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2012.10.31
書籍・ビデオ案内
 

部落解放研究194号(2012.03)

近現代部落史研究の論点と課題

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もくじ

特 集

報告/「国民融合論」の成立と近現代部落史研究全文PDF

-要約-
 1960年の部落解放同盟・新綱領(独占資本「元凶」論)は井上清の部落解放理論を基本としていた。井上の「三位一体」論や独占資本の差別「温存・利用」説、また統一戦線論には、のちの朝田理論、国民融合論の両側面がともに内包されている。1975年の「国民融合論」は、部落問題の現状認識の変化からというより、運動論上の政治的対立・分裂を契機に生み出される。そのことが部落史研究にもたらした影響は何だったのか。封建遺制(国民融合論)か、近代化の問題か(国民国家論)と二項対立的に議論された研究史は、運動の対立を表現するものではなかったか。いま、両者の統一的把握、共同研究が求められていると考える。

手島一雄
座談会/近現代部落史研究の論点と課題1
手島報告「「国民融合論」の成立と近現代部落史研究」をめぐって→ 全文PDF
出席者:井岡康時・手島一雄・友常勉/司会:葊岡浄進
報告/部落史研究における身分・階級・物語・コモンズ全文PDF

-要約-
 この報告では、議論の素材を『部落史研究からの発信』(全3巻、解放出版社、2009年)と近年の近世史研究の身分論の成果に置きながら、①身分論とコモンズ論、②反資本、③物語論の三本の柱から問題提起をおこなった。それによってこれまでの近現代部落史研究を見直すことができるような文脈を提示しようとした。また、狭義の部落史研究にとどまらない、部落の芸能の復活・再現も論点に加えた。

友常 勉
座談会/近現代部落史研究の論点と課題2
友常報告「部落史研究における身分・階級・物語・コモンズ」をめぐって→ 全文PDF
出席者:井岡康時・手島一雄・友常勉/司会:葊岡浄進
特 集 資 料
座談会「近現代部落史研究の論点と課題」
「国民融合論」の成立と近現代部落史研究
2011.8.27~28全文PDF
手島一雄
報告「部落史研究における身分・階級・物語・コモンズ」全文PDF 友常 勉
論 文

信州松本藩領大町組の被差別民
「永代留書帳」を中心に全文PDF

-要約-
 信州松本藩領大町組大町村に居住して「長吏組頭」を務めた又四郎・又次郎親子が2代にわたって書き記した「永代留書帳」なる史料がある。これには安永8年(1779)から天保4年(1833)までの54年間分の「長吏」や「小屋者」「力りき」などと呼ばれた被差別民がかかわった事件や出来事が記されている。この史料から「長吏」や「小屋者」「力」の実像を探る。

斎藤洋一
三重県松阪の都市部落が経験した近代 宮本正人

補遺~「部落民」という位置が意味するもの

-要約-
『都市部落─その歴史と現状』の「序文」を書いた梅川文男。その「序文」を取り上げて『紀州 木の国・根の国物語』の中で「松阪」を分析した中上健次。両者の部落認識、部落問題認識を対比させることを通して、「部落民」という位置が、「日本人」「国民」を深部からとらえ、その解放の道筋を照らすことが可能な場所であることを明らかにした。

宮本正人

編集後記

 今号では、近現代史の特集として、座談会を組んだ。昨年より年に1回の歴史特集号については歴史部会で編集委員会をつくり、企画立案から検討することになったが、なにか目新しい特集企画を世に問いたいと半年にわたって会合を重ねた末、今号掲載のような座談会として結実した。企画趣旨については討論中で述べているので繰りかえさないが、今後の部落史研究をめぐる議論の一助ともなりうれば幸いである。
  井岡さん、手島さん、友常さんには、お忙しいなか参加を快諾してくださり、当日は頼りない司会にもかかわらず濃密な討論をたまわり、また煩瑣を極めた校正作業におつきあいくださったことを感謝したい。また、文字起こしは一文字工房の宮武利正さんにお世話になった。研究所の歴史部会事務局の松本信司さんには当日の手配をはじめ、諸々ご調整いただいた。編集はいつもと同様に研究所の熊谷愛さんにご担当いただいた。編集委員会とはいいながらその実務能力はひどく乏しく、各自の発言についてばらばらに戻ってくる修正を整理して入稿や校正を進めるには苦労も絶えなかっただろう。
  個別論文は、斎藤さん、宮本さんにご執筆いただいた。依頼から限られた時間のなかで、貴重な事実発掘や興味深い問題提起が頂戴できたと思う。記して、お名前をあげた方々に感謝の意を示したい。ありがとうございました。
  一応、歴史特集は前近代史、近現代史を交互に組むという慣例になっている。特集企画について、歴史学を専門とするか否かを問わず、さまざまな回路で、ご批判やご感想、ご提案などをいただければ、編集委員会一同にとって、何よりの報酬である。ご意見をお待ちしております。 (廣岡浄進)

執筆者一覧

手島一雄(てしま・かずお)   立命館大学非常勤講師
友常勉(ともつね・つとむ)   東京外国語大学専任講師
井岡康時(いおか・やすとき)   奈良県立同和問題関係史料センター所長
廣岡浄進(ひろおか・きよのぶ)   大阪観光大学専任講師
斎藤洋一(さいとう・よういち)   (財)信州農村開発史研究所所長
宮本正人(みやもと・まさひと)   人権 NPO センターゆめネットみえ理事長