Q1. ダリットではない人々はどのようにしてダリットを識別するのですか? |
A. |
次のような方法で識別されます:
- ダリットに特有の姓があります。例えば、Bishwokarma, Gajmer, Acchami, Pariyar, Gandharba, Darnal, Dhyala, Mijar, Sada, Paswan, Halakharなど。
- ネパールのダリットの中には、ブラーミンやチェトリの家族名と類似した家族名をもつ人々もいます、例えば、Ghimire, Pokharel, Paudel, Basnetなどです。そのような名前の場合は、所属するカーストグループが分かれば、ダリットであると認識できます。
- 概して、農村に住む人々は経済的に不利な立場にあります。2001年の国勢調査によれば、都市部に住むのは人口の14%だけです。すなわち、残る86%は農村に住んでいます。ネパールではダリットは外見的にダリットではない人々と変わりありません。初めて訪れる村であっても、上位カースト(ダリットではない人々)がダリットに対して不可触制の慣行を行っているのを見れば、その人がダリットであることが簡単に分かります。
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Q2. 債務奴隷はダリットと同一ですか? |
A. |
いいえ。ネパールでは債務奴隷には触れることができます。しかし、ダリットはアンタッチャブルです。地主は債務奴隷が触った物や体を浄めることはしません。しかし、ダリットが触れば、地主は聖なる水で自らの体や物を浄めます。地主は債務奴隷が供した食べ物は受けつけますが、ダリットが触れた水や食べ物は受けつけられません。 |
Q3. ダリットは23から26の集団に分かれるということですが、それは職業に基づいて分けられているのですか?
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A. |
概して、ダリットは職業に基づいて集団に分けられています。しかし、中には、世系(descent)に基づくカースト集団もあります。例えば、ダリット男性とダリットではない女性など異カースト間の結婚が行われた場合がそうです。女性のカーストは自動的にダリットに下降します。彼女は社会にとってアンタッチャブルになるのです。逆も同じです。ダリットではない男性がダリットの女性と結婚した場合、その男性は社会に受け入れられません。男性は自分のカーストを失い、社会のアンタッチャブルとなります。 |
Q4. ダリットはダリットだけのコミュニティで生活をしているのですか?それとも、大きなコミュニティの一画で生活しているのですか? |
A. |
ネパールは地勢学的に多様なため、ダリットの居住地も場所によって異なります。丘陵地帯では、ダリットはダリットではない人々と同じコミュニティに住んでいます。タライでは、ダリットのコミュニティは、ダリットではない人々のコミュニティから離れています。
そのため、丘陵のダリットの方がタライにいるダリットより開発が進んでいます。丘陵地帯では、ダリットとダリットではない人々が混じりあって生活しています。そのため、ダリットは教育やその他の機会を手にすることができます。しかし、タライでは、ダリットは別の居住地に住んでいるため、ダリットではない人々と混ざることができないし、開発の機会から大きく取り残されています。 |
Q5. マスメディアはダリット問題を肯定的および好意的に報道しますか? |
A. |
昔、マスメディアはダリットのニュースを報道しませんでした。1990年に民主主義が回復されてから、ダリットの組織が徐々に誕生し、ダリットの問題を政府も取り上げるようになりました。そして、マスメディアもダリットのニュースを時折とりあげるようになりました(あまり頻繁ではありません)。現在、ダリットの問題はネパールにおいて熱い問題になっています。マスメディアもダリットについて非常に肯定的で好意的に報道しています。しかし政府の報道機関はダリット問題を報道しません。民間のメディアだけがダリットについて報道します。
今日では、ダリットが週刊のニュースレター、月刊ニュースレターなどを出していますし、TVやラジオ番組も放映しています。
これらメディアは、ダリットおよびダリットではない人々に、カースト差別とそれが開発の過程でもたらす影響について知らせる上で大変役立っています。
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Q6. インドのダリットとネパールのダリットの間の共通点と相違点は? |
A. |
共通点:
- ダリットはアンタッチャブルである。
- ダリットは経済的に貧しい。
- ダリットに対する差別が類似している。
- ダリットへの残虐行為が類似している。ただし、ネパールの方が比較的緩い。
相違点:
- インド政府はダリットの発展のために留保を設けているが、ネパールでは、政府政策の中に、ダリットの発展のための留保はない。
- インドでは、ダリットは指定カーストとして規定されているが、ネパールではダリットは社会のカースト階層の内にある。ネパールのダリットは、カースト階層の最下層にあたるシュードラに属している。シュードラは2種類に分かれる。一つは触れることができるが、もう一つは不浄でアンタッチャブル。ネパールでは不浄でアンタッチャブルとされる人々がダリットである。
インドでは、ダリット運動は非常に強力ですが、ネパールではこの運動は1990年に民主主義が回復されてから、急速に進んできました。
インドのダリットは文字の読み書きができ、文学の歴史をもっています。そして、ダリットは明確に定義づけられています。しかしネパールでは、ダリットは読み書きができず、カースト制度に目覚めていないし、文学の歴史をもっていません。
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Q7. ネパールでは国連および国連人権諸条約は効果的に利用されていますか? |
A. |
いいえ。ネパール政府は人権文書を効果的に実施していません。人権条約を批准した後、ネパール政府は国内人権委員会を設立しました。この委員会は国内の人権保護のために活動しています。しかし、この委員会はダリットに対する暴力をネパールの国内人権問題としてまだ取りあげてはいません。
1993年、人権条約を批准した後、政府は1854年の古い国内法を改正し、不可触制を国内法から取り除きました。カーストに基づく不可触制を実践すれば、誰でも処罰の対象になります。この条項が設けられたにもかかわらず、人々はダリットに対して明らかに不可触制の慣行を行っています。
政府はまた、カーストの不可触制に基づいてダリットに対する差別をした人々を庇うことによって、国連の人権宣言と人種差別撤廃宣言を避けて通ろうとしています。
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Q8. ネパールの人々は部落差別や部落解放運動についてどの程度知っていますか? |
A. |
一般的に、人々は日本における部落差別を知りません。ネパールで強いダリット運動が始まり、ネパールのダリット活動家が日本の解放運動の人々と交流したり、ネパールのダリット問題が反人種主義・差別撤廃世界会議(WCAR)や人種差別撤廃委員会の国際舞台の場で強調されるようになりました。それにより、日本の部落差別は知られるようになりましたが、ダリット社会だけにとどまっています。私は、日本の部落の人々の運動の成功はネパールのダリット運動の導きになると思います。そうすれば、人々は日本の部落差別について知るようになります。
現在、インターネットなど、通信手段が急速に発達しているため、ネパールの人々も日本の部落解放運動について知るようになるでしょう。
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