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部落解放大阪府民共闘会議(議長=山田保夫自治労府本部委員長)の2001年度総会が12月3日、大阪市浪速人権文化センターでひらかれた。2002年3月で期限切れとなる「地対財特法」後の解放共闘運動のあり方について論議、方針を決定した。大阪府民共闘は今年で結成されてから35年、全国で最も古い歴史をもっている。そこで府民共闘の歩みを概括し、新世紀における共闘運動を展望してみたい。
全国で最初に結成
同会議の前身である「同対審」答申完全実施実現大阪府民共闘会議(略称・同対審共闘)の結成総会がひらかれたのは1966年7月のこと。前年の8月、「同対審」答申を勝ち取ったが、政府は答申の実施に消極的だった。
?大阪では、完全実施を求める運動が盛り上がり、大阪総評、大阪教組、自治労府本部、部落解放同盟大阪府連の四者の呼びかけで、「同対審」共闘結成にこぎつけた。解放共闘としては全国に先駆けてのもので、大阪に次いで2番目の奈良県共闘ができたのはそれから9年あとだった。
その「同対審」共闘の結成総会宣言は、今日も輝きを放っている。「政府自治体に答申完全実施を要求するとともに、部落問題解決を労働者、市民すべての国民の課題として幅広く、広げていくためのねばり強い活動を誓い合った」「本総会を起点として、あるべからざる差別の長き歴史の終止符が1日もすみやかに実現されるように」「憲法を完全に実施して部落の完全解放をはかれ」など、当時の熱気が伝わってくる。
各地で次々に
結成から20年たった1986年、記念集会が開かれ、記念冊子が発行された。部落解放中央共闘会議の当時の議長、森原三登氏(中央総評副議長)は次のような一文を寄せている。「差別事件の増加と悪質化を見るとき、私たちの任務は非常に大きいといわなくてはなりません。
?人権と平和を確立する闘いとして、部落解放共同闘争を大きく発展させていかなくてはなりません」「現在、35都府県共闘と160余りの地域共闘が結成されておりますが、その強力な牽引車として、大阪府民共闘が益々発展されるよう期待します」。
先述したように大阪についで奈良県民共闘ができたのが1975年11月。翌12月には部落解放中央共闘と群馬県民共闘が結成された。その後76年から77年にかけて全国で結成があいついだ。
?現在、大阪、奈良、群馬のほか埼玉、山梨、栃木、神奈川、新潟、長野、岐阜、愛知、三重、福井、京都、和歌山、兵庫、滋賀、鳥取、岡山、広島、島根、山口、香川、徳島、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、大分、熊本、宮崎、鹿児島にできている。しかし“開店休業”状態のところもあり、活性化が課題となっている。
狭山事件訴え続け
大阪の「同対審」共闘はその後、より幅広く運動を展開しようと名称を1980年7月、今の部落解放大阪府民共闘会議に変更した。加盟団体は現在、部落解放同盟大阪府連、連合大阪、自治労府本部、大阪教組、全逓大阪、情報労連大阪地協、私鉄関西地連、全労働大阪職安支部、大阪交通労組、大阪市水道労組、日放労関西支部、全日本建設運輸連帯労組近畿地本、全自交大阪地連、全港湾関西地本、全林野大阪地本、全国一般地本、全日通大阪支部、近畿労働金庫労組、化学リーグ・・大阪地協、大阪地域合同労組、泉州労連、関西単一労組、北大阪医療生協、婦人民生クラブ府協、日本婦人会議府本、部落解放大阪青年共闘、部落解放府民共闘女性連絡会議の二七労組、団体にのぼっている。共産党を支持しているところを除き、大阪の主要な労組、民主団体の多くが加盟している。
このほか大阪市をはじめとして、府内のほとんどの市町に「地域共闘」がある。豊中市民共闘、羽曳野・藤井寺・太子共闘といった具合にである。
大阪の解放共闘がこれまで取り組んできたことは多岐にわたっている。中心はもちろん部落問題である。なかでも狭山事件だ。この事件を通して部落問題を知った、関心を持つようになったという人が非常に多い。石川一雄さんも共闘労組の招きで、すでに数10回来阪、百カ所以上で訴えており、部落問題といえば狭山事件を思い起こす人が少なくない。そして職場や地域で起こる差別事件への取り組みがある。
部落問題以外では、女性差別、在日外国人の人権問題、障害者差別、平和運動などにも取り組んできた。一切の人権問題にどう関わっていくか、共闘の仲間の関心をどう高めていくか、解放共闘発足以来の大きな課題である。
平和、共生社会の実現へ
共闘運動の先駆的役割を担ってきた大阪の解放共闘。それが「法」後にどのような運動を展開していくべきなのか、今年度の総会ではそのことが中心的課題となった。そこで決まった「任務と活動の基調」から主な方針をみてみよう。
まず第1に、「法」後の新たな同和行政・人権行政の創造と、21世紀を人権の世紀とするため、市民運動・NPO団体などとの連帯を強め、一切の差別撤廃へ共同共闘を前進させようと訴えている。ついで「差別を撤廃し、あらゆる人の人権を擁護することが恒久平和の基礎である」という世界人権宣言の精神にそって平和、共生社会の実現に努力することを強調している。
さらに「人権教育・啓発推進法」の具体化、「人権救済法」の制定を要求。日本アイビー・リック社による差別身元調査事件で明らかになった就職差別の根深さを深刻に受け止め、雇用と職業の差別を禁止しているILO111号条約の早期批准を求める府民運動に取り組むこと、狭山事件を訴えて大阪青年共闘が10月に行った大阪城公園24時間リレーマラソンなどのような創意工夫した取り組みを展開することなども力説している。
このほか(1)大阪府・大阪市に「男女平等参画推進条例」制定を求める府民運動を強める、(2)民族差別撤廃、共生社会の実現へ、定住外国人の地方参政権問題、公務員採用における国籍条項撤廃に努力する、(3)人権の発信基地としての機能を強化する―などをあげている。
全国に先駆けて誕生した大阪の解放共闘。最も活発に活動している1つだが、課題も多い。「法」後に向けてどんな運動を展開していくのか、注視していきたい。