本号は「近代部落史と人物」を特集テーマとしている。
水平運動の指導者個人に注目し、他の社会運動との関わりを検討することを通じて、近代部落史の新たな地平を切り拓くことを企図するものである。
小正路論文は、田原春次が堺利彦農民労働学校を再編する過程を検討し、当時の水平運動・農民運動が戦争協力にいたる道筋の一端を解明した。
高木論文は、神崎郡水平社委員長の清水喜市の運動歴をたどり、水平運動と融和運動の交錯を示した。
関口論文は、近年公開されたコミンテルン史料所収の佐野学「水平運動」を翻刻・紹介し、当時の日本共産党における部落問題理解の検討に資するものである。
阿久澤論文では、世界の大学院で百近い「人権修士」プログラム(うち、アジア・太平洋は10)が存在しており、特にアジア・太平洋地域の特徴を分析すると共に、日本の大学の人権教育・研究への示唆を提起している。
妻木論文では、大阪の高校三年生約千四百名から得た「生活と進路意識調査」結果から、フリーター「選択」と生育家族の階層的背景を分析している。
「部落史関係文献目録(2007年4月~2008年3月)」は今年度で最後となり、2008年度以降は研究所ホームページで掲載していく予定である。
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