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human Rights152号掲載
連載・部落解放運動は今
辻 暉夫(つじ・あきお 解放新聞大阪支局)

新しい風55

全国初の大阪人権議員フォーラム

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 大阪人権議員フォ−ラムの人権政策勉強合が九月七日、大阪市内でひらかれた。フォ−ラムに加盟している議員や市民ら約五○人が出席、「男女共同参画社会づくりにむけて」をテーマに学習した。

中村信彦・茨木市議が司会、土師公平・大阪府議が「女性問題、性差別についてしっかり勉強し、地方行政に反映させていこう」と主催者代表あいさつ。大阪経済大学教員のIさんが、女性にかかわる様々な制度の問題点、矛盾について講演した。また部落解放西成地区母子父子対策会議のYさんが、母子家庭の自立を支援する制度の必要性を訴えた。山中きよ子府議がまとめとして「今日学んだことを、条例づくりなどに反映させていこう」と呼びかけて閉会した。

この人権議員フォ−ラムが結成されたのは昨年一二月のこと。政党・会派の違いを超えて、人権の視点に貫かれた地方自治を追求していこうと、部落解放同盟大阪府連が呼びかけて結成された。「二一世紀は人権の世紀」といわれているが、それを内実あるものにするには、人権行政の確立が不可欠だ。大阪府連は共産党をのぞく大阪の全議員に参加を呼びかけた。人権を基軸にした社会づくりをめざす議員の集まりは全国でも初めてという。

日本は、いや全世界が今、大転換の時代を迎えている。政治、経済、行政などすべての分野において構造的な変革、改革が求められている。大阪府連はこんな時代の要請にこたえるべく、一昨年、第三期の部落解放運動論をまとめ、変革の必要性を強調。このなかで地方、国を問わずあらゆる行政を、人権確立の視点に立って洗い直さなければならないと力説している。「人権をまもること」を行政の基軸にしていくこと、そのためには行政はもちろん議員が人権問題に関心をもち、人権政策を立案していくことが求められている。

大阪府では昨年四月、機構改革が行われ、新たに「人権室」が誕生、一二月には「大阪府人権尊重の社会づくり条例」が制定された。また大阪市でも「人権部」が設置され、地方自治体の本格的な「人権行政」の取り組みがスタ−トした。しかし「人権行政」はまだ緒についたばかり。今こそ市民と議員の協働作業で人権の視点に立った政策づくりが求められている。

人権議員フォ−ラムは全国で初めてということなので、参考のために運営規則を紹介してみよう。目的の項では「二一世紀を人権の世紀とすべく、人権という公共的価値を地方自治体の主権の一つとして正しく位置づけること」とうたっている。活動は‡@国内外の人権問題にかかわる調査研究‡A地方自治体における人権行政確立へむけた政策立案‡Bインターネットを通じた政策提案や政策論議‡C人権問題に取り組む市民運動グループとの交流‐などをあげている。

現在、会員は府議三四人、大阪市議二二人、府内市町村会議員四三人の合わせて九九人。もう一人が近く加入することになっており、百人の大台にのる。民主党、公明党、自民党、社民党、無所属と政党は様々だが、人権行政の確立という一点で結集している。解放同盟大阪府連が働きかけて二○年ほど前に結成された部落出身議員団「荊政会」のメンバーもほとんどがこのフォーラムに参加しているが、フォ−ラム会員の大半は部落出身議員ではない。

当初からフォ−ラム結成にあたってきた大阪府連の井戸木副委員長は「学習を積み重ねていくとともに、どんな人権政策をつくりあげていくかが問われている」という。政策立案ヘー議員フォ−ラムは地道な取り組みをつづけている。