企業は行っていない。取得の経路も、基本的に本人から取得するとしているが、若干、本人以外からという場合もある。
現在、個人情報保護の仕組みに、魂を入れる段階。繰り返し教育訓練を実施していく必要がある。顧客情報を守ってもらうためにも、従業員の情報もしっかり守っていくことが重要である。また、行政の課題としては、規定の明確化が求められる。
【コメンテータからのコメント】
今回の報告では、予想以上に取り組みは進んでいる。しかし、今回の調査対象以外の、小規模な事業所や企業ではどうか。とりわけ、5000件以上の個人データを保有しない企業については、やや鈍いという結果となった。この点は、企業人権協としても取り組みを促す必要があろう。
ただ、進んだ企業においても、社用紙や部落地名総鑑といった一連の経緯の中で、不適切な面接が行われている。そういった企業においてこの法の趣旨を入れ込み、問題解決を迫っていくかは大きな課題であろう。
また、この個人情報保護を、「人権」の観点からいかに位置付けるか。おそらく現状としては法務・コンプライアンスという切り口で取り組まれ、人権のセクションのかかわりは例外的ではないか。
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