Home書籍・ビデオ案内 ヒューマンライツもくじ > 本文
書籍・ビデオ案内
 
human Rights159号掲載
連載・部落解放運動は今
辻 暉夫(つじ・あきお 解放新聞大阪支局)

新しい風62

2000年実態調査結果・府民の意識

------------------------------------------------------------------------

 本誌前号で、昨年五月大阪で行われた「二〇〇〇年部落問題実態調査」のうち、部落の生活実態調査の結果を紹介したが、今号では府民の意識調査の結果について報告してみる。

úrイ査の実施主体は大阪府と府内の全市町村。部落解放同盟大阪府連が新世紀における部落解放運動のあるべき方向や同和行政の課題などを探ろうと調査を要請、このほどその結果がまとまった。

 意識調査は、全市町村の一五歳以上の男女一万人を無作為抽出し、調査票を郵送して行われた。有効回収調査票五五六八票だった。その主な結果をみてみると――。

 まず、被差別部落の存在について、「知っている」が八六・五%、「知らない」が一一・八%で、ほとんどの府民が認知していることがわかった。「何をもって同和地区出身者と判断しているか」では「本人が同和地区に住んでいる」が五六・五%、「本籍地が同和地区にある」が四七・九%、「出生地が同和地区である」が四四・三%で、今日もなお戸籍が差別の手段として用いられる可能性が高いことを物語っている。父母や祖父母が地区にすんでいる、本籍地が地区にある、出生地が地区であるがそれぞれ三分の一あり、血筋に関する意識も根強く残っている。

 「同和地区を知っている」と答えた人のなかで、地区出身者が就職に際して「しばしば不利になることがある」が二二・六%、「たまに不利になることがある」が三九・四%をしめ、「不利になることはない」の一四・四%を大きく上回っている。

 同和地区の人が結婚する際、地区出身であることを理由に反対されることがあると思いますか、という質問に対して「しばしば反対されることがある」が三三・九%、「たまに反対されることがある」が四四・三%で、「反対されることはない」の五・七%を大きく上回っている。

 住宅を購入する際、同和地区を避けるかどうかについては、「避ける」が三八・一%で、「こだわらない」の三五・九%より多い。自分自身の結婚を考える際、気になることのトップは相手の経済力四五・四%、宗教三二%、職業二四・六%、国籍・民族二二・七%、同和地区出身かどうかは一八・一%だった。子どもの結婚を考える際、相手が同和地区出身かどうか気になるは二〇・六%だった。

 「同和地区の人は仲間はずれにされたりすることがあると思うか」という項目では、「ある」「しばしばある」を合わせると四一・ Z%。「地区で生活していることで、低くみられたり、悪くみられたりすることがあると思いますか」に対しては、「ある」と答えた人が五九・二%に達している。

行政施策に合意

 「あらゆる差別をなくすために、行政は努力する必要がある」という意見には八三・四%が賛成しており、行政が施策をとることに合意が形成されている。一方、「差別の原因は、差別される側に問題があることも多い」という意見に賛成が四四・三%で、反対の二八・四%より多い。

 また「差別されている人はまず、自分たちが世の中に受け入れられるように努力することが必要だ」との意見にも、賛成が五五・四%で、反対の二一・九%の二倍以上。差別される側に原因や責任を求める考え方が広くみられる。

 部落差別があると答えた人(八三・四%)に、その原因を尋ねたところ、「同和地区にだけ特別な対策を行うから」が最も多く四九・九%、ついで「偏見が強く、市民の人権意識が低いから」が四二・三%、「同和問題が残っていることを教育・啓発で広めているから」が二七・三%、「差別意識をなくす教育・啓発が不十分だから」が二三・六%となっている。

 部落差別をなくす取り組みのなかで、一番多かったのは「同和地区と周辺住民が交流を深め、協同してまちづくりを進める」の六五%、「差別意識をなくし、人権を大切にする教育・啓発を積極的に行う」が六四・七%、「差別をする者を法律で罰する」が五二・九%、「同和地区住民の自立を支援する行政の取り組みを充実する」が四三%だった。

 その一方で「同和地区住民が差別されないように努力する」四八・六%、「そっとしておけば自然に差別はなくなる」が三七%あった。

根強い府民の忌避感

 同和問題に関する学習を受けたことがある人は五一・七%、受けたことがないは二七・三%。

 日常生活のなかで見聞きしたことについて尋ねたところ、「同和地区の人は怖いという話を聞いたことがある」が五七・六%、「同和対策はやりすぎ、不公平だという話を聞いたことがある」が五〇%、「同和問題に関わらない方がよいという話をきいたことがある」が三六・七%だった。

 「同和地区の人は怖い」という話を聞いたことがある人に、誰から聞いたかを尋ねたところ、友人が四四・九%、近所の人三三・二%、家族三一・二%、職場の人二八・二%だった。同和地区に住んでいる人とのつきあいがあるかという質問には「ある」が二四・八%、「ない」が七二%だった。

 「同和地区の人は怖い」と聞いたことがある人に尋ねたところ、「そういう見方もあるのかと思った」が六〇・九%、「反発・疑問を感じた」が一六・四%、「その通りと思った」が一一・九%と偏見にとらわれている人が多い。「同和対策はやりすぎ、不公平」という意見には、「そういう見方もあるのか」が四九・八%、「その通りと思った」が三四・五%で、「反発・疑問を感じた」はわずか九・七%だった。

 「差別だという訴えをいちいち取り上げていたらきりがない」という意見については、反対が四二・一%、賛成が三六・二%。「差別される人の言葉をきちっと聞く必要がある」には八六・四%が賛成している。「差別を問題にするから、より問題が解決しにくくなる」という質問には、賛成が三九・七%、反対三一・七%だった。

 人権に関する宣言や条例に関する認知度では、世界人権宣言が七八・三%と最も高く、国際人権規約が五一・一%、同和対策審議会答申が四二・二%、部落差別等規制等条例が三四・二%、大阪府人権尊重の社会条例が三〇・四%、人権教育のための国連一〇年が二〇・六%。

 このような結果に対して、運動サイド、行政サイドがこれをどういかしていくかが問われており、大阪府連ではすでに運動方針に反映させるべく議論を始めている。