今啓発特集号は、ワークショップなど新しい手法は取り入れられつつも種々の課題を抱えている人権啓発について、日本ではまだ浸透していない「成人教育」の学習論に学び、主に社会教育分野における人権教育・学習に注目し、自己啓発と行動変容に結びつくような人権啓発の可能性を探る試みである。
森論文では、人権を自己に引きつけて意識から行動に結びつけ、普遍的な人権概念へと広げていこうとする今日の人権教育・啓発の議論を、成人学習論に照らして深めようと提案する。
渡邊論文は、広義の人権学習を人権教育と人権文化の両面から捉え、成人にとって重要な「学習者主体の学習」の成立に必要な支援のあり方やチューターと呼ばれる成人学習援助者の役割を考察する。
花立論文は、人権教育・啓発の社会へのインパクトを評価しエビデンスとして蓄積することの重要性、また評価や人権文化構築の側面から都市論についても論じる。
浮穴論文は、学習の組織化を視野に入れ人権をテーマに公民館で行う連続講座の企画と展開について、社会教育の観点から述べる。
ほかに、公営住宅を巡る法制度改正を見据えた同和地区のまちづくりを提案する寺川論文、特集とも関わるテーマとして、部落問題・人権問題意識調査の研究動向に関する内田レビュー、地域での差別事象にPTA協議会として取り組んでの安孫子レポートを掲載した。(K)
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